リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(17)

 アルカランドへの直通便はない。
 そもそも飛行場がない。緊急に備えて降りられる着陸場ならあるにはあるが、滑走路があるだけでは飛行場にはならないのだ。
 そんなわけで、飛行機を降りてバスを乗り継いで国境を越えて数時間。
 昼でも暗い森を抜けると、ようやく首都に出る。

 歓迎はひっそりとしたものだった。数名の儀仗兵が迎えに現れて王宮へ案内する。
 外国人の介入を認めたくない一部貴族の影響だったが、日本勢は、こんなものだろうと思っている。
 もともと除霊の仕事は、あまりおおっぴらに感謝されるものでもないし、退屈な式典がないと知って、ほっとした者も多かった。

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「日本からはるばる、ようこそいらっしゃいました。どうか楽にしてください」
 久々に喋る日本語は、どうしても堅苦しくなる。
 式典が苦手なのはマーコ姫も一緒である。パレードやらなにやらがないのは歓迎だった。
 おてんば姫とはいえ、姫としての教育は受けている。笑顔で上品にもてなすのはお手のもの……だったが、そのマーコ姫は、うつむいていた。

 何しろ、メンツがばらばらすぎるのだ。
 夜会服に身を包んだ豪奢な美女と、東洋系の白スーツの女性、は、いいとして。
 安物のスーツを着た、子連れの男。室内なのにサングラスをつけている。
 なぜか手をつないでいる、ういういしいカップルは、高校生くらい。
 シリアスな顔で、腕を組んでいる金髪赤スカーフのニンジャ。
 最後のは、そもそも呼んだ面子に入っていない。

 ありていにいうと、笑いをこらえていたのだ。

「パパ? ねぇパパ?」
「……ん、なんだ?」
 日向玄乃丈。放心していた。
 うつむいたマーコ姫に、憂いに沈む深窓の令嬢を見て、それが直球ど真ん中ストライクなのだった。
「ねぇ、パパ、可憐? 可憐?」
「あぁそうだな」
 日向、完全に上の空である。ふみこが面白そうな目で見ているのも気付いていない。

 ──大丈夫かしら。
 マーコ姫、そんな日向を見て、ますます不安になる。が、ともかく話を切り出す。
「お呼びして失礼とは思いますが、この連続失踪事件が、本当に霊的な問題かは、まだ分かっていません」
「それなら問題ない」
 日向がうなずいた。
「別に除霊だけやっているわけじゃない。むしろ、そういう方が楽だ」
「楽、ですか?」
「組織犯罪なら原因は単純だ。霊的事件の因縁よりも、よほど捜査が楽だろう」
「そういうものですか」
 ともあれ、話が通じたことにマーコ姫は安堵した。頑固な霊能者だったらどうしようかと色々考えていたのだ。
 その笑顔に、日向の動悸が、一拍飛ぶ。
 何があっても絶対に解決してやる、と、決意した。
「それでは、後ほど、我が国の捜査担当とお引き合わせします」
「よろしく頼む」
 日向は自分しかしゃべっていないことに気付いて、周りを見る。

 光太郎と小夜は……もじもじしていた。
 ふみことロジャーは……そんな光太郎を見つめていた。
 金美姫は……マーコ姫をじっと見ていた。何か倫理的にまずい目線だ。

 日向は頭を振って、マーコ姫に振り返る。口を開きかけた時。
「我々が来た以上、事件は解決したも同然だ。不安は尽きないと思うが、どうかゆっくり待っていてくれ」
 金美姫が立ち上がり、握手を求める。
 マーコ姫は、手袋の手をとって、お願いしますと言った。

 金美姫は、上機嫌で日向を見る。姫は渡さん、という目だった。
「パパ、らいばる?」
 どんな三角関係だと思いつつ、日向は溜息をついた。

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