小説アイドレスBー是空の執務

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Bー是空の執務

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両手で重々しくも大きな扉を押し開き、B-GENZは部屋の中の明るさにカメラのセンサー感度を変更した。

「お呼びですか。大統領」
「呼んだ呼んだ。どうだ。開発のほうは」

大統領執務室は落ち着きながらも明るめに作ってある。
光の王と呼ばれる是空にちなんだしつらえだったが、GNEZはこうも白いとかえって寂しいなと考えた。

GENZは考えをおい散らかす様に、手のひらに拳をぶつけながら言う。
「順調です。ニューワールド一つほどなら、三分で消滅させられます。が」
「が?」

是空はGENZを見た。
GENZは芝居掛かった動きで目線をあげた。

「よろしいので?」

是空は苦笑する。正視されて苦笑している。
先につめていた秋春や444、すなわちFEGの栄光を支える主要プレイヤーたちも、是空を注視した。

是空は苦笑する。苦笑しか出ない。
「正直に言うと、難しい。国民の、一般プレイヤーの納得を得られるかは微妙だ。摂政……秋春」

FEGの摂政、秋春が前に出る。見なくてもいいのに資料である本を開く。
「難しいですね。藩王会議でも鍋の国などは慎重姿勢です」

是空はうなずく。そんなことは分かってるが、そう言わないのが少しの成長と言う奴だった。
「技術的な時間的余裕は?」
「そちらは4さんに。 4さん」

444が口を開く。444と秋春をあわせて、FEGの両輪とも呼ぶ。
「星見司処の大臣として言うなら、今すぐ開戦すべきです。やつらの姿は擬態です。世界の表面だけ、らしくつくってあるにすぎません。その意図するところは時間稼ぎ、それだけにしかすぎません」

うなずく是空。
「それは実際いって俺も思った。良く出来てはいるが、決定的に違うな」

だが、と、腕を組む是空。大統領の執務机に行儀悪くも軽く腰掛け、是空は言葉を続ける。

「だが、それを信じていいのか、未だ迷ってはいる」

444としては是空のそう言うところが気に食わない。顔をしかめた。星見の意見が軽んじられたと思うところもあり、だったら聞くなよとおもうところもある。

「なんとも。うちの……星見はそう星を詠んでいるというだけで、責任は何一つもてません」
「4さん言い過ぎだよ」
横やりを入れる秋春。
「俺たちのせいにされちゃかなわない」
突き放す444。是空は444を見て、心持ち頭をさげた。

「わかってる。星見はよくやってる。疑ってる訳じゃない」
「ですが大統領、星見は完全ではありません」
秋春が言い募った。この人物、バランス感覚では444をしのぎ、穏健派として、また保守派として良く国に仕えた。
是空はFEGの内政担当からさらに抜擢する形で大統領府とニューワールド全体の調整を行う大臣に任命している。

是空は444と秋春双方の肩に手をおいて言った。
「それも分かっている。だが世の中は真っ暗だ。少しでも明かりが欲しい」

444はまだ不承不承という感じではあったが、説明を続けた。
「一応、五人ががりで集中質疑し、星見の塔を使っています。その上での結論です。これでダメならクソゲーですよ」
「竜に教えを請いたいが?」

是空は思いつきで口を開いた。
たまにこうして、素人意見を言ってみる。
採用されることはほとんどないのだが、是空としては星見のテストのつもりで、たびたびこうして素人意見をぶつけるようにしていた。

444はネットを調べたか、数秒動きをとまった。再び動き出して口を開く。
「イベント枠はあいてますが。竜は姿を隠して連絡を閉ざしています」
「向こうの共和国は竜の指揮下にあるようだからな。最後は竜を敵に回すことになるかもしれん」
「竜が敵かぁ、嫌ですね」

穏健派の秋春は、穏健なことを言った。
うなずく是空。

「まったくだ。……俺は、竜太郎を本気で育てていたからな。好いてもいる。俺が敵なら遠慮はしないが……竜太郎じゃな……全力を出せる自信がない」

秋春や444の知る限りでは、そこで敵がだれでも全力をあげると言うのが是空のはずである。そう言う意味で是空は弱ってるなあと、二人は顔を見合わせた。

444と秋春は、意見を戦わせることは多いが、長年の友人関係である。

秋春が是空をフォローした。
「政治的にも竜を好むプレイヤーはいますね」
「星見で竜の世話になってない者はいません。そう言う意味では動揺が走っています」

444も補足したが、それで是空の気が晴れるかと言えば微妙であった。
とは言え心遣いを感じ、是空は感情をセルフコントロール。微笑みを浮かべる。

「さすが、残り二ターンと言うところだな」
「どうしますか。大統領」
「決断をすべきです。大統領」
「決定には従います。大統領」

GENZ.秋春、444は続けてそう言った。

笑う是空。大統領と連呼され、是空の気分はあがってきた。人に頼られるのが好きなのである。
「そう大統領と連呼するな。いいか、正直に言うぞ。俺はびびってる」

是空の言葉に笑う大臣たち。
是空もにやりと笑う。

「この年になってどうしようと悩んで眠れなくなるとは思わなかった。やるな芝村という奴だな」

大臣たちはにやりと笑う。
是空は言葉を続ける・
「せめて向こうと合体して、情報の一部を拾い上げてやりたかったな」
「向こうが距離とってきてますからね」
秋春は端的にA世界を説明する。

うなずく是空。思い出した顔・
「そうだ。独断専行した和子についてだが。反省レポートださせろ。個人ACEを助けたいのは分かるが、示しはつけないといけない」

秋春はうなずいた。
「和子さんのクリサリスは個人ACEじゃないと思いますよ」
「俺としてはこの独走で微笑青空を贈りたい気分だが
な。オフレコだが」
「まあ、これを誉めたらうっかりものがあっちこっちで独走しますよねえ」
秋春はそう言った後、じゃあ、わざと個人ACEと間違いつつ、反省文だせといっときますと付け加えた。

444は冗談めかして片方の眉をあげる。
「うちの国民のことか。大丈夫。ゴモラ(カマキリ)もメギド(蜘蛛)もかわいいやつらだよ」

444はFEGの新種族たちをあげて言った。

「かわいいのは確かに」
深くうなずく秋春。

「うちのメタルボディも。中々かと」
お国自慢が大好きなのはだれしもである。GENZも乗ってきた。

「過去さんざん苦労させて来た諸族だがな」
是空がまとめた。

「すみません」
「すみませんすみません」

GENZと秋春が詫びをいれる。
頭を振る是空。
「今となっては、人類以外のこいつらが勝負を決めるかもしれん」
「どうですかね。人と一番近い竜が今回離反してますから。星見の一部では人類中心論がまた盛り返してます」
444は空気を詠まずに発言した。

「ぞっとするな」
「まあ、GENZさんはそうですよね」
GENZのフォローをする秋春。

是空は444を見て言う。

「444、星見については人間中心論が正しいのか、質疑を確定させてくれ」
「もちろん間違ってるで、決めうちしていいと思いますが」

是空は444の意見にうなずく。が、言葉を続ける。
「俺もそう思う。一度や二度裏切られたくらいでへこたれてはいられない。が、意見をくすぶらせるのは良くない。その枝はつぶしておきたい」
「分かりました。俺もそう思ってますが、可能な限り公平に、文案を練って質疑します」

GENZは是空を見た。
「大統領、決断のほうは」
「二時間まて。外の空気に当たってくる」

是空は重々しく言った。
ちなみに外の空気に当たるというのは比喩表現で、リアルの仕事をしてくる程度の意味である。

是空は席を立ち、一人歩きながら言う。

「結論は決めている。向こうはすでに終わっている。強いていうなら蜃気楼だ。だが最近、新種族という家族が増えたせいかな。蜃気楼を消すという決断をするのだけでも重い」

「心中お察しします」
秋春は深々と頭をさげた。

是空は振り向いて秋春をみる。
「秋春。あとは頼んだ。諸大臣をまとめておいてくれ。問題や疑問をリストアップして、仮の解決法を枢密院のメンバーで議論して加えておいてくれ。決断は俺が出す」
「分かりました。全力でやります」

「頼む。GENZ」
「は」
「開発は続行だ。泥沼の陸戦でプレイヤーの心が損耗するのを俺は望まない」
「承知しました。先制の一撃で、終わらせてごらんにいれます」

是空はドアを押しながら、口元をほころばせた。
「それと奥さんとは仲良くしとけ。俺に言われたくないだろうが」
「是空さんは一人のほうが似合ってますよ」

「よせ、寂しいだろ?」
笑い、一人で去っていく是空。
大臣たちは頭を下げてその姿を見送った。

是空は、俺はまた親しい奴を斬っていくのかと思ったが、それを口には出さず、ただ心を強くした。

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