リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(11)


アルカランドの軍備は、見た目通りの旧態依然としたものである。
当然のことながら、レーダーなどは備えていない。

そのため、第一発見者となったのは、米国の偵察衛星だった。
ちょうどアルカランド上空にさしかかっていた衛星の目は、上空500mに、瞬時に出現した熱源を感知する。

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悪魔がエミリオを包み込む。闇が皮膚と重なり、溶け合う。
敵の姿と位置。構えから息づかいまでが、直接、脳に流れ込む。見えないのは顔だけだった。

バトゥの前に闇が広がる。光る槍を掲げても、闇の中にいる悪魔遣いの姿は捉えられない。
憎むべき悪魔を前にして、バトゥは、しかし、無言だった。
祈る言葉は、もはやなかった。
神を信じてはいたが、己が神の寵愛に値するとは信じられなかったのだ。

エミリオが、自分の目でみていれば、そこに自分が呼び寄せた悪魔祓い師の姿を見ただろう。
バトゥが、祈りの聖句を唱えれば、それはエミリオの耳に届いただろう。

戦いは始まった。

闇がバトゥの身体を包み込んだ。冷たい闇が、手足の熱を奪ってゆく。
槍の光は闇を押し返すが、手応えはない。
時間が経てば負ける。
そう悟り、バトゥは、いよいよ速く槍を突き出した。

エミリオの身体を槍がかすめる。血がどろりと脇腹を濡らした。
槍の一突きごとが、「食らうもの」を怯えさせた。
信じられないほど正確な突きが、闇を見通すようにエミリオの心臓を狙う。
時間が経てば負ける。
そう悟り、エミリオは、悪魔に最後の力を注ぎ込んだ。

闇が大きく広がる。
巨大な顎となって、その牙でバトゥを喰い殺そうとする。

バトゥは見た。大きく口を開けた闇の奥にある人影を。
闇を躱すのではなく、とっさにその中に飛び込み、槍を突く!

開いた口の奥に、バトゥは少年の顔を認めた。
闇の中から、エミリオは傭兵の姿に気付いた。

バトゥは手を止めるが、すでに遅い。
槍は、生き物のように、悪魔を宿す少年の心臓を目指して、まっすぐ伸びた。

二人の間で、一瞬が、長々と引き延ばされる。
瞳と瞳が絡み合う。生きる方法を模索する。
槍を反らす……間に合わない。
悪魔を止める……間に合わない。

エミリオは、両腕を捨てて、悪魔の顎を受け止めようとする。
そうすればバトゥは生きるだろう。
バトゥは遅れて動いた。
子供を殺して自分が生き残るなど、あってはならなかった。
自ら悪魔の顎に身を投じようとする。
先に自分が死ねば、槍は力を失うかもしれない。

エミリオの瞳に怒りが燃える。
僕に恥をかかせる気かと。
バトゥは、それをまぶしく見ながら、その通り、と、目で応えた。

二人が動く。協力すれば、どちらかは助かったかも知れない。
だが互いの命を助けようとしたが故に、両方とも救われなくなった。
顎がバトゥを砕き、槍がエミリオの心臓を突こうとする。

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上空500mに出現した熱源は、彗星のように尾を引き、湖へ落下した。

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