リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(14)


ロジャー・サスケ。本名をロイ・バウマン。
和服に着替えて墨をする。
おちついた佇まいで、筆を握った。
思案の果てに書いた文句は「旅のしおり」。

「おうちへ帰るまでが、旅行でゴザル、と」

この男、これでも時間犯罪組織セプテントリオンのエージェントである。
コードネームはRS。数千の第6世界群全体を預かる支配人である。

親友たる光太郎の死の運命を知り、その運命をねじ曲げる力を得るために、組織へ身を投じた。
その忍者装束と暑苦しい性格は、ただ一つ、光太郎との友情をのぞき、何もかもに嘘をつくための仮面……であったのは、いつのことか。

最近、すっかり、お笑い忍者としての役が板についているロジャーであった。
仕事をさぼって、私情を優先させまくるRSを、組織のほうが評価するわけもなく。
第六世界群の支配人からは既にはずされ、後任が就いている。
当人は、そのことも知らされていない。
すっかり伝達系統からはずされている窓際セプテントリオンであった。

アルカランドの遺跡を発見、確保せよ、との重大な指令も、RSにはついに届くことはなかった。

そんなことはつゆしらず、ロジャーは鮮やかな筆跡で、「旅のしおり」を作っている。
思えば幸せな男であった。

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「さぁ、しおりでゴザルよ」
ロジャーは、ゴキゲンで、小冊子を配った。
H&K探偵事務所は満員である。
「どうして、おまえまで来るんだよ」
光太郎があきらめたようにつぶやく。
「コウと二人きりの海外旅行、このチャンスを見のがす手はないでゴザル!(光太郎のピンチには、世界の果てから駆けつけるでゴザル!)」
「逆だろっ!」
律儀につっこむのは、あるいは友情なのかもしれない。
「おまえの分の旅費はないぞ」
「心配ご無用でゴザル」
自腹で来るらしい。日向は肩をすくめた。
「あー、こちらの金さんも同行することになった」
「金美姫だ。よろしく頼む」
「お医者さんつってたよな。なんで事件に?」
「家業でな。医者と一緒に、祭礼の技も修めている」
「金さんの従兄弟なら、そうか、って、アンタも金さんか。えーと金子さんでよい?」
「よくない!」
「ゆ、結城小夜です。よろしくお願いします」
挨拶しながらも、小夜の目は光太郎のほうを追っている。
「安心しろ。私がおまえの男を取る心配はない」
「え? あの」
「むしろ、おまえが好みだ」
金美姫、指を伸ばして、小夜のあごをくすぐる。
「ちょ、ちょっと……」
「じっとしていろ。そうすれば新しい世界が……
「や、やめろよ」
光太郎が前に出て小夜をかばう。
「こんな男を捨てて、私の元に来るつもりはないか? ん?」
「……いやだから教育に悪いって」
日向が、美姫を引き離す。
「ね、ね、パパ。アルカランドには何があるの?」
「遠足じゃないんだぞ」
すっかり来る気になっている薙乃に日向はためいきをついた。

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