キュウリの馬

 入り口である七月七日には、胡瓜の馬をおく。
出口である八月の中には、茄子の牛をおく。

最近はどっちも同じ日にやることが増えた。霊も大変である。

胡瓜の馬、茄子の牛。
これらは乗り物であり、霊が乗ってくることを想定している。

形を似せるのは、魔術の基礎の基礎である。熊の皮をかぶれば勇猛な戦士になると信じ、生きた馬の代わりに絵馬を奉納するのはこの一例である。
元は貴人死すとき、これに従わせるため生口(奴隷)を生き埋めにする代わりに埴輪をうめることにした、周建国の故事にまつわる話だが、後、三国の時代でも大河を鎮めるために人を生け贄に掲げるのを孔明がとめ、人の頭を模してこさえた饅頭をもて見事に大河を鎮めて見せた事例がある。

牛にせよ、馬にせよ、これをはじめたのはたいした魔術師であろう。少なくとも魔術の原理を全部分かった上で、民衆に伝えだしたに違いない。

 行きも帰りも同じ生き物でないのは理由がある。
収穫時期が違うのである。八月の胡瓜はかつてしおしおのへろへろであった。そんな馬には霊も乗りたくあるまい。

秋も深まる八月には茄子が収穫され、だから乗り物は茄子だった。
米茄子がアメリカより入る前、どっちも形は似たり寄ったりで、それでも牛と馬とわけたのは、牛びいきの日本人が、馬だけ出すのは悪いだろうという、まこと日本的考えによるものであるが、同時に、ゆっくり帰ってもらうようにという、それとないひきとめの気持ちも、あったりする。

早く帰ってきて。と、ゆっくりゆっくり帰ってねという。気持ち。まこと、美人に言われたら、いや、美人でなくても霊ならば相好を崩すに相違ない。中々のサーヴィスと断じるほかない。

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