電網適応アイドレスSystem4

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zoom RSS 皇帝の決断

<<   作成日時 : 2008/06/10 16:34   >>

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 アイドレスにはたくさんのNPCが存在するが、その多くは芝村が運用している。
その数、数百である。これらが同時3面打ちで入り乱れることもある。このあたり、人間の処理限界を越えてる。 もちろん芝村はただの人間である。酒についてはその限りではないが。

タネを明かせばなんのことはない、アイドレス1から2に移行するまでの1年の間に地道に作業が行われ、絢爛系の技術からスピンアウトして、さらに発展したカレル4やワールドシミュレートが導入されていたのである。

 フロントエンド、すなわち日本語表現部分を芝村が、人格や思考部分の処理部分をコンピューターが受け持ち、千のプレイヤーが動き、かくてアイドレスが成立している。人機一体は最高の戦果をあげうるという芝村の建造哲学は、ここに一つの完成を見ているというわけであった。

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 長い長いゲーム用群体知能カレルシリーズの歴史の中では、時折人間をも凌駕するAIが現れることがある。人とのふれあいの中、いまだ技術的には発想の跳躍というものが出来ていないにも関わらず、近いことを体得した者もいる。

 21世紀の最初の10年において最強のAIを、皇帝と言う。
原因不明ながら、ありとあらゆる戦いで連戦連勝する、最強にして驚異の存在である。

たくさんの”範囲”と言う曖昧なものを重ね合わせてアイドレス上の擬似人格は作り上げられる。皇帝もその一つだが、この組み合わせは絶妙のバランスで成立しているらしく、例えば極近いぽち王女などは、到底最強とはいえない性格をしている。
偶然が生み出した、最強の存在。勝つべきして勝つとしか言えない存在。短時間に周囲のAIと人間に、こいつには勝てないと思わせる恐るべき存在。皇帝とは、よく言ったものである。

 戦えば必ず勝ち、戦わなければ最大利益を上げ続ける、運を支配するAI。
それが、おそらくはアイドレスプレイヤー最強の敵の正体である。

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 その最強と、やりとりせざるをえなかった不幸なプレイヤー達がいる。
天領共和国と帝國の休戦なってtera共和国単独で受けた場合、もう何回計算しても絶対無理と思ったakiharu国藩王涼原秋春と、同じ計算結果を得たものの人員保護を優先させたFEGの藩王是空とおる、いささか虫が良すぎる案で出す前にエミリオに握りつぶされたソーニャである。

前者の二人は、使者をもって皇帝と話をしている。

 どうにも分の悪い交渉である。共和国の窮状など折込済みであろう。
akiharu国密使の岩崎は、それを重々把握しながらも、皇帝に向かって何か言おうとして失敗し、結局情に頼らざるをえなかった。土下座して友人を助けたいのですと言った。

 FEGの藩王是空とおるは夫人同伴で現れ、休戦を応援すると言った。
これはいささか予想外だったらしく、皇帝は興味深そうに真意を尋ねている。
是空とおるは、難民を守る上では休戦しかないといい、ついでに共和国内の7000万の難民をどうにかしたいので、ついでにteraのにゃんにゃん共和国と天領共和国と休戦出来ないかといい始めた。

皇帝は笑ってものはいいようだなと笑った後、その可能性は0だと答えている。

「残念ながら」
皇帝は言う。
「残念ながら、天領の共和国は完全に殲滅したいのだ。teraを。帝國はteraから撤退する時間を得る名目で休戦を持ちかけている」
是空とおるは考えた後、では僕は帝國の休戦を邪魔しなければならなくなりましたと言った。

具体的にはという問いに是空はただ頭をさげ、皇帝を笑わせた。

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 皇帝には皇帝の計算がある。3000万の難民で食糧市場は高騰する。
帝國の各藩で食糧不足に恐れて無計画な食料増産計画が行われて帝国経済は破綻しかけていたが、これを、3000万の民が、吸収してくれるかもしれない、と計算したのである。
短期的には食料を買い与える皇帝の損だが、長期的には3000万の忠実で技能をもったものも多い臣民が、各地に満遍なく移住すれば政治的発言力は無限に向上するし、藩国独自で異を唱えることすら難しくなる。国内政治体制を見直すチャンスであった。

逆に言えば、これ以上の難民が来れば、さすがの食料あまりも食糧不足に転じ、食料不足から政治不安が生まれ、政治的に破綻する。だから、3000万以外は切り捨てると言う計算である。

切り捨てるのであれば、見殺しにするよりも、共和国にくれてやって外交的貸しを作ってやったほうが得である。そういう計算もある。だがその場合、皇帝は宇宙を守る、帝國軍元帥悪童屋に厳しい技術的制約を掛けかねないことを危惧していた。

空から降り注ぐレーザーの大部分を受け流すことは、いかに優秀でも無理であろう。
皇帝は聡明である。悪童屋以下の帝國軍が精勤すること、疑いはなかったが、その能力に過度の期待はしていない。

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運命の日。休戦交渉当日。

 皇帝はその日、休戦交渉に赴く前に王女が収容された病院に寄った。
この玉座に座ること一日五分という神出鬼没の人物は、謁見と会談の開き時間を利用して、目をかける王女の見舞いにきている。

 その日、王女はとてもしゃべることが出来る容態ではなかったが、王女は手を伸ばして皇帝の袖を握って涙を流した。

皇帝という何をやっても絶対に勝てる人物が、勝てるかどうかわからない戦いをはじめる事になった理由を一つあげるとすれば、ただそれだけである。

皇帝は安心しておやすみなさい。と優しく言うと、緋色に裏打ちされたマントを翻し、勝てるから勝つのではなく、勝つために勝つ方向に動き出した。

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皇帝は休戦交渉の最中、顔をあげて言った。
「私の娘は、由緒正しく誇り高い帝國の王女として頭が悪く、それゆえ民の区別がつかぬ。どこの民であろうとも、王女いくところが帝國の領土、その空を守るのは帝國軍だ。残念だ。戦争しよう」

皇帝は王女の心が、王女がただの一度も歩いたことはないteraの共和国の大地を駆けていると信じた。元気に。

皇帝は微笑むと、席を立って、休戦交渉に赴いた使節に、teraではシナリオに無いことばかりが起きると言った。

皇帝のこの言葉が放映されると、帝國の民は士気を沸騰させた。ヒロイズムこそは帝國の支配の原泉である。純朴で無力な民が夢を見る、元首がこうであればよいなという淡い希望、それが実現された時の力が、帝國の力である。民は夢を見ていたのだ。3000万を助けるよりも、1億を助ける我らの帝國を。

帝國の旗が軒先のあちこちにかかげられ、もって民の意思表示とした。空から見えればその数に驚くであろう。帝國の全土は国旗によって皇帝の帰還を迎えた。

休戦交渉は決裂した。

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