竜胆戦記(1)

アイドレス系小説と小説式神の城再開の前に、そして2年先のために
*この作品はフィクションです。実在の歴史・事件・人物とは関係ありません。
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 その昔になりますと熊本は武士が大層多いものでした。今もたくさん医者がいるのは、その名残であったりします。 部屋住みでやることもない武家の次男三男ができる商売が、それと道場や寺子屋の先生ぐらいしかないせいでした。

 熊本城を見上げる駕籠町界隈になりますとこの傾向はもっと顕著で、町人よりも武士が多いほどでした。
元は職能ごとですむ地域をきれいに分けていたのですが、安政の頃になりますとそれが崩れ、唐人町にも駕籠町にも、武士が溢れておりました。

きっちりしていたのはそうですねえ。坊っちゃん。呉服町辺りでございましたよ。あそこは今も呉服問屋が並んでおります。

 そんなわけで下々のいるような小さな呑み屋でも大小を持った人がおりまして、正義が正義がと大声で言うものですから、おかげで門前の小僧習わぬ経を読むというやつで、町人も女子供も正義について議論したり一家言ある人が大勢おりました。

熊本藩は痩せ我慢、猫すら正義を唱えると、ようばかにされておりました。

倹約令のせいもあったのかもしれませんが、お武家が多すぎたんですかねえ。貧しいものでしたよ。
私は用事を仰せつかって松のとれないうちに福岡藩に参ったのですが、そこに出てきた雑煮が大層色々なものが入っていて、菜と餅と入って蒲鉾という熊本の雑煮と比べて、大変悔しい思いをしました。

熊本では上屋敷と下屋敷を使い分けるような偉いお武家様でも、お雑煮には加えてこう、鋏で切っていれたスルメが入っているくらいでした。

熊本城も十分に補修されているとはいいがたく、大変みすぼらしゅうございました。
まあ、先の戦争で焼けてしまいましたから、いまじゃあとかともございません。

悪いことを言い過ぎました。

ああ、でも。死んで例え極楽にいても、思い出すのは熊本だと、私は思います。きっと坊っちゃんもそうなるに違いありません。
 盆には必ず猫までも戻りましょう。ここはそういうところです。

いったい正義を唱えないようなどんなところがいいところなんでしょうか。

坊っちゃん。 熊本だけが故郷でございます。
どうぞこのじじいのいうことをよう覚えておいてくださいまし。

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