パート14

//アイドレス
 リワマヒ国の料理人たちは眉間に深い皺を刻んで腕を組んで瞑目していた。

蒼燐が、チョコを送ってきていたのだった。

大漁チョコ、めざしチョコ、コワニの行進チョコ である。
文字にしただけではもう全然内容が分らないがとにかく奇妙なものだと思っていただきたい。

腕自慢だが素朴で気のいい料理人たちは、この奇妙なチョコを前に悩んでる。
かれこれ2週間である。

その間にスコールが来て、大風が吹いて、太陽が昇ったり沈んだりしていた。

「やっぱりこれは、挑戦じゃないかね」
一人の料理人が言った。全員がうなずき、コック帽をかぶりなおして腕まくりした。

「その挑戦、乗った……!!」

どうでもいいが先に風呂にいって欲しいものである。

コックたちは続々と空中に飛び上がると奇声をあげながら料理にとりかかった。

/*/

 akiharu国では産卵期だけ人間に変形するエスパーカマキリ達が大増殖を始めていた。

環になって、踊るカマキリ達。中央には阪明日見の送ったチョコが安置されている。
羽根同士をこすりつけ、音を立て、人間では不可能な二つの発声装置で喋り始める。

呪文詠唱。

チョコが2個に増殖し、さらに4つに増殖し、さらに8個に増えた。
加速度的に、具体的にはアイドレスのRDのように加速度的に増殖するチョコ。

 いやあ、これにて全員にチョコがいきわたりそうだね。
岩崎は笑いながら言った。

積みあがるチョコはすでに山を越えている。

/*/

 チョコを積んだ宰相府のロボット・トラックが、10kmを越えるコンボイを組んで移動している。

行先は、巨大迷宮。

地下の産物と秘書官の出稼ぎが主力の後ほねっこ藩国に、出稼ぎ中のたらすじと南天がチョコをおくったのだった。

瑛吏は交通整理を2匹の雷電とやりながら、続々と輸送されるチョコを眺めた。
宰相府は何をやってるんだろうと思ったが、次に土場はどれだけ儲けたんだろうかと考えた。あるいは手の込んだ菓子は星鋼京かもしれないが。

身震いする瑛吏。

国民が長蛇を作ってとりにきているとはいえ、チョコが集積されるこの地下ドームはチョコの匂いでむせそうだった。 工場はもっと大変に違いない。

瑛吏、意外にチョコ苦手である。
隣のじょり丸が、同意するように、うなずいて、自分の尻尾をかんだ。毛づくろいだった。

/*/

「何してるの?」
 ぽち皇帝はじょり丸をなでながら瑛吏に訪ねた。
ぞんざいに頭を下げる瑛吏。

「交通整理です。チョコで渋滞というのは、困るでしょうし、うちのはそう言うのを気にします」
「ああ、南天さん」
「ご存じで?」
「……」

ぽちは目をそらした。
苦笑する瑛吏。

「まあ、顔はさておき、名前だけでも覚えていただけていたのは幸いです。そうですね、かわいい小動物みたいな感じの……」
「この国はそういうのばっかりという印象が」
「そうですな。まあ、そういう感じの女です」

ぽちは難しい顔。後ろに隠してるが、実は皇帝、南天から賄賂ならぬチョコを貰っているのである。ここはひとつ、臣下のために努力せねばなるまい。

「なんか、南天にありがとうとか、愛してるとか言ったらどうかな、きっと喜ぶと思うんだけど」
「遠慮しておきます」
「えー!」
「他人に聞かせるのは、御免蒙る」

/*/

 瑠璃は大量のココアの匂いに、むせながら、国民のみなさーんと、呼びかけようと失敗した。激しくむせた。温かいチョコで1000万人分くらいあればもはや凶器である。
ちなみに間違って背の大釜に落ちたらおそらく世界で一番たいしたことのない死因になるような感じであった。まさにチョコ死である。

下に集まる国民が、歓声あげようとしてはげしくむせる瑠璃を見て、ぁーと、小声で声を出した。

涙ながら顔に布を当ててぽちの小旗を振る瑠璃。
国民たちは瑠璃さまが感涙にむせておられると勝手に判断し、皇帝陛下万歳と叫んで巨大なウエーブを作り始めた。

/*/

 ぽちはドレスのスカートを手をつまむと階段の手すりを滑って降りてになし藩へ向かった。
顔は笑っている。

「まってろチョコ、いや、まってなさい瑠璃」

本音を隠しきれないのは昔からであろう。

皇帝は輸送機に飛び乗った。瑠璃から手づからチョコを貰わねばならない。今日は狩りの日である。

/*/

 一方、世界忍者国のテラスでは尋軌が女王陛下からなるぞと、国民にチョコを配る発表をしていた。

テラスの下に集まり、うわーぃ、と喜ぶ国民達。

 テラスの陰で国民の喜びを見る、濃紺。なんだかんだで女王、人気あるんだな。
そして満足げな尋軌に言った。
「いいのか。あのチョコは摂政、お前の……」
「いいのだ」

顔を見せず、言う尋軌。
「爺ぃに貰うより、女王でも女性からもらう方が嬉しいに決まっておりますぞ……」
それはそれで大逆罪で死刑になりそうな言葉だなと濃紺は思ったが、黙っておくことにした。

「そういや、皇帝にもおくったとか」
「そう、先代と今代両方の陛下にね」

振りかえり、急に口調が変わる尋軌。
濃紺は、なんだ、こいつは女王マニアかと思ったが、何も言わなかった。そういや本命のふみこもあれだ。女王だな、確かに。

尋軌は、他のバレンタインの様子を見て、目を輝かせた。
「うわ、うちの国にわんわん帝國の皇帝陛下が来たらどうしようっ、すげえ田舎なのに!」
「ちょっとした国際問題ですよ」

濃紺は冷静に突き放した。

/*/

 テラスが爆発した。

濃紺のFVB製骨董車とは比べ物にならぬ、今の帝國の最新エアバイク。らうーるカーが、テラスの前、空中で揺れながら静止している。

派手にドレスの裾をひらひらさせながら、顔にゴーグルとスカーフをまいた若い女がスカーフをずらして口を見せながら言った。 ギャングだ、私にチョコを渡しなさい。

残念ながら濃紺はその時の尋軌の顔を見損ねた。目はひらひら、いや最新の帝國技術いや、ギャングに向かっている。

/*/

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 8

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い 面白い 面白い
ナイス
かわいい かわいい