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<<   作成日時 : 2009/04/14 01:35   >>

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 生きることは悲しみである。
だが死ぬことは、喜びじゃない。

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 玄霧藩という、国がある。
大荒れする、にゃんにゃん共和国、その一つの藩である。

元々、この国は医術と暗殺を生業にしていたが、医術(と麻薬)は共和国最大国家であるFEGでの需要が、FEGの人のサイボーグ化によって伸び悩み、では、ということで暗殺業を拡大したらこれを政府に禁止され、どうにもならない形で、経済的に追い詰められた国民が反乱を起こし、討伐された。

 王は宇宙産業などの振興を夢見てはいたが、森国人の禁忌意識は根強く、この方面に人が流れることはほとんどなかった。

結局、玄霧藩の生き残った国民は山に隠れ、そして、国の大部分は打ち捨てられている。

/*/

 その山の中を、息を弾ませて一人歩く男がいる。
名を、善行忠孝という。かつては玄霧の人で、今は古い知り合いの多い、宰相府に身を寄せていた。

「やれやれ。鍛え直さないといけませんね。こう見えても昔は山岳騎兵を指揮したこともあったのですが」

汗を拭き、周りを見渡す。どこを見ても枯れ木が続く。
久方ぶりの共和国は、ひどい有様だった。

「……」
目を伏せる善行。

「そんなにひどいか」
その背に、声がかかった。

善行は振り返らずに顔をあげる。悲しそうな表情。
「ひどいですね」

善行の隣に立って同じく見回したのは、コートを着たペンギンだった。
手でライターを隠し、火をつけ、煙草を吸い始める。

善行は何も言わず、煙草を一本拝借した。久しぶりに吸う煙草は、やけに苦かった。

「始末にこけたら、山火事起こしそうですよ」
「……」

ペンギンは難しい顔をした後、煙草を落として何度も踏みつけた。
その仕草に習う善行。苦笑いした。

「ひどい有様です。空気すら乾いている。土壌の保水力が激減しています」
「……昔のFEGほどじゃない」

ペンギンは歩きながら言った。ペンギンも、元共和国の者であった。
宰相府から共和国出身者が、宰相の目として、こうしてあちらこちらに送り出されている。

「生きることは、悲しみですね」
善行は言った。

「生きることは悲しみである。だが死ぬことは、喜びじゃない」
ペンギンは歩きながら言った。

善行はペンギンの背を見た後、その背を追いかけて、追いついた。

「青のようなことを言いますね」
「だからどうした?」
「いえ。別に」

黙って歩く一人と一羽。ペンギンは大昔、速水厚志が自分の隣を歩いてあれこれ聞いていたのを思い出したが、それだけだった。ペンギンは上手くいっている誰かを懐かしんだりはしない。

善行はまた口を開いた。

「情報集めてどうするんですか?」
「説明受けたろう。共和国支援だ」
「宰相府が、ですか」疑わしそうな善行。国というものには裏がある。
「父親が、娘を、だ」
ペンギンはそう言うと、手帳にデータを書いた。人がいないのは、地下に住むからだろうと推測された。

善行はペンギンの作業を見終わった後、口を開いた。
「喜びはどこに?」
「たまに見あげる空が青い時がある」
「それだけですか」
「俺はそれで十分だ」

ペンギンはそう言うと、また歩き始めた。

「ハードボイルドですね」
「……」
ペンギンは黙った。返事する必要を、認めていないようだった。
善行は頭をかいた後、再びペンギンを追いかけ出す。

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