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<<   作成日時 : 2016/11/20 13:26   >>

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 BIG青狸は一〇〇mほども跳躍すると奇妙にねじくれた身を揺らして牙を見せた。
 高層ビルの上に降り立つその姿を、クリスマス前に湧きたつ住民たちは気付きもしない。
 既にその手には握りつぶされた”しらいし”の頭があり、足元には”あきはら りょーた”の体がだらしなく転がっている。
「甘いですねえ、甘えですねぇ。所詮、純度の低い偽物は、この程度かねぇ。きひひ」

 にわかに雨が降り出し、雷鳴が轟き始めた。
 BIG青狸の皿のように大きな瞳に映るのは雨の粒。傘をさして降りて来る雨の粒だった。無数の泣き虫たち。
 それで、にやりと笑った。足元に転がっていた体や握っていた身体が消えてなくなっている。
「ようやく来たか、本命が」
「そうね」
 研究職のような白衣の女が割と本気で走って来たのか、荒い息の中でそう言った。風野夕璃、回っていない本当の世界にいた、二人のうちの一人である。
「おいおい、ここは僕が、ゲゲェナイトマスターの紋章とか言って驚くところでしょう!? きひひ なんでナイトマスターが来てないのさ。あぁ! 雷鳥号は!? 僕の戦力を馬鹿にしてるんですかぁ!?」
 風野夕璃は微妙に目を逸らしたが、BIG青狸は気付かなかった。
「ま、それはおいといて」
「おいとかれた!?」
 BIG青狸は驚いたが直ぐに順応した。もともと記憶力はあまり良くないのだった。そんな事を考えないでも僕は好きにやれる、好きに殺せる。
 腕を伸ばし、さらに腕から腕を生やし、首を伸ばし、口の中から次の顔を出してBIG青狸はえぶえぶえぶと笑いだした。降り注ぐ泣き虫たちの数は、無残に死んだ人の数と気づいたからだった。これでこの世界も……
「そうはさせない」
 風野夕璃は言った。眼鏡を指で押して言った。BIG青狸は敵を殺す歓喜に震えながら口を開いた。
「エースさまなら勝てるとでも?」
「エースでなければ誰が勝てるの?」
 風野夕璃は短く返した。
「それは、人類という種が種の危機に対応して生み出した防衛機構。私たちが死ねば人間の負け、ただそれだけの存在、ただの人から現れた、人類の守護者。ただの可能性のかたまり。人類のために人類が生み出した人類の規格外。人類の最強、未来を選ぶもの、お前たちデッドエンドと本来戦う者……」
 紳士用の傘で自らの肩を叩きながら夕璃はそう言った。BIG青狸は巨大な腕で床を吹き飛ばした。傘をくるくる回して跳んで回避する夕璃。
 BIG青狸を挟むようにもう一人のエースが姿を見せる。
「はっきー遅い!」
「いやー、オフ会で人気でちゃって」
 風野夕璃は汚いものを見るような目でもう一人のエース伯牙こと伯を見たが伯はいや、リア充度が欲しかったんやと目で訴えた。

「時間稼ぎかよ!」
 BIG青狸は吠えた。
「いや、息を整えてたの」
 夕璃はそう言って白衣を脱ぎ捨てた。ノースリーブのベストを見せながら傘を叩いて擬装を解いた。傘の傘部分が外れて魔法杖になる。
 魔法杖をくるくると回して夕璃は泣き虫たちに声を掛けた。
”我が右手には青い精霊、我が左手には歓喜の歌を。泣くのはおよし、整列して”
 雨となって降り注ぐ泣き虫たちは背を淡い光で叩かれて涙を止めた。情報が書き換わって元気な水虫になった。整列して物理防壁となってBIG青狸の口から怪光線をはじいて止めた。
 夕璃の足元に輝かしいAの魔法陣が広がる。
「西方天翼騎士、スタンダップ! 空間固定装置解除 転送座標マーカーここ! 皇帝陛下の御為に! 意地を示せ! 帝国の誇り! RTR!」

 伯が笑って飛びずさる間に、空から人型ロボットが瞬間移動してくる。宰相府の巨大工場で作られた青の塗装も眩しいRTRが出現した。複雑な脚部ギアをぶん回しながら音一つ立てず、皇帝陛下の下手なサインの入った一二〇mmランス地面に突き立て、顎部カバーを外して吠えた。帝國の騎士なら生まれた時から聞き慣れたコパイロット、犬妖精たちの準備よしの声。
 I=D・RTR。リファイントモエリバー。その紙の装甲は最速の現れ、その長い槍は帝國の誉。

「わーおドレスアップ格好いー。でも俺も」
 伯は指を鳴らして口を開いた。
「東方天翼騎士、スタンダップ! 空間固定装置解除そのまま! 転送座標マーカーここ! 風よ吹け彼を呼べ! 雷神さまいらっしゃい!」
 吹きすさぶ風虫たちが背を淡い光で叩かれて大事な事を思い出したように伯の傍に集まりだした。その右手に集まって空間のほころびを皆で並んでこじ開ける。
 太って腹を丸出しにしたおっさんがちょっと恥ずかしそうに出てきた。これがドレスアップの、有無の違い、いや、しかし雷神は強力だった。なんやなんやといいながら稲妻をいくつも投げて落雷を起こし、地上の人々を一斉避難させた。

 BIG青狸が何本かの腕で真アシタロボを呼び出しながら口を開いた。
「科学から神々まで! 節操なしめ!」
「お前が言うな これがニューワ―ルドだ!」
 伯はそう言って戦いを開始する。

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