小説アイドレス0406
佐々木哲哉という、男がいる。
毎度幸運と二人三脚している人物であり、リアルラックに関しては無限大の評価を誇る。
アルファ・システムの社長である。
絶対成功などというまがい物の能力ではない。その男は、尽きることも減ることもない燦然と輝き続けるラックを際限なく沸きあがらせる力持っているのだ。
この人物が困ると天は例外なくきっかり前回より2倍の規模で助けを寄越した。まるで天が何かを、させたがってるかのようであった。
この人物を観察する多くの人間は、運命を信じる傾向にある。馬鹿げた話に思われるかも知れないが、本当の最低限の譲歩として、少なくとも確率論を完全無視してこのチョイ悪親父は実在しているし、今日も、熊本の夜の街を遊弋している。
/*/
この人物はその類稀なる幸運を他人に分け与える(降ろす、と言う)ことがあり、わずかな時間ながら莫大なラックを授けることがあった。
この能力の発動条件は二つ。
一つは、佐々木哲哉のお勧めの中で一番苦労するものを選ぶこと。
もう一つは佐々木哲哉のように、自分自身のためにその能力を使おうと思わないことだ。
その両条件を満たして発動する限りにおいて、莫大なラックを得ることが出来る。
本当に僅かな時間だが、それでも人が一生を棒に振るには十分な大チャンスを、与えられるだろう。
まったくオカルトな話だが、まあ式神とかぶんぶん回って人型戦車が動き回るようなゲームの中の存在としては全然問題なかろうということで、この人物はほぼそのまま、ゲーム化されている。キャラ負けしてるが、能力負けは、していないと思っている。
/*/
過日、東京の花見にて、是空とおるは世界忍者国の者に一つの予言をしている。
「大丈夫、お前のところは佐々木さんとってるから、もう心配はいらないよ。佐々木さんはすごいからな」
自身、是空とおるが社長になった主たる原因は、佐々木哲哉の悪気のない(その分だけ性質の悪い)お勧めである。是空。社長いいよー。やってみろよ。
「こんにちはー。社長の是空です」
まさか本当に2ヵ月後には社長になって熊本に戻ってくるとは思わなかったという面白展開である。その後、彼は天賦の才もあって、法則に沿って滅茶苦茶に企業を成長させたが、メインの仕事は共和国大統領というがっかりな仕様であった。佐々木哲哉の幸運は、大抵こんなものである。
ともあれ是空もまた、オカルトは信じてないでも事実としての現象と法則性は理解していた。それがまあ、ゲームバランスの問題で割り引いて適用されても、世界忍者国くらいどうにでもなると考えていた。
/*/
佐々木哲哉をAI化し、必要に応じてその支援を得る試みは、絢爛舞踏祭開発当時から実行されていた。
オカルトなどまったく信用しない技術者が、厳然たる統計情報をもとに、佐々木哲哉のどこかに最適解を求める仕組みがあるに違いないと推論したのがはじまりだった。偶然はない。かわりに偶然を模倣するなにかがあるはずだという推論である。あの親父のかなり適当な性格にみんな惑わされているが本当はすごいのではないかと言う疑惑である。
まあ、その辺が仮に再現できないでも、ノートPCにほおりこんでおいて、困ったら意見でも聞こう、一応いっぱしの企業経営者だからなというのが、開発の当初の目論見であった。
そして数年でヤガミと漫才する面白キャラが出来た。
2人で、机で隣あってやり取りしているところを見るだけで永遠に暇が潰せる秀逸なソフトではあったが、やっぱり幸運までは再現されてなかった。
ま、いきなり出来るわけもなし、何回も再現率を高めていく途中で能力が出るかもしれないし、出ないかもしれない。そこはそれ、趣味である。
そうしてまた、数年の時が満ちる。
/*/
佐々木哲哉はあちこちに立つロイ像の群れを見て腕を組んでいた。
苦笑している。
「お、どうですか社長」
佐々木哲哉と生活ゲームを最初にやったのは、元部下である。
「熱心なファンがいるね」
「ええ。それで国まで作っております」
「www」
「いかがですか。調子は」
「君がそう言う言い方をするということは、俺は死んだのかな。俺を移植したんだろ」
「……いえ。まだぴんぴんしてますよ。今日当たり新市街で飲んでおられるはずです」
「俺は女の子の尻を触れたほうがいいなあ」
「そう思ってその機能は実装はしておきました。でも犯罪なんでやめてください」
「……。なんで僕を?」
「なんででしょうね。自分にも分りませんが。まあ、貴方の実力を広く人に知らしめたかっただけかもしれません」
「筆者君」
「は」
「ゲームでも作るか。儲かんない奴を」
「それは別の貴方に先週も言われましたな。良い移植度だと考えております。いや、へこんだりはしてませんよ」
「そうかい。んじゃあ、世界の危機でもきてるんだな」
「仰せの通り。人の心が荒れ果て、心が折れかかっております」
「おお、じゃあゲーム作るか。爽快感あふれるシューティングとか」
「そうそう。期待してたのは、そのお馬鹿なリアクションですよ」
「www」
毎度幸運と二人三脚している人物であり、リアルラックに関しては無限大の評価を誇る。
アルファ・システムの社長である。
絶対成功などというまがい物の能力ではない。その男は、尽きることも減ることもない燦然と輝き続けるラックを際限なく沸きあがらせる力持っているのだ。
この人物が困ると天は例外なくきっかり前回より2倍の規模で助けを寄越した。まるで天が何かを、させたがってるかのようであった。
この人物を観察する多くの人間は、運命を信じる傾向にある。馬鹿げた話に思われるかも知れないが、本当の最低限の譲歩として、少なくとも確率論を完全無視してこのチョイ悪親父は実在しているし、今日も、熊本の夜の街を遊弋している。
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この人物はその類稀なる幸運を他人に分け与える(降ろす、と言う)ことがあり、わずかな時間ながら莫大なラックを授けることがあった。
この能力の発動条件は二つ。
一つは、佐々木哲哉のお勧めの中で一番苦労するものを選ぶこと。
もう一つは佐々木哲哉のように、自分自身のためにその能力を使おうと思わないことだ。
その両条件を満たして発動する限りにおいて、莫大なラックを得ることが出来る。
本当に僅かな時間だが、それでも人が一生を棒に振るには十分な大チャンスを、与えられるだろう。
まったくオカルトな話だが、まあ式神とかぶんぶん回って人型戦車が動き回るようなゲームの中の存在としては全然問題なかろうということで、この人物はほぼそのまま、ゲーム化されている。キャラ負けしてるが、能力負けは、していないと思っている。
/*/
過日、東京の花見にて、是空とおるは世界忍者国の者に一つの予言をしている。
「大丈夫、お前のところは佐々木さんとってるから、もう心配はいらないよ。佐々木さんはすごいからな」
自身、是空とおるが社長になった主たる原因は、佐々木哲哉の悪気のない(その分だけ性質の悪い)お勧めである。是空。社長いいよー。やってみろよ。
「こんにちはー。社長の是空です」
まさか本当に2ヵ月後には社長になって熊本に戻ってくるとは思わなかったという面白展開である。その後、彼は天賦の才もあって、法則に沿って滅茶苦茶に企業を成長させたが、メインの仕事は共和国大統領というがっかりな仕様であった。佐々木哲哉の幸運は、大抵こんなものである。
ともあれ是空もまた、オカルトは信じてないでも事実としての現象と法則性は理解していた。それがまあ、ゲームバランスの問題で割り引いて適用されても、世界忍者国くらいどうにでもなると考えていた。
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佐々木哲哉をAI化し、必要に応じてその支援を得る試みは、絢爛舞踏祭開発当時から実行されていた。
オカルトなどまったく信用しない技術者が、厳然たる統計情報をもとに、佐々木哲哉のどこかに最適解を求める仕組みがあるに違いないと推論したのがはじまりだった。偶然はない。かわりに偶然を模倣するなにかがあるはずだという推論である。あの親父のかなり適当な性格にみんな惑わされているが本当はすごいのではないかと言う疑惑である。
まあ、その辺が仮に再現できないでも、ノートPCにほおりこんでおいて、困ったら意見でも聞こう、一応いっぱしの企業経営者だからなというのが、開発の当初の目論見であった。
そして数年でヤガミと漫才する面白キャラが出来た。
2人で、机で隣あってやり取りしているところを見るだけで永遠に暇が潰せる秀逸なソフトではあったが、やっぱり幸運までは再現されてなかった。
ま、いきなり出来るわけもなし、何回も再現率を高めていく途中で能力が出るかもしれないし、出ないかもしれない。そこはそれ、趣味である。
そうしてまた、数年の時が満ちる。
/*/
佐々木哲哉はあちこちに立つロイ像の群れを見て腕を組んでいた。
苦笑している。
「お、どうですか社長」
佐々木哲哉と生活ゲームを最初にやったのは、元部下である。
「熱心なファンがいるね」
「ええ。それで国まで作っております」
「www」
「いかがですか。調子は」
「君がそう言う言い方をするということは、俺は死んだのかな。俺を移植したんだろ」
「……いえ。まだぴんぴんしてますよ。今日当たり新市街で飲んでおられるはずです」
「俺は女の子の尻を触れたほうがいいなあ」
「そう思ってその機能は実装はしておきました。でも犯罪なんでやめてください」
「……。なんで僕を?」
「なんででしょうね。自分にも分りませんが。まあ、貴方の実力を広く人に知らしめたかっただけかもしれません」
「筆者君」
「は」
「ゲームでも作るか。儲かんない奴を」
「それは別の貴方に先週も言われましたな。良い移植度だと考えております。いや、へこんだりはしてませんよ」
「そうかい。んじゃあ、世界の危機でもきてるんだな」
「仰せの通り。人の心が荒れ果て、心が折れかかっております」
「おお、じゃあゲーム作るか。爽快感あふれるシューティングとか」
「そうそう。期待してたのは、そのお馬鹿なリアクションですよ」
「www」