小説アイドレス(外伝)1224

電網適応 アイドレス

”アイドレスをやめようと思うことはありましたよ。泣きながらもうやめようと言ったこともあります”
”でも離れると、思い出すのはいいことばかりでね”
”それで戻って来たんです。世界を平和にして、その上で笑ってやめようと思いました。”

                         42218002 あえて原文のまま、独白

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 寂水という、アイドレスプレイヤーがいる。出自をFVBという、毎度罰金で笑わかせてくれる国の出で、長らくアイドレスを休んでいたところで戻ってきた、いわば出戻りプレイヤーだった。

 戻るのは1年ぶりくらい、勇気をもって国のチャットに入ったら、みんなが自分を覚えてくれていて、びっくりしたという人物である。

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 アイドレスというゲームは、日々動いている。
たくさんの事件があり、たくさんの物語が、動いている。
動くだけではない。進歩して複雑化もしている。

 出戻り組の直面する最初の問題は。この変化の差を吸収することだった。
この点、初心者とあまり変わらない。

アイドレス、ゲームに組み込まれる関連サイトで100を楽勝で越えるゲームである。
日々情報は更新されており、常時数百人単位で作業が進行している。これが休みなくかれこれ2年続いているので情報集積は莫大なものがあり、漫画、小説のネタに困ることはない。 アイドレスがアイドレスであるところの人の魂を鎧う服、アイドレスも1000どころではない数があるのである。

出戻り組にしても初心者にしても、それらを一覧して見るだけで大変で、ついでに要約としてお話を俯瞰して見るのは、絶望的なほど困難だった。ついでにアイドレスで一番面白い、あるいは一番感動するもののは、たいていお話として書けないことばかりである。筆者が身近に見聞きしただけでも、そんな話が百も二百もある。

 もちろん、それでなんら問題はない。アイドレスプレイヤーはただの人である。神のように俯瞰して見る必要は、どこにもない。知らないことがあっても、生きていける。アイドレスで楽しく生きるコツは、(義務ですらない)全部把握を棄てるところからである。その上で、自分の知らないことを知る知り合いを数名もって、他人に聞くことである。自らの知識を誇るよりも、賢者の知り合いを持っていることを喜ぶのが、良いアイドレスである。

 前段の話とあわせれば、畏れを知り、想像力が豊かで、賢者の知り合いを持っていることを喜ぶ、素朴な古代人と言うのが、アイドレスの今のありようである。

それは、作り手その他が別段狙った結果ではない。それは単に、心がニューワールドの天地(あめつち)に洗われて、洗練されただけの話である。

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 件(くだん)の寂水も、ニューワールドで1月もいるうちに洗われて、すっかりなじんだ。何もかも間違ってはいるのだが、現実を見るときも、ニューワールドの常識でうっかり見てしまうときがあるほどである。

寂水、最近やっているゲームの話をした。当然アイドレスの話である。
寂水は帝國の民らしく遅れ気味の医療に感心あり、ついでにFVBの民として治安問題にも感心が深かった。最近は法官として出仕して恐ろしいプレッシャーに胃を痛くしながら裁定をやっている。その心に鎧うアイドレスは法官である。下級のお手伝いではあったが、アイドレスは寂水を忘れた事はなかった。

最近の心配はFVBの治安がよすぎて、警官が市民の自由をいたずらに制限しすぎてはいないかというものである。ついでに昨日よかったことはチャットで国が平和だという話を聞いたことだった。

アイドレスプレイヤーなら、まったくもってうなずける(そして愛すべき)内容でしかないのだが、アイドレスを知らぬ人間にとっては、はぁ?と言うものがある。そもそも警官が市民の自由をいたずらに制限しすぎてはいないかと心配するゲームは、他にない。

実際この時、アイドレスの説明をした相手から
「ゲームなんだし、別に不利になるんじゃ無かったら市民が死ぬくらい気にしなくてもいいじゃないですか」

と真顔で言われて、寂水は目を彷徨わせている。
ニューワールドの民ならば、髪の毛を逆立ててなんて野蛮人と、思うところであろう。
最近はぽち王女ですらもそんなことは言われぬ。

寂水は反論した。えっとね。敵だって殺すのはいけないと思うよ。

「え、ゲームの敵なのに殺して何がいけないの?」

寂水は相手からそう言われて、月まで視線が届きそうなくらい遠くを見た。
もやもやとしたものが、残った。

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 ニューワールドの命は、軽い。24時間で150万人が死ぬなんてのは、珍しくもなんともない。FVBが得意な宇宙みたいなところで帝國が兵を動かせば、こちらが何百万も殺さなければいけないときもある。

趣味のダンスをした帰り道、寂水は月を見て考える。

星見司の言うことには、天体レベルの大きなものは、世界が変わっても変化はない。
だから、自分の見ているこの月も、ニューワールドも同じように見えているはずだ。

見えている月は同じなのに、こっちには、なんであんなこと言う人がいるんだろう。

寂水は自分がすっかりニューワールドに馴染んでるなあと頭をかくと、苦笑して帰ることにした。

法官のクロスチェックをがんばらないといけないのだった。

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