主要記事一覧+小説:アイドレス1209

電網適応アイドレス

”宰相府には父しかいないよ。”
”ついでにどれもおっかない”
                設定国民の忠告 90218002

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 宰相は、日の当たる温室の中で夢を見ていた。ライオンの夢だった。

「おじーちゃん?」

宰相はライオンを殴り倒して目を覚ました。甘き声でその名を呼ばれた気がしたのだった。
宰相はいつも、甘き声で目をさまし、一人ぼっちで寝る。

大きな目を輝かせておじーちゃんと聞いたのは瀬戸口希望。出戻り秘書官、瀬戸口まつりの子、すなわち宰相の孫である。それが、心配そうに見ていた。
宰相は心底嬉しそうに口を開いた。
「おお、すまんすまん。遊びにきてたのかい?」

希望は背伸びして安楽椅子の宰相を見た。おずおずと口を開いた。
「あのね、ロボットはわるいものなの?」

宰相は表面上は微笑んだ。温室の中の花々を見る。
「悪いも良いもないのだよ。この世には。しいて言えば、誰も彼もがよかれと思い、うっかり他がよかれと思っていることを忘れるだけなんじゃな」

「……ふぇ?」
宰相は笑った。宰相は、子供相手でも、言葉を優しくはしない。
「まあ、悪いものなどないよ。良いかね。希望。わしの孫よ。悪を決め付けるのではなく。悪をも統治するのだ」

「わるいものをとーち?」
「わるいものも、そなたの民だ。民は愛せ。そしてそれは、片思いでも、かまわぬよ」

希望は意味は良く分らなかったがうなずいた。
この娘は、わからないことも受け入れる度量がある。

宰相は次の皇帝はこれかもしれんのうと思いながら、皺深い手を額において、希望を喜ばせた。

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 そして、宰相は紫紺の法衣を着てゆっくりと廊下を歩いている。
真っ白な制服の秘書官達が敬礼をはじめ、そして宰相の一日がはじまる。

その仕事は、廊下を歩くところから始まる。
秘書官が報告を開始。宰相はうなずきながら、歩いている。

「無人ロボット部隊、拠点防衛にならいけそうです」
「うむ」
「玄霧藩で大量の粛清があったようです」
「ほう。長老派が動いたか」
「ゴロネコ藩でも森撤廃が宣言されました」
「予想の範囲内じゃな。遺跡を捜索させろ」
「是空大統領、大アクションの末、国の危機を救った模様」
「あやつはなにやっとるんじゃ」

「無人ロボットの技術のスピンアウトであちこちの場所が無人化しはじめました。失業者が増大しています……いかがなさいました?」
「いや、それじゃな。うまく解決しようか」

「どのように?」
「産業の転換を行う。人でしか出来ない作業を探し、産業化する。補助金を積み上げろ、アイデアを買え。同時にロボットの作業力でこれまで人件費的に無理だった部分を産業化しろ」
「例えば、どんなことでしょう」
「ロボットで、砂漠を緑地化するあたりがええのう。今後、緑地はビジネスになる。幸い砂漠緑地化クローバーの開発は出来ている。人はより、教育にむけて新しい世界を作るとしよう。社会にでて苦労した人間を再教育して小学校の先生にでもするか。一クラス4人。これがスローガンだ。ロボに税金をかけ。金を取れ」
「産業空洞化が懸念されます。事業税を嫌って他国へ企業が流れます」
「かまわんよ」

宰相は笑った。孫には見せない、老獪な笑顔。
答えを聞くことなく、秘書官は頭を下げて去った。

 秘書官長、風野緋璃が立っていた。宰相府の、実質の摂政である。
元は共和国、FEGの民である。歴史的な背景からか、そんな背景を持つ人間でも一代でここまで成り上がれた。

「なぜ、かまわないのですか」
秘書官長はペンギンと恋仲と言う娘である。宰相はオスを選ぶ趣味が悪いが思ったが、苦笑してこれを許した。
宰相は口を開く。
「交通の要衝として、ハブとしての価値が、宰相府にある。大量の聯合を結んだからのう。それ故、関税その他を比較すると企業は主体を宰相府に持ってきたほうがいい」

しばらく考える秘書官長。
「それ、私が凄い頑張ってる輸送計画ですか」
「そう、そなたが凄い頑張ってる輸送計画」

しばらく考える秘書官長。急に怒り出した。
「大変なんですよ!」
「おかげで今日も宰相府は壮健だ。また戦争には勝てるかもしれん」

褒められて照れる秘書官長。
「勝って当然です」
「うん。期待している」

宰相は軽く言うと、執務室に行こうとした。
秘書官長は頭を下げる。ふと気づいた。宰相が、立ち止まっている。
「そう、わし最近気づいたんだけど」
「はあ、なんでしょう」

「娘より孫ラブだよね。孫最強」
風野は何故か恥ずかしがった。顔を赤くして宰相を叩く真似をした。実は養子でも取ろうかと思っていたのだった。
宰相は微笑むと、目だけは本気だと主張しながら、去っていく。

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 戦争の素人は兵器で戦争を語る。プロは、ロジスティクスで戦争を語る。

大規模な戦争なほど、大量の物資の輸送が必然的に発生する。防衛戦でなく、他国へ侵攻するなら、なおさらである。

だからたしかに、プロは、輸送とその拡大概念であるロジスティクスで戦争を語る必要があった。どんな強大な兵器も、戦場に輸送されなければ活躍できない。

そして帝國のロジスティクスは、一人の女と数名のスタッフがきりもりしていた。

なんでもやっちゃう宰相府の秘書官部隊である。その標語には出来ませんはいいません、だからマイルを寄越しなさい、とある。

そう言う意味で帝國の戦争のプロは秘書官長以下、数名しかいなかった。そのプロですら、数多くの兼業の一つである。
もちろんそれで、なんら問題はない。戦争のプロなどいらんわいというのが、宰相の見解であった。アイドレスは戦争を扱うが、戦争のゲームではない。

 時に、年度切り替わりのあれやそれや、すなわち聯合だの転入だのが終わったあたり、次は生産と輸送計画の策定であった。

帝國全域が戦争のための一つの機械になるために莫大な量の物量が必要となろうとしている。

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