リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(23)


「お仲間を放っておくのは感心しない」
 エミリオは口を切った。
 光太郎が首をひねりながら通訳した。
「所長、知ってるか?」
「いや、知らん」
 光太郎がそう伝えると、エミリオのまなじりが上がる。
「どうでもいい程度の仲間ということか」
「やっほー。レイカちゃんだよ。あ、光太郎君って君?」
 小夜、横目で光太郎を睨む。
「ってかアンタ、誰だ?」
「よく聞いてくれました。私は、霧島レイカ。未来からやってきたターイムガール!」

 沈黙が、流れた。

「所長、えーと、俺、ああいうの苦手だ」
「得意なやつがいると思うか?」
「あの、本当にお知り合いではないのですか?」
「知らない知らない」
「光太郎、おまえ、わりと顔広いよな。友達多いし」
「いやいや所長こそ社会人だし、つきあいとか多いじゃん?」
「いやいやいや」
「いやいやいや」
 即断即決という点では、泣いている子供のために燃え落ちるビルに飛び込むくらいは、何も考えずにやってのける二人だったが、誰にでも苦手なことはあるのだった。
 世にも醜い争いの中で、最初に落ち着きを取り戻したのは小夜だった。
「えーと、あの、お知り合いでないにしろ、名前をご存じなんですから、その……」
「あぁ、そか。そだよな」
 光太郎、咳払いする。
「えーと、俺が光太郎だけど、何の用?」
「えーと」
 レイカちゃんはピンクの手帳を読み上げる。
「結城小夜さんって彼女がいるわね!」
 びしっとつきつける指。
 光太郎、硬直する。小夜、倒れる。
「ママ、落ち着いて」
「ママ!? もうそこまで!?」
「違う! 絶対違う! てか彼女じゃねぇ!」
 力強く言い切った光太郎、背筋に寒気を感じる。
 小夜だった。薙乃のそばで、ジト目で光太郎を見つめている。
「てゆーか、アンタ、何しにきたんだ」
「二人の仲を壊しに来ましたー」
「なんで?」
「え?」
「いやだから、なんで、そんなことしにきたんだ?」
「えーと、そうしないと、歴史が変わって、世界が滅ぶ……から?」
 レイカちゃん、そういえば理由を聞いてないことに気づき、しどろもどろになる。

 ここまでが、光太郎達が見聞きしたものである。

 一方、日本語のわからないエミリオには違うものが見えていた。

 レイカちゃん、日本人に挨拶する。
 男達、顔を見合わせて、ひそひそと相談する。
 レイカちゃん、何か言う。
 若い男、あわてる。若い女性、悲しみに沈む。
 レイカちゃん、何か言う。
 若い男、逆ギレして、レイカちゃんを問いつめる。

 どうみても、泥沼の三角関係である。
「レイカさん、行きましょう」
 エミリオは、レイカの手を引く。
「え、え、どこへ?」
「こんな人たちについていくことはありません。我が国は、いつでもレイカさんを歓迎します」
 バトゥは、見えないように肩をすくめたが、若君を止めることはなかった。
「え、レイカちゃん、あの人達に、用があるんだけど……」
 言いかけたレイカちゃん、もちまえの視力で遠くに人影を発見。急に体をすくめると、こそこそとエミリオの影に隠れた。
「レ、レイカちゃん急に用事が」
「ええ、行きましょう」
 エミリオは、にっこり笑ってレイカの手を取った。

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「何の騒ぎ?」
 ふみこがミュンヒハウゼンを伴って現れる。
 紫の夜会服は染み一つない。
「何の騒ぎでござるか?」
 ロジャーが現れる。
 こちらの忍者服はぼろぼろの上、頭は金髪アフロである。
 日向は肩をすくめた。
「たいしたことじゃない」
 レイカの姿はもうなかった。

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