小説アイドレス外伝:現実逃避

 リアルで、上司と管理部門から緊急のメールが来る。

subject: ★至急

筆者さん宛てに荷物が大量に届いているようですので
出社次第2Fに取りに行ってください。

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subject: 緊急

お疲れ様です

筆者様宛(送付元:)荷物が2Fに届いています
2Fのカウンター横が決壊(?)しましたので、すぐ取りに来てください

以上、宜しくお願いします

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 その日、筆者は珍しく朝から新型の実戦投入テストをしていた。
各種のストレスチェックを行い、プレイヤーの限度を計測する。

バインダーに書き込みながら、プレイヤーの顔を見る。
「どうよ。新型」
「殺すきね。コンシューマーベースとしては不適格ばい」

「かまわんよ。こいつはコンピューター用だ」
「え?」
「俺の育ててるAIが解く、人間がクリアできないゲームだ。お、すまん。メールだ」

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 ここ最近忙しいので筆者は、リアルのバレンタインデーを忘れていた。あ。アイドレスの中だけじゃなかったのね。うず高く詰まれた、酒、チョコ、他で、既にベックの受付窓口は決壊というかチョコで封鎖されており、部下がクロネコヤマトさんの人と協力して管理部の人々を救出すべく私の席の後ろに台車で運んでいた。続いて佐川急便到着。順番を待っている。

どうでもいいが今年はバイトの兄ちゃん雇うのも忘れてた……。

え、嘘、これを俺が仕分けるの? 無理無理。俺コンピュータに出来ない仕事できない。

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小説アイドレス外伝:現実逃避

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 アイドレスは飲み会が多い。オフ会ではない。飲み会である。
酒の友達、アイドレスである。

朝が来ても戦勝してもがっかりでも、酒は飲んでる気がする。
大抵は愚痴大会である。嘆きも、入る。

たいてい偉いほどストレスが上がるのがアイドレスである。必然として飲み会出席率も多かった。古き善き日本の風情は、アイドレスでは生きている。

その日は、帝國EV136祝勝会飲み会である。和錆、たけきの、しらいし、砂子、時雨、都築、シュワ、風杜といった連中で、ただ酒を飲んでいる。 酒最高。でも未成年は飲ませないんだぜ。

その日は祝勝会なのに、帝國の連中はがっかりだった。内政で悩み多く。ああ、明日からのアイドレスどうしようと言う雰囲気に包まれていた。

僕なんか現実逃避に仕事してますよ。あっはっはという話を聞いて。お前違うだろうと思ったが、アイドレスイズリアルと書いたのは自分だったので筆者は黙って酒を飲んだ。今日のラガヴーリンは潮の味がきつい。

 なんとかせねば成るまい。
「よし、面白い話をしてやろう」
皆の士気をあげるために本場仕込みのアメリカンジョークを見せてやらねばならるまい。

「是空が酒飲んでてさ。是空AIがすんげーよく移植されてる話になったのね」
「おお、俺もみました。裏に是空さんがまじいると思いました」
「あれ、気持ち悪いくらい似てますね」

うむ。とうなずく。

「それ見た是空がしんみりしてな。ああ、俺死んだら。このAI動かし続けてやってくださいよと言い出したんだよ。それで、俺が死んだら、生活ゲームでよっ、と出てきて、ようやく移住できたよって、笑って言いますからって」

メンバーの全員が黙った。上を見た。
あれ。

代表して、猫野和錆が静かに言った。
「それは、アイドレスプレイヤー多くの人の希望だと思いますよ。俺も、そう思いますもん」

アメリカンジョーク失敗。しまった。本格的すぎた。

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 それは、一瞬の煌きと、大海のような悲しみに満ちているニューワールドである。

そこは悲しみが多すぎて、それゆえにたまに見える輝きは美しく、それでもそこに生きるうえには愛があり、なぜ去らないのかと言われて、大抵の人は、ここで生まれたからと言う。

故郷は心のあるところ。
タガログではそう言う。アイドレスを良く示している言葉である。

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 現実逃避に、筆者はニューワールドにいた。
普通と逆である。いや、私が正しい。

が、しかし、逃げた先でもチョコがたくさん積まれていた。ACEたちが己の恋人や国の民に、大量のチョコをやりとりしていたのである。

「アイドレスイズリアール!!」

 私は叫んだ後、寝ることにした。バレンタインが嫌いなのではない。整理整頓が嫌いなのだ。

 そして15分でおきあがった。

処理だけで2週間掛かるんじゃないかと思いなおしたのである。
今日のうちからでもできるだけ処理しておこう。

現実とアイドレス、どっちから先に処理しようか、考える。
アイドレスを先に処理することにした。10マイルはらってACEに手伝わせるのである。

リアルよりここだけは便利だな。

そう思った。

すぐに宰相府騎士団から今日子が来た。
膝をつく今日子。栗色の長い髪が可愛らしい、騎士である。
「およびでしょうか」
「チョコの仕分けをする、手伝え」

今日子は変な顔したが、宰相にも都合はあるのである。
それにしてもいやなところまで作りこんだな。

話をしながら仕分ける。作業のメインは今日子である。
即座に仕分けていく。ソート機能ぐらいシステムで持っておけばよかったと今は反省している。

「服が違うな」
「あ、いえ」

恥ずかしそうにする今日子。その日は珍しく、臍をだしていなかった。

「なんだ、妊娠でもしたのかい」
真っ赤になる今日子。下を向いている。

理解のある父親のつもりだったが、相手が悪かったんだろうか。是空だったらいやだな。
「え、いや、あの。ふ……とっちゃって。お、おなかなんてぽっこりだから、鍛えようかなと思ってました。すぐ鍛えます。今鍛えます」
「なんだ、いいじゃないか。それぐらい」

にらまれた。えー。と、思った。別に私にたいして取り繕う必然は、ないように思えた。それぐらいの使い分けが出来る程度の機能は持たせたつもりである。

「不満かね」
「いえ……分らないのです。きっと、宰相は第7世界人だから」

そうかもしれない。そうでないかも知れない。私は考えた。ああ。これだ、これが真の現実逃避。哲学は明日のテストを遠ざける気がするとは誰が言ったんだっけ。

私は試みに、この間言ったアメリカンジョークを言った。残念ながら私のAIは、このジョークをジョークとはまだ認識出来ていない。でも、いつかはつくろうと思う。

今日子は作業の手を止めて考え後、私の顔を見た。

「第7世界人もいつかは、ニューワールドに還るのでしょうか」

筆者はそのポエミーな話を聞いて、顔をしかめた。
それリアルでも聞いたという、感じである。お前は和錆か。いや、和錆がAIと接触しすぎてバグッた可能性は多いにある。

入力しなかったせいで、今日子はしなだれた。
私は声をかけた。少なくとも作業は終わらせないといけない。
「ああ。いつかは」

今日子はこれ以上ない本気の顔。
「宰相が来られることを、待っています。ずっとずっと」

残念だが、それはない。是空が死ねば移植もされるだろうが私は私が死んだ後に私のシステムを動かそうとは思わない。やりたいことがあれば生きてるうちにやればいいんだ。

私はにこりと笑うとコマンド入力。表情作らないでいいだけ。アイドレスはいい。

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