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zoom RSS 読み物:ISSの悲哀

<<   作成日時 : 2008/05/07 00:42   >>

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ISSの悲哀 :作ノーマ・リー@るしにゃん王国

「ごはんですよー」

 ISSの事務所に声が響く。
 さほど大きくない声でも、隅から隅まで聞こえるのが狭い事務所のいいところだ。
 声を聞いた一同が移動するのは隣の食堂兼会議室。集まってきたのは書類作業に事務の面々と、派遣先から打ち合わせの為に顔を出していたACEが数人。
 どこかの小学校から払い下げられたという噂の給食ワゴンの上にに乗っかっているのは、やはり払い下げの寸胴鍋とおひつだ。蓋を開ければ漂うのは、炊きたてご飯とスパイシーなカレーの匂い。
 手際よく配膳され、全員分が揃い、さあ食べようとなったところで――声が上がった。

「……ねェ」
 不審というよりは、不安そうなそれに、思わず卓に付いた一同の視線が集まった。
 その先に居るのは名医として世に知られたISSの一員、サーラ先生――どこか潤んだ眼差しが眩しいくらいの美人顔。それが盛られたカレーを前に、眉を顰めている。
「あ、もしかしてカレー焦げてました?」
「ううん? ちゃんと全部美味しいわよゥ?」
 真っ先に尋ねた『本日のカレー係』に、ふんわり笑顔で応じるサーラ先生。ただね、と言い置いて口を開く。
「ただ……ちょっとだけ、ちょっとだけ思ったんだけどォ。どうしてここのカレーって、いつもジャガイモしか入ってないのォ?」

/*/

ほんじつのISS 〜400マイルは破格ですの巻

/*/

「えっ、今日はニンジンが入って」
「いやそういう事じゃなくて」
「というか、だな」
 カレー係に対するツッコミを途中で遮ったのは、やはりISSの一員である谷口だった。
 ゴホンと咳をして、やおら真剣な表情をする。
「何故、毎度カレーが?」
「それは……」
「節約の為です」
 言葉を濁したカレー係に代わって応じたのは、ISSの長、沢邑勝海であった。
 ズパッと擬音が聞こえそうな一刀両断具合と共に、指で示すのは背後の壁。
 そこに貼られたのは、どこかで聞いたよーな標語が書かれた紙だ――「倹約」「節約」「無駄をなくそう」「時代はエコ」「チリも積もれば山となる」等々、等々……
 墨痕鮮やかにしたためられたそれらに、空いた壁のほとんどが埋め尽くされている。例外は――壁の予定表くらいだろうか。

「……そんなにココって、お金ないのォ?」
「ない、訳じゃない筈なんですけどね。かなりの募金がありましたし」
「自前の装備以外にも色々と持ち込まれてるからなー。あと物納系がいろいろある筈で」
「甘い」
 再びズパっと一刀両断する沢邑。
「確かに現在のISSには潤沢な資金或いはマイルが存在します。装備も、I=Dを始め様々に持ち込んでいただいています。しかし」
「しかし?」
「問題は、それらの運用です」
「運用?」
「例えば、――近い事例で『なりそこない』からの救助にどれくらいかかるかご存じですか?」

 ……もっとも知られている手順は、こうである。
 1.なりそこないを倒す
 2.「復活してなりそこないに再生する」という特殊能力を無効化する
 3.精霊手で「癒す」

 これをACEの助けをほぼ借りないで行う事は――不可能ではないが、かなり難易度が必要となることは言うまでもない。
(精霊手の入手と使用に関するコストを除く)
 まず最初の段階で、普通の人間の戦闘力では勝てない為、I=Dを使用する事になる。これで、かなりのリソースを食う事になるのが確定となる。
 ―――例えば、共和国のごく一般的なI=Dであるアメショーを例にとってみよう。
 公表されている情報によればアメショーは「戦闘時に1機につき燃料2万t、資源1万tを必要とする」とある。
 とはいえ、実際に動かすにはそれに加えて「パイロットの他、コパイロット2名を必要とする」以上、実際の戦闘ではそれらの特殊もまた強制的に使用されることになる。結果として、実働にはかなりの額が必要となってくる訳だ。
 だが、あくまで「冒険組合」であるISSは、必要となるリソース類のほとんどを保有してはいない。必然的にそれらの消費は、持っているマイルの変換によって賄われる事になる訳である。
 そして、にゃんにゃん共和国内における現在の市場の状況は以下の通りだ。

!:にゃんにゃん共和国市況←資金30:1 生物資源30:1 食料 25:1,←資源 45:1,←燃料 30:1

(*4月の発表数字による)
(*マイル:手に入るリソース で表記)
(*原文ママ)

 ……前述した例で言うならば「アメショー1機を出す」というだけで、105マイルが軽く吹っ飛ぶ計算になる、という訳だ。実際はコパイロットになる事が可能なPLの頭数がいないのでISSでのI=Dの運用は難しいと言われているのだが、――まあそこはそれ。


「これ以外にも、一部の特殊を使えば気前よくこれらのリソースは出ます。全部マイルで払えば素敵なお値段になる訳です。よって無駄マイルは出せないのです!」
「え? でも実際の戦闘にはACEが表に出てるから、職業特殊系のブースト消費って、ISSには関係ない、って話じゃなかったんですか?」
「そうなのォ?」
「はい。前にそういう講義あったですよ。だから特殊はゲームでアホほど使えと……」
「甘い、それこそ甘い!」
 のんびり首を傾げる面々に、くわっと目を見開いて叫ぶ沢邑。
「確かにACE単体での消費はゼロかもしれませんが、出撃したACEが乗り物に乗れば話は別です!」
「あ」
「というか、我々のよーな立場の人間が、現地まで行くのに乗り物を使わない場合がある訳ありません! いやむしろそこが落とし穴なんです!」
 叫んだ直後、ふっと笑顔になって一同を見る。目がマジだ。
「―――輸送機がどれだけのパイロットと、コパイロットを使うかご存じですか」

 パイロットはもちろんACEで足りるが、コパイは間違いなく参加メンバーの手を借りなければならない。まずこれだけで消費リソースが更に増える。
 ついでに言えば、大輸送の出来るものになればなるほど、これらは資源を消費する傾向にある。長く続いた戦争の影響が枯渇を呼んだのか、今や資源は1万tでも45マイルも資金を必要とする。仮に、大動員でタマハガネ級が動けば、資源だけで5万t――225マイル。燃料5万tも合わせれば375マイルだ。これだけがまず準備段階で飛ぶ。それに加えて、それを動かす以上はまず間違いなくI=Dが動くので―――…
 卓に付く一同が、プルプル頭を振った。考えたくない。マジ考えたくない。


 ……かつての危機に際して、宰相はのたもうた。
 ISSによる人命救助には一人頭につき400マイル必要となる、と。
 あれは別に、ボッタクリでもなんでもない数字だったのだ。むしろ、これらの輸送コストを考えたなら安いくらいだったといえよう。
 万能と言われたマイルが屈する唯一の、しかし覆しがたい壁。
 しかもそれが、母体であるところの宰相府ではなく、下部組織のひとつであるISSにしわ寄せが行く事自体が世の無常を表しているともいえた。
 いつの時代も、正義の味方とゆー人々は「貧乏」「暇なし」「危険アリ」なのだ。


「という訳で」
 ……長い演説の後だからか、どこか恥ずかしそうに咳払いし、沢邑が呟く。
「長くなりましたが、我々は日々節約しなければなりません。よって、日持ちがし、かつ様々な野菜を入れる事で味の変化が楽しめるカレーが最適と考える訳です」
「理屈は判ったけどォ」
 やや呆れながらサーラ先生が、まだほんのり湯気を立てているカレーをつついて溜息。
「それ聞いてるとォ。医者として、別の意味でもちょっと心配なのねェ? これだとォ、栄養の方が偏らないかしら〜って」
「大丈夫です! 今は細切れでルーに溶けてるだけで野菜は豊富に入れてますし、お肉が安売りの時にはちゃんと入りますから!」
 鳥肉とか挽肉とか! と拳を握り締める。どっちも庶民の味方なお肉ではあるが。
「いやそういう問題では」
「形態も微妙に変えてますしね! 明日はカレーシチューに……」
「一緒だからそれ!」
「じゃあ、小麦粉の特売に合わせてカレーうどん作りますから…!」

 なんか違う。なんか違うが。
 これでいいのかISS。

(つづかないかもしれない)

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