眼球が潰れ、内臓が口から飛び出し、食いしばった歯が割れるようなGをヤガミは笑って耐えました。 艦の主砲でもある電磁カタパルトから投射され、惑星の重力に引かれながら丸みに沿って落ち続けます。 予想される会敵距離まで四五〇km、秒速一二kmでの射出で会敵まで三七.五秒でした。主エンジンを用いても変えられる角度は僅か0.2度。スティックコントロールというにも繊細すぎるコントロールが、ヤガミに託されました。 物理域を変調して機体の内部構造を変化させながら、ヤガミの機体であるオーロラは、機体の長さにして四倍もの二〇〇mmランス、次期帝國標準レーザー砲を構えました。 ヤガミは強烈なGで笑いを波立たせながらトリガーを引きました。0.3秒の間レーザーが照射され、一八機の核攻撃機が全部切断されて落ちてきました。 −−さすが、死神ですね。 地上管制を担当するハツカというオペレーターの声を聞きながら、ヤガミは機体を回転させました。 −−いや、まだだ、敵の宇宙機が出てきた。迎撃に移る。打ち上げポイントは送るから地上は地上でどうにかしろ。 ヤガミはそう言った後、もう地上の事を忘れました。ロケットブースターを装備したワーグという戦闘機が、続々と打ち上がっているのが見えました。 −−宇宙戦力を用意していなかったのは運の尽きだったな。 ヤガミは機体を回転させて逆噴射しながら減速、極薄い大気の層を利用してバウンドしてもう彼方に過ぎようとしているワーグたちを二〇〇mmランスで狙撃しました。 一二〇目標を二秒の照射で一二〇回命中、爆破して、水平線の彼方にヤガミは飛んでいきました。 二度目の会敵は四〇〇〇秒後、ヤガミ機は秒速一〇kmで惑星の丸みに沿って落ち続け、惑星軌道で二周目の戦いに突入しました。 待ち構えるワーグたちは、一斉に機動爆雷を射出。一〇〇〇を越える爆雷は飛びながら爆散して破片を無数にばらまき、二度と惑星の宇宙開発を許さぬような軌道汚染の仕方で戦いはじめました。 −−エリザベス! −−分かってるよ。右、砲ぅ戦用ぉ意ぃ。一番から二四番まで、対抗爆雷戦、クリサリス、外すんじゃないよっ。 −−ふんっ。一番から二四番まで、レーザー水爆。副水雷長。 −−了解でねぅ。弾頭交換、シリンダー回転よろし。諸元入力完了。最終誘導をヤガミ機に。 −−対抗爆雷戦開始! teeeee! 一瞬だけ母艦であるL型人魚”夜明けの船三世号”を通過して、ヤガミ機は再び敵に迫りました。夜明けの船の右舷からレーザー水爆が次々射出され、敵に向かって飛んでいきます。 ヤガミは二〇〇mmランスのモードを切り替えて射撃誘導にすると、絶技短期予知から四〇万個近い破片軌道を割り出しました。 それらをまとめて地上に叩き落とすように、水爆が爆発。ヤガミは爆発の間をくぐり抜け、二〇〇mmランスで再度ワーグを狙いました。 爆発、そして爆発。死神は秒速一〇秒で全機を叩き落とし、その武勇を輝かせました。 |
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