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zoom RSS 是空伝説素子(2)

<<   作成日時 : 2009/12/13 17:40   >>

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是空伝説素子(2)

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 素子は、空中戦の光を、遠く曙光のように、大きな窓ごしに満ちた。
空は曇りであり、予報では、雨が降るという、話だった。

「そう。私は死ぬんだ」
「そうだ」

ミサヤガミは、短くそう告げた。この、鍋の国の実質最高権力者は、外国で見られることはまずない珍しいヤガミである。

このヤガミがでてきたのは、つづみヤガミが、当時はまだ、あんまり社会慣れしてないこともあったが、隣国の、よしみあってのことである。
鍋の国は、とりわけ児童福祉施設の経営資金などを、あれこれFEG王妃である是空素子に世話になっていたのだった。

のち、このスタイルは旅人である夫に従ってFEGに逗留したこともある涼州藩国の王妃、スイトピー、あるいは元FEG国民であった風野緋璃に継承され、もとより手厚かった神聖巫、愛鳴之あわせて帝國は本家の共和国をしのぐ児童福祉国家になる。

是空素子という人物は、この一つのエピソードでも計り知れるだろう。
彼女は、それはいつもの気まぐれだったかも知れないが、未来に続く種をせっせと蒔いていた人物であった。

だからこその、ミサヤガミの直接登場である。

彼は未来予知を知らせに、直接面会に来ていたのである。


「それで、それだけ?」
 素子は、小さく微笑むと是空の着るくたびれたスーツを丁寧にハンガーにかけながらそう聞き返した。

「今なら間に合う。一緒に来てほしい」
「いやよ」

「そういうのは想定内だ。力づくでも」
「いや。声。あげるわよ。奥さん悲しむだろうなあ。それでなくても乙女だしねぇ」

ミサヤガミの動揺を、素子は小さく笑った。

「で、どこで死ぬの?」
「久珂あゆみの家だ」
「なるほど。そっちには今日は遊びにいかないつもりだっんだけどな。FEGにも、孤児院があるのよ。まあ、元気のいい頭の悪いのが一杯いてね」

話すそばから、電話。素子は電話をとった。
平然と。そして優しく。どんなことも、この女の誇り高さをへし折るのは、無理に見えた。

「こんにちは。あら、亜細亜ちゃん?うん。そうなの。そう・・・、竜太郎をみてたんだ。かわいいでしょ。くちばしとか。いいわよね。うん。食事ね。OK とりましょう」

「……なんで」
絶句するヤガミを見て、素子は苦笑した。ぜくーくんには、まだまだ遠い。

「意味のない死なら、そうね。よけてもいいわ。その後で感謝する。あなたたちに。でも、そうじゃないかも知れないでしょ。私は意味があって死ぬかもしれない。死ななきゃいけない、意味があったのかもしれない。だから、とりあえず行ってみるわ」

「危険だ」
「未来ってのは、予知を教えた瞬間に揺らぎはじめる、そんなものでしょう? だから、亜細亜ちゃんには教えてない」
「彼女は死なない。そういう予知だ」

素子は綺麗な瞳でヤガミを見た。
是空とおるにつらくない?と声をかけて40年。彼女だって、成長している。

「そうなるように、私がやるかも知れないじゃない。あなた、根暗よ」

素子は軽く髪をまとめて小さなバッグをとると、それだけで外出した。薄い化粧は、いつだってしている。死んだときに亭主に顔を見られるかもしれないからだった。

「あ、そうだ」
素子はドアから顔を出した。

「でも。ありがとう。気持ちは感謝するわ。それと、鍵はそこだから、でていくときに使って。捨てていいわ。ついでに掃除機お願い。ハンカチはテーブルの上においたたままにしておいて。遺品整理するとき、ぜくーくんが泣いても困らないよう。お願いね」

そして、颯爽と歩きだした。運命と、一歩も引かぬ、ダンスをするように。

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