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zoom RSS 小説 電網適応アイドレス リターンズ ○キノウツンの夜

<<   作成日時 : 2013/02/04 18:42   >>

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○キノウツンの夜
 キノウツンという国は廃墟の塊がべったりと砂の大地に張り付いた場所である。
 ここを国だと言うと、国民の過半は冗談を聞いたかのような顔になる。国の体裁をなしていないからだった。
 人口わずか五〇〇万。そのほとんどをレムーリアからの入植者が占める。ここは勇猛果敢な蛮族の地である。その蛮族も、この地の夜の話となると首をすくめて寒気をやり過ごした。
 寒気と書いた。砂漠の夜は寒い。温度にして三度ほどにもなる。息も白くなるだろうが入植者が恐れるのはこのためではない。
 寒気の正体は恐怖である。迷信深い蛮族たちの恐怖を呼び起こすような場所が、あちこちにある入植地の直ぐそばにあった。一名を斬骨街という。かつて人口にして一五〇〇万を超えようとした巨大都市の、名残である。
 昼にたどり着けば、白く美しい廃墟なのでともすれば観光名所にもなるだろうと思う者もいる。だがその白く輝くものが、日を受けたおびただしい白骨だときくと声を失う。
 そこはかつてのムラマサ禍の美しき名残である。
 勇気を出して廃墟の中を歩けば、砂に埋もれた空き家の多くには生活の跡とそれが無残に切り刻まれた様が見て取れる。
 空き家の多くにいまだ住人として居座っている家族の白骨、それらのほぼすべてが骨が切断されており、それがかつてこの国にあった惨劇を思わせた。
 ムラマサとはこの地の支配者である第七世界人が作った戦闘種族である。元は外敵と戦うための戦闘職業であったが、この職業の者たちは自らの遺伝子を改造し、最強たるを願った。
 願いはそのうちかなったがその代償は大きかった。ムラマサたちは遺伝子改良で増大した破壊衝動を抑えることが出来なかったのである。ムラマサは国内に、ついで国外に牙を向け討伐の対象となった。
 キノウツンの夜は、そんな歴史から生まれた噂と物語に寒々しく彩られている。

(2)
 その日の夜は風が強く、キノウツンの蛮族たちは枕を欹てては斬骨街の音を聞いた。骨が立てるかたかたという音は死者の喋り声に聞こえ、勇猛果敢なレムーリアの蛮族たちの肝を冷やした。
 夜具となる毛皮の中で恐怖で震える中に一人の男子がいた。男子といえど子供である。
 少年は恐怖に我慢できなくなり、恐怖の声も夢の世界までには届かぬか眠りこけていた母と一緒の寝床を抜け出し夜中一人で斬骨街へ向かった。道中、見えぬから怖いのだと子供ながらに考えた。たとえ骨が踊っていても、それならば幅広の山刀にて打ち割ることもできそうなものだと考え、心を強くした。蛮族ともなれば寝所を母と共にするような子であっても、身の丈に不釣り合いな山刀を持つのが常であった。
 少年は明るい月夜に感謝した。この明るさなれば、踊る骨とも戦えよう。怖くないぞとつぶやきながら道を急いだ。
 はたして斬骨街の端は名に違わぬ人骨の原と化していて、少年は震えて蛮族の神ターニの加護を願った。骨はとうてい動きようもない。いずれも一刀で切断され、無残な姿をさらしていた。
 警戒し、柄頭に手をかけていた少年は歩くうちに肩を落とし、そのうち涙を流して歩を進めた。恐怖の源は哀れな犠牲者たちの亡骸であった。恐れるよりは憐れむのが妥当に思え、少年は蛮族の神に祈り死者の冥福を祈った。
 僕たちがもっと早く、蛮族の神を連れてきて神殿を作れば、さすがに普段は神の座にてお昼寝あそばすターニ神も、剣を一本握ってゆるりと地上に姿を現わしたであろう。
 少年は顔をあげて半分崩れた壁に身を寄せた。死者である骨の立てる音ではない、騒がしい生者の音がした。
 少年の驚きはすぐに憤怒に変わった。少年が見たものは斬骨街で宝探しをする夜盗の群れであった。幼子の骨を踏んで割る音が聞こえ、少年は蛮族らしい義侠心で山刀を抜き、ターニの神も照覧あれと正しく祝詞をあげ姿を見せた。
――そこまでだ、夜盗ども、死者の眠りを妨げること、死後もなお辱めを与えること、もはや許しがたき。トランの子アシタ、死者の名誉のため剣を取った。
 夜盗どもは驚いたが、直ぐに大笑した。これは再利用だ、罪にもあたらぬと言い放った。少年はもはや聞く耳持たず、山刀を振るい、夜盗どもを三歩下がらせ五歩下がらせた。
 夜盗どものさして広くもない度量はつきて、少年は直ぐに囲まれ嬲り殺しにあおうとした。少年が声もなく山刀を持ち直し、襲いかかる夜盗どもに一太刀くれてやろうと機をうかがったその時、楡の木がゆるやかに揺れ、その影より全裸の男が現れた。何もかもが巨大な男ではあった。眼は炎を映したようだった。
 赤子をひねるよりも簡単に人差し指と親指で夜盗の剣をつまみ、捻り折ると男は昼寝を邪魔されたように頭をかき、男は少年を助けて夜盗どもを蹴散らした。少年の腰ほどもある脚を蹴り上げ、剣ごと数名を叩きおり、急いで病院にいけと言った。
 少年は神が顕現したと山刀を置き祈ったが、目を開いたときには全裸の男は姿を消していた。裸であることを恥じたのか、役目果たして神の座に戻ったか少年には分からなかったが、少年はどちらもありそうだと考えるだけで我に返り、己を探す母や、入植者のたちの声をききつけて自らも声をあげた。
 かくて英雄の神ターニはこの地にても我ら部族を照覧せり、その武は地上と天界に並ぶものなし。少年はいつか戦士になり、その務めを存分に果たしてのち、神の座の傍にはべりて、裸にて永遠の酒宴と昼寝を愉しむであろう。


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