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<<   作成日時 : 2013/02/05 18:58   >>

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(3)
 ターニならぬ谷口竜馬は、砂をかぶって熟睡していた。特殊な性癖があったわけではない。キノウツン名物砂風呂であった。ただ、熟睡していたのはかの御仁の不覚である。
 月があがり熟睡がほどけてもなお眠り、半分ほども口をあけてうーん隊長駄目ですと口にしていたところ、夢に割り込みがあった。
 夢に出たのは青髪の美女だが中身が幼女などではなく、見た目も口調も老婆であった。彼の友人たちなら残念だとつぶやいて寝なおすところだが、元来人のよい彼はどうしたのですかと老婆に問うた。
 老婆は言った。これより北に二刻の先、貴方の信徒が危機にあります。お昼寝をきりあげて助けるのはどうかと。
 信徒とはなんですかと谷口が言う間に夢は終わった。口の中に特大の砂の塊が入っていた。吐き出し、起き上がり、時刻が夜であるのを確認してしまった夕食を食べ忘れたと立ち上がった。砂の山を崩して起き上がった姿は全裸であった。厳密には起き上がった際にタオルが落ち、夜風に流されて飛んで行った。
 余人と同じくたいていの夢を綺麗さっぱり忘れる谷口だが、先ほど見た夢は良く覚えていた。良く分からぬまま衣服を捜し、衣服がないことに気が付いた。
 岩崎め、俺の着替えを持っていったな。彼は一緒に砂風呂に入っていた友人を思い、その悪戯にどう文句をつけようかと考えたが、すぐに顔を北へ向けた。人並みをはるかに越えて、大抵の動物をも越える彼の耳が、かすかに少年の声を聞いたのである。
 それで、隠すものもとりあえず走った。キノウツンは海辺の街である。北にはかつての大反乱で放棄された都邑しかない。そこで子供の声が聞こえると言うのはゆゆしき事態であった。助けた後で説教の一つも全裸でやらねばならぬ。
 二刻と言われれば十分の一刻で走り抜けるのが谷口という男の身体能力である。砂の中でもけなげに立っていた楡の木を終点に立ち止まり、姿を見せた。
 北の放棄された都邑は今だ遺体の片付けも遅々として進んでない地区である。キノウツンの国家予算の多くはまず、今も生きる人々のために使われていた。反乱で立てこもられて一時は藩王が人質になった王城の補修も、いまだなされてはいない。
 谷口は遺体収容事業が終わるまではそのまま保全するように政庁から通達が出ているだろうと言いかけて、説教する気を失った。一〇名ほどの夜盗が幼子を囲んでいた。
 それで、夜盗の持つ物騒な刃物をつかんで折った。拳一閃で三,四人の顎を砕き、折れた歯が掌底に刺さっているのを顔をしかめて取りながら、少年ならば手を伸ばしても一周出来ぬ太股から蹴りを放った。残り全部が吹き飛ぶどころか焼け残った建物に突き刺さり、背骨を折り肺まで派手に傷つけてぶっ倒れていた。
 手加減はした。急いで病院へ行けと谷口は親切に言った。暴力と親切がセットになった時ほど人を困らせるものはないというから夜盗はさぞかし困ったであろう。それ以前に意識があるかどうかもさだかではなかった。
 谷口はおい聞いているのかと説教を再開しようとし、ついで遠くからの子供を探す母親や周辺住民の声を聞いて己が全裸であることに気付いた。助けた少年は観念したかのように膝をついて震えている。どう考えてもこの状況は自分は悪者にしか見えない。否、悪者というよりは変質者である。谷口はただちにそのように思った後、脱兎のごとく逃げ出した。まあ少年は母親に怒られるに違いないとそう思った。
 夜の廃墟を全裸の男が走っていく。冬の青森よりは寒くなかったが、彼は衣服を持って帰った友人を探しだして説教するつもりであった。

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