外つ歌:射出シーケンス

 戦術核兵器が放つ閃光と爆風の後に、羊角の化け物たちと不死者たちが動き出しました。何もかもがとろけるような温度の中で、化け物たちは焼かれて壊れながら、それ以上に自己を再生し続けました。

--これで勝ったつもりか。
--でしょうねえ。電子機器とかぶっ壊してやったとか思っているんでは。
 ひっくり返った装甲車の中で指揮官スモッグとブルーラクーンはそう言い合うと、古風な地図と双眼鏡をそれぞれ出して笑いました。
--あいつらのやることなんじゃ毎度お見通しなんだよ!
--悪の栄えた試しなし。

 上空に向かって信号弾が打ち出されました。

 惑星から一二〇kmの高度を秒速七kmで飛ぶL級人魚がいました。ハッチが展開され、宰相府が作り上げた新しい一〇m級I=Dフレームが姿を見せます。鳳の羽根より軽く、玄武の甲羅より強靱なボディには偽装装甲がかぶせられ、遠目から見ればそれが新しい帝國の誇りであるオーロラ級であることは分からないようになっていました。

--第11ウインドウ スタンドバイ。
--第12ウインドウ スタンドバイ。
--第14ウインドウ スタンドバイ。
--第15ウインドウ スタンドバイ。
--遅れました。第13ウインドウ スタンドバイ。

--全ウインドウ、 スタンドバイ。

 虚空にガイドビームが二本照射されました。核兵器によって吹き飛ばされた丸い雲の切れ目に向けて、船体を貫通する電磁カタパルトが動き出します。

--注意してください。セントラルが次の呼吸をするまで180秒しか時間がありません。
--何を注意するんだ。運命を変えられないことか。それとも、生還のことか。
--両方です。残り174秒。160秒の段階で接続を開始します。シオネ・アラダのご加護を。
 エレベーターが、ゆっくりとあがり始めた。
巨大なエレベータの真中に、不敵なイエロージャンパーが腕を組んで立っていました。
強化された黒縁の眼鏡。
風で動くネクタイ。
I=Dキーである、銀のスプーン。
エレベータが揺れて、止まります。
--残り166秒。誠実の絢爛舞踏、前へ!
--七つの世界最後の希望を、あなたに託します。主動力をリニアカタパルトに直結。筒先向け。その名を地上に知らしめよ!
 機体に乗ると、イエロージャンパーの黒縁眼鏡は、
--ヤガミ・ソーイチロー、出る!
 ヤガミは鉄砲玉のように射出されました。

 地上から見ればそれは流れ星のように見えました。