リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(21)

 エミリオはとまどっていた。
 誰でもない。目の前に女性に、である。
「エミちゃん、さっきはありがとうね」
 エミリオをのぞき込む女。エミリオから見ると、胸が顔の前に来る。
 目をそらしながら、エミリオは上着を脱いで差し出した。
 レイカちゃん、受け取って、物珍しげに眺める。ひっくり返す。匂いをかぐ。エミリオの顔がさらに赤くなった。
「その……寒くありませんか?」
「え、レイカちゃん、寒くないよ」
「寒くなくても、そんな格好だと風邪を引きます! さぁ!」
 着せてはみたものの、エミリオのジャケットは小さすぎて前が閉まらず、露出の面からはあまり改善になっていない。
 むしろ気まずさが増した。
 バトゥが咳払いする。
「服を買いにゆきましょう」
 エミリオはレイカの手を引いた。どうにも目が離せない。手のかかる妹のようだ。

 連れだって歩く三人。あらためて目の前の女性を見る。
 奇抜なファッションに無邪気な笑顔。
 髪はあざやかな翡翠色で、人種すら不明。
 どこから来たとか何をしてるとか、そもそも何者なんだとか色々な言葉が頭を駆けめぐった末に、エミリオは、ようやく口を開いた。
「ようこそ、アルカランドへ」
「私、霧島レイカ。婦警さんなの。よろしくね」
 予想の斜め上の答えに、バトゥ、思わずくしゃみをする。
 エミリオ、吹き出すところを辛くも立ち直った。婦警=事件=捜査、と、理解したのである。
「あぁ、じゃぁ日本から来た人の……」
「そそ。日本から来た人を捜してるの」
 例の霊能者達か、と、エミリオは判断する。
「迷子なんですね」
「え?」
「いや、そうすると例の事件を」
「ええ。湖のお城で」
「よくご存じですね」
 行方不明事件には、湖の湖面に浮かぶ城の証言があった。
「許せないよ! 少年少女が」
「はい。確かに子供も行方不明になっています」
「初めてのちゅーなんて!」
「そうそう初めての……え?」
「レイカちゃんは、未来から、ちゅーを食い止めに来たんだよ!」

 バトゥ、沈痛な表情で、自分のこめかみをつつく。
 エミリオ、うなずく。二人、隅っこに隠れる。

「……霊能者とは様々な悪魔と心を通わせる者です。心を壊すものもいるでしょう。それでなくても戦闘は過酷です」
「つらい目に遭ってきたんだな」
 邪悪な日本人(イメージ:日向玄乃丈)に酷使されるレイカちゃんを思い浮かべるエミリオ。

「エミちゃん、何の話?」
「いえ。服を買いに行きましょう。暖かいごはんもいかがですか?」
「いくいく! エミちゃん、いい人だね」
 バトゥ、二人の後ろで男泣きに泣いていた。

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