リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(16)

 マーコ姫はFAXを前に途方に暮れていた。
 国のFAXは最近調子が悪く、日本神霊庁から届いたFAXの後半が潰れていたのである。かろうじて霊能者を派遣するところまでは読めたが、顔写真等は全く見えなかった。虫眼鏡でにらめっこしたが、それでわかるものでもない。
 日本国からの霊能者。
 やはり着物に烏帽子なのだろうか。それとも僧服か。
 マーコ姫は、頭をひねりつつ、空港へ向かった。

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 一方、こちらは機内である。

 H&K探偵事務所も貧乏でFAXの調子が悪いことは変わらなかったが、こちらは、運良く、鮮明なFAXが届いていた。
 日向は機内で資料を読み返す。マーコ姫の写真がある。
「パパ、可憐?」
 ためいきをつく日向だった。
 事務所に届いたFAXを見て、うっかり「可憐だ」とつぶやいたのを聞かれて以来、毎日、このざまである。
 FAXの写真は荒かったが、日向にとっては異国の姫が憂いに沈む様子がよく見えるのだった。ちなみに写真を撮ったのは、事件前なので、別にそんなことはない。
「子供はもう寝ろ」
 そう言って機内をチェックする。

 ふみことミュンヒハウゼンは、無論、ファーストクラスである。それが日向のささやかな安らぎだった。

 結城小夜と玖珂光太郎は隣同士の席に座っている。席の間の肘掛けで、二人の指が重なって、上からタオルがしかれている。護送中の犯人みたいな情景だ。

 窓側に座った小夜は外の景色を、光太郎は椅子の背をじっと見つめている。
 どちらが言うともなく、こうなった。

 「ねじれた城」事件の顛末で結城小夜は、一度死んで蘇った。それ以来、半妖となった彼女は、魔力がなければ生きてゆけない体となったのだ。魔力の供給源=光太郎である。
 幸い、光太郎から遠隔で魔力を送る宝重が神霊庁より渡されたので、常にそばにいる必要はないのだが……宝重は国宝で国外持ち出し禁止であった。同じ理由で、ヤタも留守番である。

 そんなわけで二人は手をつないでいる。あまりに生々しかったので上からタオルがかけられた。小夜は一心に外の風景を見ている。
 自力で空を飛べる巫女ではあったが、飛行機に乗るのは初めてであった。離陸直後は子供のようにはしゃいで外を見ていたが……さすがに限度がある。首も痛い。
 ふと光太郎のほうに目をやる。
 光太郎とても状況は同じである。前の椅子の背を見てばっかりでは間が保たない。
 ふと小夜のほうに目をやる。
 二人の目が合う。
 とっさにそらす。事故を装う。
 この繰り返しであった。

 一緒に予約したわけではないロジャーは、遥か後方の離れた席である。5分おきに立ち上がっては、そんな二人の様子をうかがい、涙に暮れている。
 ちなみに青一色のニンジャ装束である。隣のフランス人が、声をかけるべきかどうか迷っていた。

 よし。機内は平和だ。とりあえず日向はそれだけ確認して、百均で買ったアイマスクを目につけて眠った。

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