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zoom RSS 小説アイドレスライチ伝

<<   作成日時 : 2011/11/14 10:29   >>

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小説アイドレス
ライチ伝

#この小説は、主としてA世界について扱っています。

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 ライチと言う、プレイヤーがいる。
”物語”、”戦記”にはその名はないが、ナニワアームズ記、麗しき花達の記(FVB記)の双方に名を見る事が出来る人物である。

 多年に渡り、朝のNWCで朝ーと、発言して大阪の天気予報を告げて去っていく怪人である。

 あの人は毎日何やってるんでしょうねと、少なからず質問疑問を耳にした事はあるが、誰もその狙い、謀(はかりごと)を知るものはいない。おそらくは本人も預かり知らないであろう。世の中には往々にしてそう言うことがある。

 一つだけ明確になっているのは、あまりに毎日天気報告をやっているのでゲーム運営側が面白がってライチの発言を、大阪に名前的に縁があるナニワアームズ商藩国の天気に連動させたことである。
 ヤフーのスポーツニュースから阪神タイガースの試合結果がナニワアームズに流れるように、いや、そのずっと以前から、ライチの発言はナニワアームズに流れている。

 これに関して同国の史書ナニワアームズ記では、天井がある地下空間が主たる生活の場である同国で、天気予報を行うという驚異的な間抜けと書き、麗しき花達の記では、ヒロイックに、すなわちそれは天命であり、世界がそれをさせていたのだと書く。

 ともあれ、ライチは毎日天気を言い続けている。周囲にとっては怪しい行為をやる人で、怪人である。
 この用法で怪人と歴史書に記載された人物はこの人物ただ一人であり、空前絶後である。

 実際、歴史書に残るような空前絶後の事をライチはやってしまっている。ただ、天気についてつぶやくだけで。

 どんな些細な事でも、それが砂粒を一粒ずつ積み重ねるような事績でも、途方もなく積み重ねれば何か起きる、と言うのが、七つの世界というものである。

 星見司の専門用語では、情報集積が起き始めると言う。
それは、本来小難しいことではない。当たり前の事である。

 一日二日では、意味がない。一月二月では直ぐに忘れ去られてしまうであろう。
 だが一年二年と続けば、それはもはや目新しいこととてない、奇妙なことでもありえない。それは新しい日常であり、新しい普通である。その腕でこじ開けた先は、新しい、世界である。

 ライチは天気を言い続けて、新しい世界を、こじ開けている。

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 変化は現実のほうでまず起きた。
自分の地元、居住地とは全然違うものの、毎日言い続ければ親しむのが人間だったからである。

 NWCの常連はライチの天気予報と天気報告に慣れ親しみ、自分とは直接関係ない異国の天気になじみ、たまにライチが所用で発言出来なくなると、ライチの身を心配した。

 続いて、ニューワールドはナニワアームズで変化が起きた。現実の映しがニューワールドであり、アイドレスである。現実は正しく新しい普通を、新しい世界に伝えた。

 地下にチューブロードがあったころから、藩王不在、没落してFEGのゴミ捨て場、邪悪なる蠢くものどもの巣窟、大破壊、政権の事実上崩壊、再生神である蛇神の光臨、天井に穴を穿つ事件、焼け跡からの再開発と阪神タイガースクライマックスシリーズ出場に至るまで、一貫して変わらなかった唯一の存在として、ライチの再評価が行われたのである。

 多くのナニワの民は、混乱の中、3DTVの量産技術すら失われ、援助物資として届けられたリワマヒ製の手回しラジオに絶望したが、泣きながらハンドルを回すうち、そこで何一つ変わらぬ様子で天気を告げるライチの声を聞いて、自国にもまだ失われていないものが二つあることを知ったのである。

 それは、ライチと空である。

 後、蛇神が救いをもとめる巫女の声を聞き、詩歌のオオキニ神殿から泳いで海を渡り、縞のハッピを着て地面に激突して穴あけて、ハローお元気?と姿を現したとき、多くのナニワの地下人たちはライチが言ったとおりの空があることに気づいて、進んで膝を折った。

 なので、ナニワでは蛇神の健康教団において、ライチは預言者、聖人に列せられている。ライチが空の事を伝え続けていなければ、空を忘れ、未知のもとした人々は畏れ、逃げたであろうと言うわけである。
 たとえラジオの声であっても、空の存在を教え続けたその価値は、計り知れないと。

 この下りはナニワアームズ記でも採用され、地下空間が主たる生活の場である同国で、天気予報を行うという驚異的な間抜けと書いたあと、この事を描いている。落としておいてあげたり、あげておいて落とすのがナニワアームズ記の特徴である。

 一方、ライチの生国であるFVBの歴史書、麗しき花達の記では、最初から最後まで一貫して立派な人物として、ライチを描いている。

 一日二日では、意味がない。一月二月では直ぐに忘れ去られてしまうであろう。
 だが一年二年と続けば、それはもはや目新しいこととてない、奇妙なことでもありえない。それは新しい日常であり、新しい普通である。その腕でこじ開けた先は、新しい、世界である。

ライチは天気を言い続けて、新しい世界を、こじ開けている。

 かつて、季節の供え物を欠かさず終には神々の誘致に成功した帝國の霊的防御、神聖巫連盟という例はあったが、個人でこれをやってのけたのもまた、アイドレス1、2を通じてただ一名である。

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 現実の映しがニューワールドであるように、ニューワールドの映しが現実である。

ニューワールドで天気を言って聖人に列せられた男は、今度は現実で一目置かれだした。

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<D>OLL
<P>LAYER 
<S>ystem

Ver1.03

”メディアワークス編集部よりアイを込めて”
”ライチさんのこと、見ています”
”ささやかですが、加護、使わせていただきます。”

”個人の資格故、社名は明かせませんが大阪のゲーム会社の社員です。ライチさんを応援をしております。”

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 現実の映しがニューワールドであるように、ニューワールドの映しが現実である。

 ニューワールドの聖者ライチは現実に影響を与え、それによって起きた変化で現実は再びニューワールドに再度の影響を与えはじめた。

 二つの世界が手を取り合い、そこにちょっとだけ、蛇神のおっちゃんが手を貸した。手はないが。手は貸せるのだ。気合いと根性と、わずかな愛が、ありさえすれば。

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 B世界におけるライチは、生ける屍であった。
 リアルのないB世界において、天気を言い続けても何も起きないのである。B世界のナニワアームズでは、そもそも神が光臨しなければならぬような事態にはなっていなかった。
 焼け跡で蛇神をバットに野球やってる少年達もいないし、街頭テレビのライチの結婚報告を聞いて、国がすっとまって政府が緊急声明を出すほど喜ぶような事態もなかったのである。

 それでもBライチは大阪のオフ会に出てはいたし、ビールも飲んでいた。

 この死んだ可能性が回って七つの世界を一周する前に、DOLLPLAYER Systemは世界に介入する。

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 もはや偶然でもなんでもなく、リアルが正しく狙ってライチはNWCに現れ、DOLLPLAYER Systemが選択され、そして過ちを一つ修正するために、B世界に送り込まれた。

 麗しき花達の記では、すなわちそれは天命であり、世界がそれをさせていたのだと書く。何もかも出来すぎたタイミングと言っている訳である。


 そして今。Bライチの肩に、本物のライチの素足が触れた。

 酒を飲んで赤らんでいたBライチが顔をあげて立ち上がる。その瞳にはインストール正常終了の表示が浮かび上がっている。介入限界時間まで180秒。

 周囲はあれ、という顔をしている。
 ライチは確信を持った酔っぱらい足で歩くと、へのさんの加護を願った。へのさんとはFVB以外では余り知られていない酔っぱらいプレイヤーの名前である。

「おお、よく出来ていますねえ」
 あさぎの後ろから現れ、あさぎの人形に触れるライチ。人形は動作を停止する。それは触れたものを、ありとあらゆるものを健全な状態へ導く再生神の絶技だったが、絶技使いであるあさぎも、サトルでさえも、それが余りにも自然な動作過ぎて、絶技が使われたことに気づかなかった。

「ライチさん?」 
 あさぎにそう言われ、ライチは酔っぱらった表情のまま、あわてて人形から手を離すと、あ、すみませんと言って笑い、サトルを見た。

「アイドレスのことご存じなんですか?」
ライチはサトルに向かって優しく尋ねた。

サトルは笑った。
「いや、どんなゲームかは分からないんですけど、興味深い内容で。すみません、つい聞き耳を立ててしまいました」
「ですよね。そうだ。何かの縁ですし、一緒に飲みましょう」
「いいですね」

 そこまでやりとりをした後、ライチはあさぎを見た。あさぎは人形と格闘して首をひねり、やっぱアシタが作った奴じゃダメかと思っていたが、次善の策としてライチ案を採用した。手元で観察すれば、何か分かるかもしれない。

「そうですね。飲みましょう。私は飲みませんけど」
あさぎはそう言った。

 ライチ、サトルと歩きながら、あさぎは用心のため是空を連れて来なくて正解だったと考える。
 この人物は違うかも知れないが、監視されているのは確実だ。

次にあさぎが考えたのは、是空のポケットに缶を一つ放りこんでいたがよかった、だった。

 あっちに危険が及んでも、まあ守れはするだろう。
それにしても忌々しいなあ、もう。

ライチはBライチから離脱。その際Bライチに一つ、おみやげを残しておいた。大したことではない。毎日天気を言い続けてみようという、そのやる気だけである。

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