リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(18)

 日本勢を見て、マーコ姫は笑ったが、無論のこと、エミリオは笑わなかった。
 むしろ怒った。
 マーコ姫直々の要請に対し、日本国は侮辱の意味で、このような愚連隊を寄越したか、と、一瞬、そう考えたのだ。

「若君、油断なされるな」
 バトゥの目に見えたのは、信じがたい手練れ達だった。黒スーツとタキシードの男は、身のこなしが尋常ではない。残りの面子からも妙な気配を感じていた。
 静かな言葉にエミリオはうなずいた。

 絡み合う視線。そして黒スーツの男が口を開く。
「あーハジメマシテ。私タチ、日本カラキマシタ」
 棒読みであった。
 日向玄乃丈、マジャル語会話集で覚えた日常会話例文である。

「ようこそ、我が国へ。旅路はいかがでしたか?」
 エミリオが一応、儀礼的に、返事をする。
 無論、日向には全く聞き取れず、実に日本的な困った笑顔を浮かべる。

「景色が綺麗だった。あ、英語だと少し助かる」
 答えたのは光太郎だった。おおっと皆が光太郎を見直す。小夜が少しだけ寂しい顔をした。最近の光太郎は、文武両道。まるで何か差し迫ったことがあるように鍛錬している。

「わかりました」
 エミリオは英語に切り替えて話し始める。自己紹介を終えて事件の核心に迫る。
「事件は、満月を中心に起きています。皆様には事件があったら出動していただきます。それまでは待機をお願いします」
 無論、エミリオは出動を要請するつもりはない。
 光太郎が通訳するのに、少し間が空いた。
「こちらで捜査をするのは構わないのか?」
「国民の内情が不安定になっています。事を荒立てないようにお願いします」

「だそうだけど、所長、どうする?」
「姫様とは、ずいぶん扱いが違うな。ま、よくあることだが」
「気に入らんな」
 金美姫がストレートにまとめる。
「ま、何もしないでいるわけにはいくまい」
 日向は光太郎に通訳を頼む。
「わかった配慮しよう。観光客と思ってくれればいい」
「ご理解いただけて助かります」
 会見は、それで終わりだった。

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「どう見る?」
「あの伯爵という方……死にます」
 小夜が不吉に囁いた。
「なんだそりゃ?」
 光太郎が小夜を向く。
「神が憑いています。あの子には、重すぎます。多分、正式な訓練も受けていない」
 小夜には、エミリオの肩に取り憑く闇が見えた。異国の古い神。
「剥がせねぇのか、それ?」
「血の契約が絡んでいます。無理に剥がせばかえって傷つくでしょう」
「ほうっておきなさい」
 ふみこが言った。
「ほっとけって……死ぬんだろ」
「あの子が選んだ結果よ。男が選んだことを無かったことにはできないわ」
「力を使わなけりゃいんじゃないか?」
 日向が口を挟む。
「力を使うのが危険なことは確かです」
「なら、俺達でさっさと解決することだな」
「賛成」
 光太郎がうなずいた。

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「不真面目な連中だったが、ただの道化ではないようだな」
「おっしゃる通りですな」
「では、よそ者に邪魔される前に、片づけようとしよう。おまえと僕とで、だ」
「御意」

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