BallS ボーナス 頂天のレムリーア外伝(1)
徳島兄弟の朝は早い。
二人ほぼ同時に目を覚ます。
仲が良いのであった。二人、争って着替えた。
パジャマから褌への華麗なる変身である。
兄はこれに、カフスとネクタイをつける。
弟はエプロンをつける。
むろんこと、二人は変態ではない。完璧なる筋肉をまとう兄弟には、もはや服など不要なだけである。
平屋三間の日本家屋を飛び出し、太陽が出る前の空を見上げて組み手をする。
二人の偉丈夫が立ち会うにしては、妙に静かなのが、かえって凄みを感じさせた。
そして、夜明けの最初の光が来るかこないかの時。
元気良く奈穂が前を通る時に兄弟はイヤーと叫びながらポージングする。
そうして奈穂が微笑んで手を振ると、兄弟は並んで微笑み、奈穂の散歩を見送って、そして膝をついて奈穂の幸せを願った。今は光輝の中にいるあの人に、そして剣を抱き、騎士の誓いを立てた。
この世のどこにあろうとも、騎士の中の騎士として戦おうと。
「いい娘だな。兄者」
エプロンをつけた弟は言った。
そして立派な顎髭を蓄えた兄はうなずいた。
「ああ。あの娘のような子には幸せになってもらわんとな」
二人は奈穂の知られざる守護者である。
この兄弟が早く起きるのは、奈穂の散歩において、ただ笑顔を向けて笑わせるというただそれだけのためにあった。
一体世界でどれだけの人物が、本人の知らないうちに守護をしているのだろう。
きっと沢山いるに違いない。この兄弟を見ればそう思えるだろう。名も知らぬ道を歩く少女のためにさえも、日々の努力をする漢達はいるのである。
二人は微笑むと、兄は仕事に行き、弟は家に残って家事を始めた。
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兄である徳島正(とくしま セイ)は褌にカフスとネクタイを装備し、白い色のアタッシュケースを持って通勤する。
電車に乗ると、大勢の人が驚愕の表情を浮かべるが、余りにもその姿が堂々としているので、誰も何も言えずに目をそらずばかりであった。
むろんこと、兄は変態ではない。繰り返すが完璧なる筋肉をまとうこの兄には、もはや服など不要なだけである。
「課長おはようございます」
女子社員たちの挨拶に少し微笑んで、セイは堂々たる面持ちで、エレベータに入り、驚愕の表情を浮かべる社長より堂々と、職場に入った。
セイは、女子社員が恥ずかしそうに噂するのを無視して缶コーヒーを片手にビルの外を見ながら物思いにふけった。無論のこと、彼もサラリーマンである。どんな時でも仕事のことは忘れない。携帯電話はバイブレートモードにして褌の尻の部分にきりりと挿してあった。
セイは奈穂を思った。
彼女は、悩みがあるのかも知れないと考える。
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頂天のレムリーア外伝
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二人ほぼ同時に目を覚ます。
仲が良いのであった。二人、争って着替えた。
パジャマから褌への華麗なる変身である。
兄はこれに、カフスとネクタイをつける。
弟はエプロンをつける。
むろんこと、二人は変態ではない。完璧なる筋肉をまとう兄弟には、もはや服など不要なだけである。
平屋三間の日本家屋を飛び出し、太陽が出る前の空を見上げて組み手をする。
二人の偉丈夫が立ち会うにしては、妙に静かなのが、かえって凄みを感じさせた。
そして、夜明けの最初の光が来るかこないかの時。
元気良く奈穂が前を通る時に兄弟はイヤーと叫びながらポージングする。
そうして奈穂が微笑んで手を振ると、兄弟は並んで微笑み、奈穂の散歩を見送って、そして膝をついて奈穂の幸せを願った。今は光輝の中にいるあの人に、そして剣を抱き、騎士の誓いを立てた。
この世のどこにあろうとも、騎士の中の騎士として戦おうと。
「いい娘だな。兄者」
エプロンをつけた弟は言った。
そして立派な顎髭を蓄えた兄はうなずいた。
「ああ。あの娘のような子には幸せになってもらわんとな」
二人は奈穂の知られざる守護者である。
この兄弟が早く起きるのは、奈穂の散歩において、ただ笑顔を向けて笑わせるというただそれだけのためにあった。
一体世界でどれだけの人物が、本人の知らないうちに守護をしているのだろう。
きっと沢山いるに違いない。この兄弟を見ればそう思えるだろう。名も知らぬ道を歩く少女のためにさえも、日々の努力をする漢達はいるのである。
二人は微笑むと、兄は仕事に行き、弟は家に残って家事を始めた。
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兄である徳島正(とくしま セイ)は褌にカフスとネクタイを装備し、白い色のアタッシュケースを持って通勤する。
電車に乗ると、大勢の人が驚愕の表情を浮かべるが、余りにもその姿が堂々としているので、誰も何も言えずに目をそらずばかりであった。
むろんこと、兄は変態ではない。繰り返すが完璧なる筋肉をまとうこの兄には、もはや服など不要なだけである。
「課長おはようございます」
女子社員たちの挨拶に少し微笑んで、セイは堂々たる面持ちで、エレベータに入り、驚愕の表情を浮かべる社長より堂々と、職場に入った。
セイは、女子社員が恥ずかしそうに噂するのを無視して缶コーヒーを片手にビルの外を見ながら物思いにふけった。無論のこと、彼もサラリーマンである。どんな時でも仕事のことは忘れない。携帯電話はバイブレートモードにして褌の尻の部分にきりりと挿してあった。
セイは奈穂を思った。
彼女は、悩みがあるのかも知れないと考える。
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頂天のレムリーア外伝
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