小説 アイドレス1215

電網適応アイドレス

”彼は第7世界人ではないわ。分るでしょう”
”彼はこちらの人よ。その目に大海が見えるもの”
                レイディの見解 31218002

正義を探す旅(1)

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 アイドレスというゲームは、正義を悩むゲームである。
藩王ならばなおさらのこと、そればかりを考えていても、おかしくはない。

藩王のアイドレスに袖を通すことは、正義を探す長い旅に出ることである。民のように、簡単にこれだと決めてしまうことはとても出来ない。

それは、藩王は立場上どうしても情報が集まりやすいからである。民が唱える狭い範囲の正義など、半年も王をやっていると独りよがりと偽物にしか見えなくなる。

同じく、考えなしに動くことも発言することも容易にはかなわぬ。発言の影響力が巨大するのだ。藩王がいない国は早晩滅亡するし、愚王がたてば国民が苦しむ。そういうものである。

そのあたりを王が分ってない藩国にいると、アイドレスは破滅的な展開と結果を連発し始める。

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 かつてはそれほどでもなかった。藩王などというのはさして意味はなく、単純にプレイヤーをムードメイクするだけでよくはあった。

今は、違う。

アイドレスが2になり、ワールドシミュレーターを中心に大規模に改正され、内政、外交の重要性とともに王の影響力は激烈にあがってしまっている。

同じく改正があった輸送関連ルールの影響もあり、人員作業力の重視から合併が多発し、最盛期39あったあった藩国は、今は32になっている。早晩、土場とジェントルラットが合併して31国になるだろう。

その影響力から考えて、だからアイドレスは、正義とは何かを思う、31人の王の物語と、言えなくもない。

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 亜細亜がエチオピアに挨拶をしていた頃も、藩王たちは、悩んでいる。

後ほねっこの藩王、火足水極もまた、その一人であった。
彼はここ最近の事件で死んだ人々の慰霊のための弔辞の文章の内容で、煮詰まっている。

そろそろ一ヶ月である。

 煮詰まっているのは、藩王という立場にあり、防げなかった災害、減災できなかった災害を受けた藩国民を慰撫する言葉を言わなければならないのに、火足がどうしても正義に嘘を感じてしまい、言葉につまったからである。

 テロを許さない!と書いて、ナイフで羊の皮を削る。北国人の公式文書は、今も羊の皮である。東国人なら竹簡である。

 許さないのはいい。だが、対処方法はあるのだろうか。あったとして、我が国で出来たのだろうか。

この理不尽な暴力に と書いて、またナイフで羊の皮を削る。しまいには穴があきそうであった。

わんわん帝國は過去も今も武力行使に積極的である。
これまで数多くの出兵、手段としての戦争に帝國藩国として加担して置いて、この台詞は言いにくい。いわなきゃいけないとしても、苦しい。

 火足は苦悩する。王女殿下の元気のいい言葉は、第7世界人にはとてもいえない。少なくとも、自分では無理だ。

うちの所の若い衆や国民やられてんだから、舐められないようにと思うのだが、勝てるのだろうかと思うと心が凍る。だが悲しみに耐えましょうとしか言えないのでは、預かった亜細亜のことを思えば、そしてなによりも藩国を支えてきた仲間のことを思えば、言えるわけもなく。

火足は筆を置く、またも夜が、あけてしまったから。
これから藩王業務をはじめねばいけないのだった。

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 悩みながら、戦うはめになった王もいる。
詩歌は、竜との和解のための戦いという政治的なプレッシャーに負けそうになりながら、ニューワールドに残った数少ない竜である水竜部隊を率いて、船団護衛を行っている。

 詩歌は思う。

政治的な和解。そんな理由で水竜を戦闘に利用することに意味はあるのかと。
竜族全体の問題を、水竜たちが背負ってしまっている。

 既に前哨戦で水竜の一隻は戦没しており、それが彼の心を重くする。
水竜と、もの言わぬI=Dと何が違うといわれれば困るのだが、なぜ水竜が戦うのか、それが……いや。それも分っているのだ。竜は人を襲ったが、それはクーリンガンの恐怖にかられてクローンを無尽蔵におこなったせいだ。だれかが殺さねばならなかった。当初交易路線だったあさぎ王も侵略目的で他世界に侵攻せざるをえない状況に追い込まれていた。
正義と言う観点では、まだしも竜に襲われたほうが、人の名分は立つ。だから、致し方ない。同じくらい、和解の努力も致し方ない。復讐のために戦ってさらに人的被害が出るなど愚かが過ぎる。だから、和平の努力のためにいくばくか死んでも、これもまた致し方ない。

致し方ない。致し方ない。致し方ない。

腹を立て、詩歌は顔をあげて自らが護る船団を見た。
共和国はいいなあと思う。何も悩みがなさそうで。ついでに高い工業力がある。雪も少ないという、もっぱらの話だ。

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