パート12


 矢上麗華のもとに、カーネーションの花束が届いたが、送り元などは分からなかった。

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//アイドレス・ファミリー

 白石は、鼻水出しながら、うちの嫁はバレンタインなど分らんだろうからなあと、思いつつ、チョコを抱えて馬を走らせた。

「まどかー。チョコ持ってきたぞー。バレンタインだ―」
自分でも妙な言い回しだと思いながら、自宅前に馬をつないで娘にチョコを持ってくる白石。

円は白石を見て寄ってくると、とりあえずは抱きついた。
最近甘えん坊なのだった。私に似ているとは、母であるほむらの談である。

「バレンタインは女からではないのか?」
ほむらが煎餅を焼く手を休めながら言う。 ハケをもって砂糖醤油を塗りながら七輪で焼くのである。髪を布巾で隠している。

「煎餅にしたが。いいか?」

白石は娘を撫でながら微笑んだ。ありがとう以外の言葉が咄嗟に出てこなかった。

何とか少し考える。
どうやら俺は、世界一の幸せ者らしい。

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 黒崎克哉は家族が多かった。
だからチョコも多かった。

旦那、長男、長女、猫、次男。

ついでになぜか知恵者に酒まで送っている。以前世話になったのだった。
大散財だが本人は嬉しそう。また家族増えないかしらと本気で思ってる。
家族が増えるほど幸せも増える。

「旦那さーん!」
「うん」

ソウイチローはヘリオスという名前の猫を撫でている手をとめて黒崎を見た。

「幸せですよね?私たち」
「たぶんな」

 えー。という顔をする黒崎。
ソウイチローは苦笑して、まあ、そういうこと言ってると息子に説教されるぞと言った。

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 瀬戸口まつりは、亭主に日本酒を送った。難しい顔して、瓶を眺める高之。
顔が笑う。どうやら合格のようだった。まつりは内心ため息。

「へえ。良く作ってあるじゃないか」
「ラベルで分かるんですか」

にこっと笑う高之。

「まあな」

ついでに高之、ののみから煎餅も貰っている。
これは高之が和菓子好きなせいだったが、奇しくも今年は煎餅プレゼントする人物が多かった。

「んじゃ、煎餅で呑むか」
それが貧乏くさく聞こえない所は、この人物のいいところである。
プレゼントをきちんといただくというところが、しっかりしていた。

呑むかと誘われて、瀬戸口まつりは喜んだ。家内安全が一番だと、そう思った。

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 奥羽りんくは、二人の子供にさくらチョコを贈った。
姉である”くれは”は、弟そうはの歯を心配しつつ、自分の分までチョコをやって喜んでいる。言葉使いの悪さは相変わらずだが、最近は弟をかわいがってるので、安心している。

「恭兵さん」
「ん。チョコか」
「カップそばじゃなくて、すみません」
「全然、すまなさそうじゃないが」
「ええ。家族の健康に責任があります」

恭兵は、りんくの顔を眺めたあと、妻というか、母は強いなあと思ったが、何も言わなかった。
昔は尻を触られただけできゃーきゃー言ってたのにな。

もちろん、言わないのが正解である。言っていたら無事ではすまなかったろう。

「悪童さんとあやのさんにもチョコおくりましょうね」
恭兵はうなずいた。

「まあ、あそこは格別に加護必要そうだしな」

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