パート13

//アイドレス

 その格別の加護が必要な家では、加護が必要とされていた悪童が、娘と奥さんからチョコを貰って派手に顔を崩しているかと思いきや、ひどく苦い顔をしていた。

甘いものが苦手なのではない。

現に目の前にあるのは、報告書だった。
チョコの方は、大事にとってある。

「これは……どう読めばいいのかな」

悪童は言った。
娘がごろごろにゃんと言ってるのでなでるスイトピーは、軽口を言うか迷った後、微笑んで、見たとおりですわと、言った。

「投機マネーか」
「ええ。共和国で資金流動を利用した、大規模なマネーゲームを起こした機関投資家がいます」

「法律的には?」
「問題はありませんわね」

「ふむ」
 難しい顔で書類を読む悪童。口を引き結ぶと、沈黙の黒太子と呼ばれる息子にそっくりである。

「帝國と共和国は法的に資金交換レートは1:1だ」
「でもにゃんにゃんはあふれています」

スイトピーは、そう返して夫である悪童を見た。殴れんのか……残念だ……と、本気でそう思ってそうな悪童の頭をなでる。

「で。共和国で食料狙い撃ちのあと、帝國に交換か。宰相府は?」
「さすがに今は交換に応じていません。でも、3000億以上の損害は受けたでしょうね」
「クーリンガン先生より強力な打撃だなあ」
「ええ。まさに」

「仕掛けたのは、やっぱり土場?」
「あら、うちかも知れませんわよ?」
「うわー。それなら俺どうやってあやまろ」
「是空王は、国民と藩王は一体ではないと、分ってくれますわ」

「やっぱりうちか」
悪童、涙目。

スイトピーは、微笑んで。いえ、それが証拠がなくて、と、言った。
はっきり違うと言わない辺り、正確というより、意外にいじわるなのである。

/*/

 あやのは娘と父親、すなわち亭主である健司が金塊を両手でかかえて、ほくほく顔で帰って来た瞬間、返して来なさいと命令した。

健司とつばさは、何故か正座しながら反論した。
「いやまて」
「そうよ。これは正当な報酬なのよ」

いらり。とするあやの。反論しただけで有罪とみなす。

「我が家は正直なお金だけで十分です」
「ほんとにほんとだって!」

 思わず地が出る、娘つばさ。腕に奇妙な彫り物があるが、別に隠すそぶりもなく、ノースリーブでスカート姿である。

父親に似てるわ―と、あやのは思うのだが、意外にかわいいので、満足している。
実際どんな顔でも満足していると思うので、この判断に公平性はまるでない。

「じゃ、どうやって稼いだの」
「それが共和国で魚釣りしててな」
「クジラ釣ったの。何頭も」

頭が痛くなってくるあやの。

「話は長そうね。手を洗ってうがいして、まず夕食、チョコがあるけど、まだ食べない」
「ハイッ」×2

あやのは敬礼を見て微笑んだ。なんだかんだで甘いのである。

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