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zoom RSS アイドレス小説1227

<<   作成日時 : 2008/12/27 18:56   >>

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「魔術師め、貴様、俺にどんな魔法をかけた?」
            古くから知られる罵倒の言葉 72218002

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 魔術師と言う職業がある。
ゲームデザイナーのことである。ペテン師の親戚とされるが、ことの最初から種も仕掛けもあることを明言している点が、異なる。そこに神秘はない。だが玄妙はある。

 高らかに法(ルール)を唱え、人がそれを聞いて動くだけで笑ったり悲しんだり高揚したりする職業である。
最高位になると人の心を簡単に壊したり、あるいは子々孫々まで残る善き思い出を作り上げたりする。異世界とこちらを繋ぐ門を開き、行き来するような芸当すらやる。

もちろん、最高位の魔術師でもそんな芸当は簡単には出来ない。種も、仕掛けもあるのである。

たいてい、長い長い時間をかけ、少しづつ綺麗な夜空のように或いは巨大な蜘蛛の巣のように一つ一つ星のような符牒を用意していく。

そして一つの短い呪文により、起動するのだ。妙(たえ)なる技を、魔術というものを。

魔術師とは要するに、呪文を唱えるまでの長い長い人生であると、言って良い。

それはただ一撃のための全部である。

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 海法という、魔法使いがいる。
魔術師ではない。魔法使いである。なお、本人の名誉のために言い添えれば、なりたくてなったわけではない。

そう。なりたくてなれるものではない。それが魔法使いである。
魔法使いとは魔術師より本来はるかに高貴なものであり、こちらには、種も仕掛けもない。
本物である。こちらはただ腕を振るだけで、あるいは口を開くそれだけで、妙なる技が使える。

 この男、元避け作家である。今は作家がはずれてただの避けである。
皆は彼が作家にもどることを望んだが、彼は明治の文豪のごとき生活を、平成の世でやっている。ありていにいって、気分が乗らないと仕事しないのだった。

この人物、本物の魔法使いであることは良く知られている。
たくさん借金して踏み倒していても、また借金できる奇跡の男として有名だった。
普通、出来ることではない。訓練してその技使ったら犯罪である。天然だから許されもする。そうそれは魔法なのだった。魔法とはまったく理屈に合わぬことが起きることを言う。

今貰った借金で次の瞬間募金できるというまさに魔法としか思えぬ妙なる技を見て、是空が激怒を通り越して癲癇を起こした。そのありえない光景を見て筆者が凍ったこともある。
今思えば友人として殴り飛ばすかすぐ駆け寄るか、あるいは両方をやるべきあったとして反省している。いや違う、出来なかったのだ。
そう、彼はスタンの呪文とフリーズの呪文を同時に詠唱なしでやってのけたのだ。

まさに、魔法使いである。

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 その海法は、ここ最近不調であった。
仕事は毎度のことなので、ここは一つ脇に置いといて、ゲームで不調なのである。

それまで大活躍していたのだが、アイドレス2になってまったく冴えなくなった。
目立った活躍も、していない。先日、敵の位置を予想して光の国に伝えるという仕事をして、筆者含む皆がさあ海法の魔法を見れるぞといきり立ったが、うっかり羅幻方面での陸戦にでていて、出番を棒に振った。もっともこの戦いでは、景気良く是空が出たものの、こっちも歩兵で、メイン戦力はI=Dに箒を持たせた松井いつかという展開であった。

まあ、そういうとほほはあるにせよ、最近はどちらかと言えば本来、裏方のはずの是空のほうが目立っている。

 しかし、スター性というか、もう誰にも出来ない芸当と言う意味では海法の魔法に期待する者は多く、誰も彼もが、海法の名を呼んだ。

海法さん、またやってくださいよ、と。

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 緊急会議がもたれた。場所は夜の新宿。ラーメン屋である。その前に何があったかは、最高機密だがアイドレスとは全然関係ないことは確約する。

「筆者さん。僕は思うんですけれど」
ラーメン屋で眼鏡を曇らせた久保は、言った。彼は、海法の担当から外れて出世しまくった男である。今やエンブレの編集長の一人であり、女達から、鬼畜眼鏡、炎熱編集と呼ばれていた。得意技は人のネクタイ引っ張って「お前の原稿に価値はあるか」である。

その、彼の輝かしい経歴、その最大の傷が、海法だった。
原稿逃げられること11回、エンブレに捕らえて逃げられたこと3回、長期行方不明1回、9階の部屋から忽然と逃げられること1回。重複はあるかもしれないがまあ、だいたいそんなものである。

彼は今でも、時々ホテルで明かりの消えた天井を見ながら、あいつを捕まえてえとつぶやいてる。そしてそれを聞いた、是空を過呼吸で死にそうにさせるのだった。是空、BLも分る奴。

話を、戻す。
「筆者さん。僕は思うんですけれど」
ラーメン屋で眼鏡を曇らせた久保は、言った。
私は口からとんこつの煙を吐きながら口を開いた。
「アイドレスの小説を、海法に書かせる、ですか」
「いや、先日SCEに相談にいったら大丈夫ですかと心配されたんで、それはそれでおいといて」

筆者は何故か泣いた。畜生、コクのきいたラーメンだぜ。
是空は隣ではやくも死にかかっていた。高原が1次会で消えたのだけが残念だ。

「では?」
「最近、彼が恋したからじゃないですかね」

筆者は泣きながら笑った。畜生、このラーメンには人生の何もかもが煮詰められていやがる。是空はすみませんといってトイレに走っていった。

「あれ、違いましたか」
「いや、時々貴方の脳の若さにはびっくりする時があります」

筆者は、そう言うのが精一杯だった。

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 筆者は一人、新宿から歩いて帰る。深夜である。不景気なのか、不気味なほど人影はなかった。

昔はこのあたりにはでかい白い犬と、学生服を着た威勢のいい兄ちゃんがいたもんだが、どうしたんだろうなあと考えた。俺は正義の味方になるんだと、彼は言った。

まあ、どうしてても、いいか。魔術を使おう。またいつか、逢えるように。
分る奴には、わかるだろう。もしも彼が道をたがえていたら、その時こそはこの魔術で、思い出させるのだ。大切な事を。

そして海辛という店の前を通った時に、海法を考えた。なんであいつが最近駄目なのか、良く分らなかった。
ガチでやるのがゲームの掟、出番が少ないのは結果ではあるが、とはいえ、ガチでやるゆえに、海法の天才性は、同じくガチで海法と向き合って仕事してる久保並に分ってるはずである。この世の何もかも適当に生きる筆者であるが、手前のゲームの結果と、佐々木の幸運と久保の仕事は信じている。

 海法、お前魔法使いが魔法使わないでどうするんだ?

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 その海法は、心折れていた。
よけ藩国が多重債務国の上に債務超過で国のあらゆるもの、巨大ダムから樹にネコリスにまで光の国値札がついているという現実に、折れていたのである。

なぜ俺の心が折れる。海法は自分の家の床の上に四つ折になりながら思った。
そうか、筆者だな。

彼は大抵の悪いことの悉(ことごと)くは筆者のせいであると、きめてかかっていた。
エースの悪い病気である。空が曇るだけでこれは罠だ、気をつけろという。

そして電話しようとしてお客様のご都合と言うかお前の都合で電話なんか掛けられないよと電話器に怒られたあと、罠だ。これは筆者の罠だと言った。

仕方ないのでメッセで発言した。
「魔術師め、貴様、俺にどんな魔法をかけた?」
「言葉遣い直せ。ゲーム中だぞ」
「すみません。僕が不調なんですがなにかやりましたか」
「えー」
「えーじゃありませんよ。貴方でしょ」
「まあまて。いくらなんでもそりゃ無茶振りだ」
「貴方は玉を消したりはやしたり出来るじゃないですか」
「そりゃ手品だ」
「時間戻したり生き返ったりするじゃないですか」
「ゲームじゃねえか」
「いいからそろそろ本題に入ってください」
「すみません」

海法と筆者は同時に首を傾けたと思われる。
ともあれ、海法は不調であった。

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