テーマ:式神の城

リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城 最終回

リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城 最終回  既に日は沈み、満月が煌々と照らしていた。  銀色の光は、湖面を白く輝かせる。  否。単なる反射ではない。  湖面には城が浮かんでいた。  白く輝くお伽噺の城。 「なるほど、こりゃすごい」  日向がひとりごちる。 「あの城から夢繰りの力を感じます。大勢の魂が囚われてる…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(29)

リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(29)  伊勢薙乃は夢を見なかった。  その事は、全員にとって幸いだった。  彼女の夢から作り出された悪夢は強敵だっただろうから。  薙乃が夢を見なかった理由は、常と同じである。  即ち、戦っていたのだ。  人の子が眠る時に、その夢を守るために戦うもの。伊勢薙乃こそ、誉れ高き、そ…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(28)

 結城小夜は夢を見る。  夢は観察され分析され保存される。 /*/  小夜は闇の中にいる。暖かな闇が自分を包み込む。  ふっと吐息を吐く。  ずっと忘れていた感覚。闇の中に一人いる自分。  闇の中には前もない。後ろもない。自分がない。故に迷わない。  それは一個の道具であるが故に、そこに在る意味は完全に満たされてい…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(27)

 目に見える世界以外に世界がある。  自分の住むこの星と、よく似た人が住む、少しだけ違った世界が、存在する。  現実の帷を抜けた、すぐ向こうに。  かつて、七つに分かれた世界を自在に往来した者達がいた。神を見下す傲慢な民は、ヤオトと呼ばれる大災厄によって滅びたとも、互い同士で争って滅びたともいう。  オーマと呼ばれた民が残し…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(26)

 日向玄乃丈は大神の末裔である。人にして狼である性か、月の満ちる夜は、心ざわめくものがある。  慣れない柔らかなベッドで、しばし眠れぬ時間を過ごした後、日向は着替えて部屋を出た。  都会といえど、アルカランドの空は澄んでいた。  沖天にかかる月は満月に近い。  東京では、けぶって見える月は、今、艶めかしい肌をさらしていた。 …
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(25)

 品のいい洋室。広めにとった間取りの床に、転がるもの二つ。  簀巻きになった光太郎と小夜。二人とも気絶している。  爆破された戸口から、小さな影が現れる。  伊勢薙乃である。  溜息をつきながら、床に眠る二人の前にしゃがみこむ。  伊勢薙乃は無数の嘘をついている。その名は仮のもの。あどけない演技も嘘だ。  しかし、床…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(24)

 夜が訪れた。  一行の寝所はアルカランド首都のホテルである。背の低い、石造りのホテルだが、中は広かった。  めいめいが、めいめいの部屋に入ってゆく。  ホテルのドアの前に立ちつくす影が二つ。  光太郎と、小夜である。手をつないでいる。  問題は小夜の体質である。ほとんど常に光太郎に触れて魔力を補給する必要がある。 …
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(23)

「お仲間を放っておくのは感心しない」  エミリオは口を切った。  光太郎が首をひねりながら通訳した。 「所長、知ってるか?」 「いや、知らん」  光太郎がそう伝えると、エミリオのまなじりが上がる。 「どうでもいい程度の仲間ということか」 「やっほー。レイカちゃんだよ。あ、光太郎君って君?」  小夜、横目で光太郎を睨む…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(22)

 燃えあがる森。悲鳴を上げる小鳥。飛び交う火の粉。  魔女の哄笑とニンジャの悲鳴。  地獄のような森の中を霊能者達は走っていた。  金美姫は、走りながら器用に肩をすくめた。 「訂正しよう」 「何がだ?」  律儀に日向が聞き返す。 「確かに、あの魔女は無能ではない」  日向はとりあえず無視して、気配を探った。光太郎と小…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(21)

 エミリオはとまどっていた。  誰でもない。目の前に女性に、である。 「エミちゃん、さっきはありがとうね」  エミリオをのぞき込む女。エミリオから見ると、胸が顔の前に来る。  目をそらしながら、エミリオは上着を脱いで差し出した。  レイカちゃん、受け取って、物珍しげに眺める。ひっくり返す。匂いをかぐ。エミリオの顔がさらに赤くな…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(20)

 アルカランドは田舎である。さすがに首都である王宮周りは、そこそこ開けているが、一歩そこを出れば、森、また森である。 「さぁ、早く事件を解決して姫君を安堵させるぞ」  金美姫は、一人ではりきっている。 「どうした、早く捜査しろ」 「そう言われてもな」  日向は途方に暮れていた。  暗黒街という言葉には「街」が入る。大規模…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(19)

 エミリオとバトゥは湖岸を歩いている。月光で見落としたものが日の光で見つかるのではないかと思ってである。  爆発が巻き上げた泥や水草が湖岸に打ち上げられており、領民達が掃除をしていた。 「おはようございます。領主様」  エミリオを見て、皆、帽子を取って挨拶する。子供達が親の後ろに隠れた。 「ありがとう、みんな」  ぎこちない挨…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(18)

 日本勢を見て、マーコ姫は笑ったが、無論のこと、エミリオは笑わなかった。  むしろ怒った。  マーコ姫直々の要請に対し、日本国は侮辱の意味で、このような愚連隊を寄越したか、と、一瞬、そう考えたのだ。 「若君、油断なされるな」  バトゥの目に見えたのは、信じがたい手練れ達だった。黒スーツとタキシードの男は、身のこなしが尋常では…
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式神の城関連のCM/イベントのお知らせ

 連載の途中ですが、式神の城3のCMです。  Wii、Xbox360版の発売に合わせて、色々動いてるようですよ。  まずは、マガジンZ本誌で最終回1個前が掲載されたばかりの、コミック「式神の城 ねじれた城編」。 --------------------------------------------------- ■『式神の城 …
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(17)

 アルカランドへの直通便はない。  そもそも飛行場がない。緊急に備えて降りられる着陸場ならあるにはあるが、滑走路があるだけでは飛行場にはならないのだ。  そんなわけで、飛行機を降りてバスを乗り継いで国境を越えて数時間。  昼でも暗い森を抜けると、ようやく首都に出る。  歓迎はひっそりとしたものだった。数名の儀仗兵が迎えに現れ…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(16)

 マーコ姫はFAXを前に途方に暮れていた。  国のFAXは最近調子が悪く、日本神霊庁から届いたFAXの後半が潰れていたのである。かろうじて霊能者を派遣するところまでは読めたが、顔写真等は全く見えなかった。虫眼鏡でにらめっこしたが、それでわかるものでもない。  日本国からの霊能者。  やはり着物に烏帽子なのだろうか。それとも僧服か。…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(15)

アルカランド上空に出現した高熱源体は、空中で加速すると、湖に落ち、大水蒸気爆発を起こした。 熱風が、木々を揺らし、葉が吹き荒れる。 /*/ 最後の瞬間、二人を救ったのは爆風だった。 横殴りの風が、少年と傭兵をもろともに吹き飛ばす。続いて大きな波が湖岸を洗い、二人の上に豪雨が降り注いだ。 バトゥは立ち上がる。手はまだ…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(14)

ロジャー・サスケ。本名をロイ・バウマン。 和服に着替えて墨をする。 おちついた佇まいで、筆を握った。 思案の果てに書いた文句は「旅のしおり」。 「おうちへ帰るまでが、旅行でゴザル、と」 この男、これでも時間犯罪組織セプテントリオンのエージェントである。 コードネームはRS。数千の第6世界群全体を預かる支配人である…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(13)

結城小夜が平静を取り戻すにはしばらくかかり、鼻血が止まるまで、もう少しかかった。 「この子、迷子らしいんだ」 光太郎が、すまなそうに 「薙乃だよ。パパ、ナギのこと忘れちゃったの?」 「いや、ちょ、おまえ、待て」 誰がパパだ、という言葉を、光太郎は飲み込む。親に捨てられたというのが本当なら、その子に言うべき言葉じゃなかった。…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(12)

食卓に、異様な殺気が、みなぎっていた。 小夜である。眼光が鋭い。鋭すぎる。並の人間なら腰をぬかして逃げるか、俺が悪かったとあやまるだろう。 殺気を帯びた眼光を浴びて、光太郎は悩んでいた。 ──俺、なんか悪いことしたっけ? 聞いてみようにも、小夜には隙がなかった。身に付いたもので、しゃんと背を伸ばし、礼儀作法を守って食事してい…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(11)

アルカランドの軍備は、見た目通りの旧態依然としたものである。 当然のことながら、レーダーなどは備えていない。 そのため、第一発見者となったのは、米国の偵察衛星だった。 ちょうどアルカランド上空にさしかかっていた衛星の目は、上空500mに、瞬時に出現した熱源を感知する。 /*/ 悪魔がエミリオを包み込む。闇が皮膚…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(10)

マーコ姫と同じく、バトゥも「神隠し」と聞いて、大規模な人身売買組織を想定した。 バトゥは雇い主のエミリオすらも疑っている。 「神隠し」をでっちあげ、犯罪のもみ消しを計る。その箔づけとして自分が呼ばれた可能性を考えていた。 入国したバトゥは、召喚に応じる前に、現地調査をすることにした。事件の現場とされる湖に直行したのだ。 …
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(9)

バトゥ・ハライは有能な悪魔祓いである。 例えば、心優しい男や女が、大挙して昨日までの隣人を殺すことがある。 それをアルカランドでは悪魔が憑くという。 人は正気で人を殺すことはない。ならばそこには、人を変えた原因があり、それこそは悪魔である、という考えである。 悪魔は人を通じてこの世に現れ出る。 科学の言葉では、集団…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(8)

金美姫は跳ぶように距離を詰めた。滑らかに攻撃に移る。 半身の構えから飛んだ右の拳を、日向は迎撃。が、それは囮だ。死角から飛んだ左の拳を、かろうじて首をひねって躱した。 「よく避けた」 美姫は、拳の間合いから、さらに一歩、詰める。切り裂くような肘と、ローキックが同時に来るのを、日向は大きく跳んで躱す。 防戦一方。実際、女は…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(7)

日向玄乃丈。新宿にてペット探偵業を営む。 「いや、ペットは余計だし」 地の文に突っ込むほどに、最近、自分でも本職が何かわからない日向玄乃丈である。 かつては裏社会に通じ、汚れ仕事も請け負ったが、光太郎を弟子に迎えてからは、そうした仕事から、きっぱり足を洗った。 ついでに教育に悪い浮気調査なども断っていったら、受け…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(6)

お詫び。17日の更新において、海法さんの原稿は間に合ったんですが、芝村がUPしそこねてました。お詫びいたします。 /*/ 金大正という男がいる。下町で道場を営み、今は刑務所の塀の中にいる。 その男のありかたは、道場を見ればわかる。 家屋というのは、生き物である。住む人を得てこそ家屋は生きるものであり、人に捨てられた家…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(5)

「殿下におかれましては、ご機嫌うるわしゅう」 そう言って現れたのがエミリオだったことにマーコ姫は、少しだけ、ほっとした。 マーコは、エミリオが嫌いではない。旧弊なことは他の貴族達と変わりもないが、少なくとも彼は臣民を道具にはしない。マーコを批判はしても、嫌みは言わない。 「いかがなされました、ベルナ伯?」 「この度の事件で、…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(4)

アルカランド王女、マーコ・ドロネア・エーディリウスは憤っていた。 もっとも彼女は年中、憤っている。 憤ることに疲れた時が、負ける日だと、そう信じている。 女官達の目の届かない自室で、黒い髪を振り乱して、大股で歩く。 その黒髪は、日本人の母から受け継いだものである。 マーコの母は、アルカランド国王に見初められ、大恋愛の末に結…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(3)

エミリオ・スタンベルクとは国外向けの名乗りである。 マジャル語を公用語とするアルカランドでは、日本語等と同じく、姓名の順で名乗る。すなわち、スタンベルク家のエミリオは、スタンベルク・エミリオが正しい。 ベルナ伯爵スタンベルク・エミリオは、そのように伝統を重んじる少年であった。 アルカランドという小国において貴族であるこ…
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リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(2)

/*/ 「ただいまーっと」 がらりと戸を開けた光太郎は、夕餉の匂いに鼻をひくつかせた。 料理が得意な兄は、もういない。父は家では料理しない。となると。 「お袋、いるのか?」 声は空しく響いた。 食卓には、できたての夕食が並んでいた。置き手紙が一つ。 「旅行に出かけます 母より」 母は仕事の関係で、年中、出かけてい…
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