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<<   作成日時 : 2013/03/17 02:48   >>

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 大海原と書けば何もない見渡す限りの海を想像するかもしれない。
 もちろん、間違いである。海は豊かで変化に富んでいる。

 白い波が、ゆっくりとうねりをあげ、風が波を育てている。寒い風はとても強く、陸に到着する頃には大波になりそうな勢いだった。
 音を聞こうと耳を澄ませば、酷く寒い音がする。
 それを寂しいと思うのなら、波の下に目をやるといい。

 そこには巨大な水竜達が群れをなして高速に泳いでいる。
 開口部から海水を吸い込み、長い分離工場ダクトを通って海水はただの水になる。純粋な水はさらに電気分解され、水素と酸素に分かれる。水素はそのまま対消滅炉に入り、質量にして0.4%量の反水素と反応、対消滅が莫大なエネルギーを生み出す。

 莫大なエネルギーの一部は水竜の推進に使われる。その一部でテラの海を何週も出来てしまう。残るエネルギーの大部分は、周囲に分け与えられる。登用の龍が元気を吐くように、水竜は海を暖め、鉄をはじめとする生命に必要なミネラルを生成供給し、そして水竜を中核として豊かな生命が繁栄を始めていく。
 工場が吐き出したヘドロが水竜によって活性化された微生物によって分解され、増えすぎた微生物は水竜の吐き出す推進力によって拡散され、赤潮を生むことなく世界の海の中にゆっくりと消えていく。
 南の端の島国に住み着き、よんたの海を栄えさせ、凉州や土場、星鋼京の工業地帯の排水を浄化し、そうして水竜は、世界を巡る。時速98ノットで。
 自然が長い時をかけて作り上げた複雑怪奇な生態系をそのままに、ただピースを足してみせる、そんなことをやった藩国がある。その藩は善政で知られ、善政によって竜を迎え入れたのだと囁かれた。

 その日、竜宮・司は暖かな海に脚を入れながら微笑んだ。その暖かな熱で分かる。
 長い旅から、水竜が戻ってきたのだ。詩歌藩国の春は、竜が戻ることではじまる。

「竜は好きかい?」
 司の質問にユウタOOはスクール水着の肩紐を引っ張りながら恥ずかしそうに、うなずいた。
 司はそうかと言って偉大なる竜が、全てを巡る竜が、再び全部をゆっくり一回転させたのを感じた。ユウタOOは次々と姿を見せた水竜たちを追って走る。司の手を引いた。司は再び春を呼んだ偉大なる竜に感謝する。

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 カレン・オレンジピールは鈴藤にボートを漕がせながら水竜に併走させた。
 水竜は小さな人間に気付いたが、速度を落としただけで、特に何もしなかった。

 カレンは目を細める。水竜の表面は装甲材のような無粋なもので覆われてはおらず、微細で柔らかな小さな鱗に覆われている。自ら育つマテリアルで、単一材料ではなく複合材料であり、人類の作った最高最速の運動エネルギー弾を軽く受け流す力があった。
「自己成長型インテリジェントマテリアル……こんなものを作り出すなんて、どんな時間犯罪が……」
「えー。昔からいましたよ。こいつら。あんまり強くないけど、この国はまあ強くないくらいでいいんだよって。あ、でも背中で甲羅干しするとそれは暖かくてとてもいいと評判で」
 カレンはよろけたが鈴藤の頭を足で踏みつけてバランスを取った。ありがとうございます。御褒美ですと鈴藤が言うとカレンはハリセンで頭をはたいた。

 水竜はそれを見て面白そうにゆっくりと全遊動式スラスターを動かした。巨大な鰭で海面が叩かれ、ハリセンの音に似た音を水面があげた。他の水竜が真似て同じ音をだしはじめる。鈴藤の頭を叩く音が世界の海全体に広がる。
 水竜は大受けしたようだ。
 スラスターが水を叩く。跳ね上がり、一瞬で巨大な虹が発生する。

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 アマデオは珍しく大きな仕事である詩歌藩国での水上コンサートの仕事をはりきってやっていたが、海からの、かぽんかぽんいう音に悩まされ続け、キーも歌詞も間違ってもうダメだ的な失敗をした。
 楽屋の隅で体育座りでドナドナ歌うくらいのダメージだった。
 にもかかわらずチョコをちょっと貰ったのだけが救いだったが、実はアマデオはこの件で口パクではなく素で歌っていたことが証明され、それで人気がでた。詩歌では生演奏に高い価値が与えられていたのである。
 失敗してあわあわしているのがかわいいというのも、少しはあったかもしれないが、それはオマケというものであろう。

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