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zoom RSS パート19

<<   作成日時 : 2011/03/13 16:04   >>

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 風杜神奈は鈴を両腕につけ、ゆっくりとご神木の舞台に昇りつめた。
剣を抜き、舞い、鈴を鳴らす。ステップを踏む。

 地面に埋めた壺の上に木を張った舞台はステップを踏む度に足音を響かせ、いくつもの松明の火を揺らめかせた。

「こういうのは女神がやるんじゃないんですか」
白石は傍らで腕を組んでいいぞ、もっとやれと言うグリンダを見て言った。
グリンダは、顔からして面倒くさそう。小指で耳の穴をほじりながら言った。

「剣以外は苦手なのよね」

良くそれで愛の女神が出来ますねと言おうと思ったが、良く良く考えれば白石もまた、剣以外苦手な藩王だった。

「お互い大変ですね」
重々しくうなずく白石。
「まあね」
鷹揚にうなずく愛の女神グリンダ。

回る神奈。手をあげる神奈。腕に巻きつくレースが揺れた。

地面がステップに合わせて揺れる。腹に響く。

同心円状に舞台の外が沈む。星空が熔けて七つの螺旋を描き始めた。

一斉に抜刀する白石王以下の戦士たち。白刃が煌めく。
「これより召喚の儀を開始する! 愛の女神前へ。戦列前進。岩澄を守れ!」

一斉にステップが踏まれる。

世界全体が揺れる様な振動。

 風杜神奈は鈴を鳴らし、そして隼人を見た。
一瞬だけ目を合わせる。表情も変えず。

次の瞬間には腕を振りぬき、鈴の音とともに虚空を切り裂いた。

巨大な何かが姿を見せる。

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鷺坂祐介は遠く地鳴りを聞きながら天の御柱を見上げた。
鈴の音が聞こえる。退魔の音。清めの音。

「はじまった……」
ちゃっかり風住の手を握る祐介。
風住は不安そうに横の祐介を見た。

「あれも神さま?」
「摂理だ。白石藩王が愛の女神の軍勢を組織し、摂理の神と戦い出している」

 字面は恰好いいが、まさか愛の女神が雄たけびあげて剣でぶん殴ってるとは誰も思うまい。

「素敵だね」
風住はやはり間違った感想を言った。

「うまくいくといいね」
祐介は短く言った。

「手伝えないの?」
「手伝う。神々の争いが拡大しないよう、かつて光と闇の神々が争ったような事が起きないよう、調停しなくては」

祐介はそう言うと、風住の手を取って夜の闇に走りだした。

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 共和国防空網が帝國で異常な振動を検知する30分前に、ウイスキーが一本贈られた。

差出人はなし。

―彼が君たちの職務への献身を、けして忘れることはない―

とだけ、書かれていた。

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 カール・萩野・ドラケンは、ウイスキーを手に取りながら、悩むように考えた。
これは何だろう。

今日はバレンタインだった。妻のためにも早く帰ってやりたいし、猫たちとも遊びたい。妻はケーキを焼いているかも知れない。
――とはいえ。

カールは考える。何かあると言うことだろうか。
だがメッセージは注意を促すものには見えない。

どう言うことだ。カールは考える。

あるいは逆だろうか。蒼龍がまたチョコを配るので、よろしくとか、そう言った種類の。

カールは頭を振りながら、共和国防空網で異常が発見された場合、通常の対応とは異なって一端城摂政に情報を集め、判断を仰ぐようにと指示を出した後、あわてて妻の元に走った。

花屋が閉まる前に寄って花束の一つも買っていきたいのだった。

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 和風アイドル、鷺宮龍燈は読書の手を休めて、神々を見上げた。
先ほどから天の神々が2派に分かれて対峙している。ほどなく天変地異が起こり始め、神がはっきり知覚出来ない程度の霊能者たちが、悲惨なことになるだろう。

「帝國軍は、どう抑えるのですか」
「かくたさんが、ごまかします」

藻女は静かに言った。

「振動をごまかせるんですか?」
聞き返す鷺宮龍燈。藻女にもらったどら焼きを手にとった。

藻女はかくたに疑いを持たない。真顔でうなずいた。
「大丈夫、だって」

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 黒崎家の子供たちがにわかに震えだしたが、母親とむつきは、事前に愛の女神の加護を願い、贈り物をしてしのいでいた。

黒崎家で最も魔法力が強いセイイチローは弟と妹を抱きながら、大丈夫さ。すぐによくなるよと言った。

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「過去にして未来の王より伝言、にゃんにゃん共和国妖精軍、出陣せよ。繰り返す、妖精軍、出陣せよ」

 那限・ソーマ=キユウ・逢真は、そう伝令を伝えると、自身、妖精の剣と呼ばれる葉を数枚ポケットに入れ、大きな槍をもって兜をかぶった。

昼でも暗い森のあちこちから、一斉に燐光があがる。
武装した妖精たちが続々と飛びながら集結を始めた。

 那限は王より特に貸しだされた妖精の竜<フェアリードラゴン>、竜太郎の背に乗ると、森から一斉に飛んだ羽根妖精たちを追って空に出た。

槍を振る。
「愛の女神にかけて、あまねく全ての子のもとへ。加護を。とりわけ魔法力の強い子らの上に!」

「Q!」
那限は自らの羽根妖精の名を呼ぶと、胸の鎧下の中にこれを入れて猛スピードで先発した妖精軍を追った。

地にはカバにも似たトロール団が巨大なスコップをもって続々と穴を掘り始めていた。

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 サクは子供たちが先ほどから泣きやまないので困っていた。
「銀一郎、銀二郎……えーと」
「パパもどうかして!」

総一郎は変な顔で虚空を見た後、サクの言葉に引きずられて我に返り、子供の一人を抱き寄せた。
 夫婦には見えないが、すでに妖精軍が続々と上空で戦闘機動<コンバット・マニューバ>に入っており、敵も味方もばたばたと落ち始めていた。

「いや、こういうバレンタインもいいな。家族一緒で」

言葉は最後まで言えなかった。鍋の国の半分が粉々になるような衝撃が襲いかかったからだった。

家が半分ほども指で引きちぎられ、どこかに棄てられた。

空間がほころぶのをずっとまっていたそれが、姿を現した。本来は正月で現れる存在だったが、迎撃準備が整わず、宰相がわざわざワールドタイムゲートが開かないように別のゲームを連日やって封じていたものだった。


ひときわ大きく、銀一郎、銀二郎が恐怖ではなく、妖精の死を泣くと、その時地面を割ってトロール達が姿を現した。

―御苦労。良くがんばってくれた。―

トロールが道をあけた。

ゆらりと真っ白な、ローブが揺れた。

「わたしと同じ名前の子がいると言うのは、こちらかな」

迷宮の賢者は左手で杖をかかげ、闇が深くなるほど燦然と輝きだす魔法の光を宿らせて空間の歪みから出たそれと対峙した。

大きさは何万倍も違ったけれど、迷宮の賢者が杖を一層輝かせて静かに前へ出ると、それは下がった。次の瞬間には激怒し、地獄の業火を鞭にして叫んだ。

洒落た帽子を震わせ、微笑む賢者。銀一郎を見る。
「確かに、わたしの名前を付けなければならぬほど、特に加護が必要なようだ」

 押し寄せる地獄の業火を地面を踏みしめ、地の底から水を噴き上げさせて防御する迷宮の賢者。杖をさらにさらに輝かせ、呪文一つ唱えずにその鞭を左手一本で押しとどめた。

「そう、この前も互角だった。杖だけでは無理だ」

迷宮の賢者は面白そうに手を合わせる総一郎を見て微笑み、サクのために説明した。
「わたしかね。わたしは柳田くんのところで世話になっているイスタリでね」

老人は完璧なシンダールでイスタリを名乗った。

「今はそう」
老人は大統領の紋があるライトセーバーを輝かせながら言う。

「ただのゲームデザイナーだよ。かかってきたまえ。今度は杖だけではないぞ」

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