リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(22)

 燃えあがる森。悲鳴を上げる小鳥。飛び交う火の粉。
 魔女の哄笑とニンジャの悲鳴。
 地獄のような森の中を霊能者達は走っていた。

 金美姫は、走りながら器用に肩をすくめた。
「訂正しよう」
「何がだ?」
 律儀に日向が聞き返す。
「確かに、あの魔女は無能ではない」
 日向はとりあえず無視して、気配を探った。光太郎と小夜は問題なくついてきている。
 いないのは……薙乃だ。
 さっきまで手を引いていたのに!
 日向は一瞬だけ慌て、その後、燃えさかる森へ取って返した。

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 伊勢薙乃は、煙に紛れて森へ近づく。あたりに気配がないことを確かめて、背のリュックに手を伸ばした。
 大型銃に、空間ケージ弾をセットする。
 火事のまんなかへ、無造作に銃を撃つ。
 無数の灰色の泡が、まるでシャボンのように飛び出した。

「シャボンランチャー」
 未来技術による拘束空間。触れたものの時間を止め、異空間に捉える仕組みである。
「絶対零度モード!」
 時間が止まること。分子の停止。すなわち絶対零度。
 空間解除によって生まれた冷気の塊が、押し寄せる炎に融けてゆく。

「……こんなとこかな」
 森火事が鎮火したのを確かめて、薙乃はランチャーをリュックにしまった。
 額の汗を拭く。
「こら」
 その薙乃の頭がはたかれた。
「あ、日向パパ」
「日向パパじゃない。危ないだろうが」
 そう言って日向は溜息をつく。
 薙乃が見た目通りの子供じゃないことは分かっている。
「いやま危なくないのかもしれんが、勝手に迷子になるな」
 薙乃は日向の差し出した手を取った。じっとりと汗ばんだ手。言葉にならない心配が伝わり、薙乃は、とりあえず反省した。
「はい、パパ」
 薙乃は元気よく答えた。

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「聞き込みするなら、このへんか」
 日向が地図を見ながら言う。
 失踪多発地帯から、ほど近い町。石畳の道路に、中世を思わせる街並みが広がっていた。
「いいけど、どっから始めりゃいいんだ、所長?」
「酒場か盗賊ギルドが定番じゃないかな」
 薙乃が間違った中世観を披露する。
「とりあえず、人の多そうなところを探してみてはいかがでしょうか?」
 小夜がひかえめに提言した。
「あぁ、そりゃそうだな、そうしよう」
 日向は頭をかいた。どうも、田舎だと勘が狂う。

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「あれは……」
 最初に見つけたのは小夜だった。
 商店街についた一行。通りの向こうから近づいてくるのは、会見で出会った伯爵……確かエミリオと言ったはずだ。
 おつきの兵士と、もう一人……女性を連れている。
「寒そうな格好だな」
 日向が控えめに意見を述べる。
「可愛い子だけどな」
 光太郎がつぶやく。
 小夜は、反射的に光太郎の脇に肘を叩き込んだ。
「痛っ。何するんだ」
「なんとなくですっ……て、どうして横を向くんですか!」
「なんとなくだよっ!」
 互いにそっぽを向く二人。

 エミリオは、そんな日本人達を怒りをこめて見つめた。

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