バロの出会い

 青との間を竜が飛んで行ったとき、バロは目を大きく開けて絶技を唱えるのをやめてしまいました。竜の背に若い娘が乗っているのに気づいたのです。

--地、地べたすりがなんでこんなところにいる!?
 地べたすりとは人間のことです。バロは動揺しつつも、思わず振ってきたその身体を青と抱き留めました。

 痛そうな顔を浮かべる娘、静日を見て、バロはさらに混乱しました。
--なんで片腕がないんだ!
--大丈夫。まだ死んでないよ。
 静日はとんちんかんな事を言った後、気を失いました。
 バロはうわぁと怒鳴って頭を掻きむしりました。
--バルク、バルクはいるか!
--ここにおります。
 地面から一人の魔術師が生えてきました。黒髪、骨張った、随分と冷酷そうな人物でした。

--この間抜けな娘をすぐに助けろ。
--魔術師は治療術士ではございません。
--いいから助けろ。四の五の言うな。絶対だ!
--弟君を呼べば良いのではございませんか。アーさまは最高の治療術士でもあられる。
--それもそうだな。急げ、それも呼べ、
 バルクと呼ばれた魔術師はうやうやしく頭を下げると静日を受け取りました。

--ところで戦いはどうされますか。
--中止だ。興がそがれた。
--御意。
 バルクは今のうちに逃げたらどうだと青に目配せすると、うやうやしく頭を下げて去りました。杖で地面を叩き、吸い込まれて行ったのです。クェースが心配そうに鳴くと、それも連れて行きました。
 バロはあぁ、腹が立つと言うと絶技を解除して自分もバルクに着いていきました。

 そのまま、場所は銀の谷へ変わります。静日を抱えたバルクが生えてきたのが、この場所でした。銀色の小さな花が一面に咲く美しい場所です。
 草の上に横たえ、バルクがリューンの動きを見ていると、バロが横で腕を組んで難しい顔をしました。
--この人間がお気に入りですか。
--だーれが気に入るかこんな地べたすり。ああもう!地べたすりはこれだから、簡単に死ぬな、傷つくな!
--我らとてリューンの助けがなくば同じようなものです。困りました。
--何がだ。
--リューンが壊れております。おそらく数時間で死にます。
 バロの顔は、難しい顔から瞬時に怒りの顔に変化しました。
--何を冷静に言いよるかこの糞魔術師! どうにかせんか
--しかし、リューンが壊れてはどうにもなりませんな。
--どうにかしろと言ったらどうにかしろ。あああ、これでは俺が悪いようではないか!
--実際我が糞君主が頭に血が上って絶技戦をはじめなければこんなことにはならなかったはずです。
--ごたくはいい、対処しろ。さもなければ貴様の嫌いなものを順番にすりつぶして喰わせてやる。
--上司とか。
--俺のヤツをすりつぶして喰わせてやる。
 バルクは今までにない真面目な顔で短い絶技を使いました。
--これですぐに死ぬことはないと思いますが。
 バルクの言葉を聞き流し、バロは娘の顔を見ました。
--なんなのだ、この娘は。バカか、バカなのか。