リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(8)


金美姫は跳ぶように距離を詰めた。滑らかに攻撃に移る。
半身の構えから飛んだ右の拳を、日向は迎撃。が、それは囮だ。死角から飛んだ左の拳を、かろうじて首をひねって躱した。
「よく避けた」
美姫は、拳の間合いから、さらに一歩、詰める。切り裂くような肘と、ローキックが同時に来るのを、日向は大きく跳んで躱す。

防戦一方。実際、女は早く、そして強い。日向は自分が攻撃をかわせていることに驚く。
そして気付く。
どこかで見た動き。
これは……金大正の動きだ。

同門、なのだろう。となれば。

「私にこれを使わせるとはな」
女は、すらりと一本の剣を抜きはなった。
金大正が使っていたのと同じ。仁王剣と呼ばれる魔剣、即ち式神だ。

女の剣の腕は疑うまでもない。
そもそも、大陸において、剣は拳の延長であり、剣法と拳法は一続きの技である。拳法に優れた者が、剣法に長じるのは当然ともいえる。

逆に、日本における日本刀の位置が、様々な意味で特殊だ、と言ってもいい。
両手で扱うことを前提とする日本刀が極めて専門的な操作を必要とするようになったことは、その理由の一つである。

閑話休題。

ともあれ、素手で苦戦してる相手が剣を握っては勝ち目がない。
日向は奥の手を出すことにした。

口笛を吹いて、雷球を呼ぶ。
飛び来る雷光を金美姫は、反射的に剣で切ろうとして、思いとどまった。
感電は避けたが、代償として一瞬動きの止まった美姫に、日向は雷球をぶつけず、鼻先で止めた。

「暴力はいかん。話し合おう。金大正について何が知りたいんだ?」
「おまえは面白い男だな」
金美姫は、剣を下げた。

/*/

金美姫の尻を撫でた男の名を井上徹という。
ほうほうの体で逃げ出した井上は、携帯で兄貴分に連絡を入れた。
「た、助けてください。変な女にやられて……」
「女だと? 女がどうした。猫は見つかったのか?」
「ミケ太様を女がさらって……」
「なんだと! その女の特徴は!」
井上から連絡を受けた兄貴分は、さらに上に連絡を入れた。組長は、他の組長に探りを入れ、すぐに「白い服の女刺客」の情報が出回った。
あちこちから武闘派の組員が急行する。

/*/

「俺は日向。ただの探偵だ。さっきのヤクザたぁ顔見知りだが、別に上司でも部下でもない」
「ふむ……早合点したようだな。それについては謝ろう。だが……それなら、この気配はどうしたわけだ?」
無数の足音。殺気だった男達の息づかい。
日向が首をひねった時、足下を走る影があった。
黒猫だ。美姫の足下にかけより、肩へ駆け上る。
「おおよしよし、怯えさせたな」
「猫だ」
 日向は顔を覆った。
「当たり前だ。猫だ」
「いや、その猫がだな……」
言い終わる前に銃声が轟いた。
「いたぞ! 捕らえろ!」
殺到するヤクザ達。冷たい笑みを浮かべる美姫。

「あぁ、もしもし光太郎か? 俺だ。悪いが、帰りは遅くなる。ちょっとしたゴタゴタだ。なぁにたいしたことはない。あぁ、じゃぁな」

新宿の路上で勃発した極道大戦を、日向が美姫と共に鎮圧するまでには、それからしばらくかった。

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