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<<   作成日時 : 2009/10/27 21:22   >>

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 宗麟坊という、僧がいる。人相風体のあやしきこと、怪僧と呼ぶにふさわしく、その見事な体格は僧兵というにふさわしく、それでいて憂いを帯びた瞳と皮肉そうな笑顔が他の印象を抑え、名僧といかずとも、いずれはそんな存在になりそうな雰囲気を、漂わせてはいた。

 今、その宗麟坊は法衣を纏い、ゆっくりと歩いている。
一面の陸稲の中である。頭を垂れた稲穂は重く、今年の豊作を思わせた。

宗麟坊は足をとめた。ひどく広くて高い空を見て、遠くを思い、手をあわせた。

かつて暁の円卓の民はこれを見て、それでは何も切れませんぞと笑ったが、今は慣れたか、笑うものはいなかった。
それどころか宗麟坊を子供たちが真似るのを真似て、農作業の手を休め、手を合わせるものもいた。

それが祈りというものであることは、随分たってから宗麟坊が語ったものである。

亡き主君を惜しみ、宗麟坊は悲しみを隠し切れずに微笑むと、子供たちの頭をなで、またゆっくりと歩き出した。

「今日は、何をお話しましょう。強い王のお話をしましょうか」

宗麟坊は子供たちの手をとって歩き出すと、誰にも理解されぬままに死んだ王の話を始めた。

この僧は、かつては現川家に仕え、今は白石家の下につく風杜家というよりも、暁の円卓という藩国そのものに仕えている。

かつて魔王と呼ばれた男によって討ち取られ、川に浮かんで死線をさまよっていたところを、風杜に助けられたのである。

深い傷が癒えた頃には、帰る国など、無くしていた。宗麟坊は国も主も、なくしたのだった。

そして今、ここにいる。

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 宗麟坊は戦いのむなしさを説きはしない。
ただ、あの人が生きておったらなあと、口癖のように語るだけである。

それが、暁の円卓に、ゆっくりと変化をもたらしていた。

/*/

 宗麟坊という、僧がいる。人相風体のあやしきこと、怪僧と呼ぶにふさわしく、その見事な体格は僧兵というにふさわしく、それでいて憂いを帯びた瞳と皮肉そうな笑顔が他の印象を抑え、名僧といかずとも、いずれはそんな存在になりそうな雰囲気を、漂わせてはいた。

 また。宗麟坊は法衣を纏い、ゆっくりと歩いている。
一面の植え付けを待つ陸稲の中である。色の濃い土は水気を吸って柔らかく、来年の豊作を思わせた。

宗麟坊は足をとめた。ひどく広くて高い空を見て、遠くを思い、手をあわせた。

多くの民が手を合わせた。心に何を思うかはそれぞれながら、もうないものを惜しんでいるのは確かであった。


祈り終えた宗麟坊が気づいて見れば、祈りが終わるのを待っていた女がいた。
風杜神奈。宗麟坊を拾った、可憐な女武将であった。

「戦いに、いこうと思います」

神奈の言葉に宗麟坊はうなずいた。言いたいことは山ほどあったが、何も言えなかった。
だから悲しみを隠し切れずに微笑んだだけだった。

「とめないのですね」
そう言われて、宗麟坊は頭を振った。この僧は、政治にも情勢にも明るかった。
「それが出来るほど、わが手は、綺麗ではありませぬ。ただ、祈るだけです。もはや、これ以上に惜しむことなど、なきように」

神奈も、うなずいた。気の利いたことを一つでも言えたらと思ったが、何も言えなかった。


結局、神奈は歩き出した。
彼女に従う民が、農作業をやめ、続々と武器を取った。
頭をさげ、宗麟坊から離れていく。

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