リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(7)


日向玄乃丈。新宿にてペット探偵業を営む。

「いや、ペットは余計だし」

地の文に突っ込むほどに、最近、自分でも本職が何かわからない日向玄乃丈である。

かつては裏社会に通じ、汚れ仕事も請け負ったが、光太郎を弟子に迎えてからは、そうした仕事から、きっぱり足を洗った。
ついでに教育に悪い浮気調査なども断っていったら、受ける仕事が、がっくりと減った。そうした中で残ったのがペット調査である。
最近は、ペット探偵としての評判が上がっており、心中、複雑なものがある。

今日の出張は、関東一円を治める侠客の大親分からの呼び出しだった。
ヤクザとは縁を切った日向だが、なんでも裏社会のパワーバランスに関わる大事だというので、とにもかくにも赴いた。

……ペット探しの依頼であった。

大親分の愛猫は、黒猫なのにミケ太といった。
その写真を見ながら日向玄乃丈は、やり場のない怒りを感じたが、話を聞いてみると、どうやら笑い事ではないらしい。

ペットを探して、無数の組が動き出している。大親分のペットを見つけることが、いつのまにか政治ゲームにすりかわったのだ。
傘下とはいっても、仲のいい組ばかりではない。緊張は高まる一方であり、行き着く果ては争奪戦。さらには抗争の勃発。

第三者である日向がミケ太を確保しなければ、近いうちに新宿が火の海になるのは必須。そう言われて、日向は頭を掻いた。

結局、日向が仕事を引き受けたのは、大親分の顔を見たせいだ。愛猫を失った顔は、希代の侠客といえども変わらなかった。

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周囲の地理から猫のなわばりを調べ、キャリーケースを抱えて「探し猫」のポスターを貼り、聞き込みを重ねる。
身に付いた手順である。

ふとその時、路上から悲鳴が聞こえた。野太い男の声だ。
見過ごせないのが日向玄乃丈という男だ。損な性分ともいう。
キャリーケースを持ったまま近づいてゆく。

「た、た、助けてくれぇぇぇ」

派手なアロハとパンチパーマの、絵に描いたような極道が鼻血を吹きながら走ってくる。

「だ、旦那。助けてくれ」
「あんた……確か、坂口組の若い衆か」
チンピラは知り合いだった。
「あぁ。ミケ太様が、ミケ太様が」
「おい、ミケ太がどうした?」
「変な女が……」

「誰が変な女だ」

低い声に、男は、ひゃぁと叫んで日向の後ろに隠れる。

「金大正を知っているか」
白コートの女は、そう言って日向を見つめる。
「知ってるが……」
「そうか。なら洗いざらい吐いてもらおう」
「ちょっと待て。なんでそうなる!」
「そっちの小物は何も知らなかった。ならば主に聞くまでだ」
「いや、主じゃないから」
言いながら、まぁそうも見えるか、と、日向は眉をひそめた。いずれにせよ、えらく喧嘩っぱやい姐さんだ。

「安心しろ。私は貴様らのように野蛮ではない。故に命までは取らん」
金美姫はそう言って、一気に距離を詰めた。
「ちょっと待て。俺が一体何をした」
「見苦しい。部下の罪は主の罪」
「主じゃない。てか、あいつが何をした」
「尻を触った」
「あー」
納得してしまったのが日向の敗因だ。後ろを振り向くが、チンピラはとうに逃げていた。

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