リターン・トゥ・式神の城外伝 月光城(6)

お詫び。17日の更新において、海法さんの原稿は間に合ったんですが、芝村がUPしそこねてました。お詫びいたします。

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金大正という男がいる。下町で道場を営み、今は刑務所の塀の中にいる。
その男のありかたは、道場を見ればわかる。

家屋というのは、生き物である。住む人を得てこそ家屋は生きるものであり、人に捨てられた家は、何もしなくても、あっというまに傷むものだ。

金大正の道場に、主が訪れなくなって、しばらく経つ。
が、道場は、未だ生き生きとしていた。
かつての門下生や、その家族。友人達が、誰ともなく、おとずれて、風を通す。掃除をする。
道場も、道場に通う者も、その主の帰りを待ちわびていた。

今、道場の前に白い服の女が立っていた。名を金美姫といい、金大正の縁故の者である。
門の前に立っているのは、主の帰りを待っているからだ。
道場の手入れが行き届いたため、まさか主が塀の中にいるとは気づきもしない。

美姫の足下にまとわりつくものがあった。黒猫である。
「ちっちっちっ」
待つより他にすることとてない美姫は、猫を構う。猫のほうも、美姫が気に入った様子で、やがて、その肩にはいあがる。
白服の女性と黒猫はたいそう絵になった。

「もしもし」
そんな美姫に声をかけるものがいた。背筋の伸びた老婦人である。
「もしかして、金さんにご用の方?」
「はい。金大正を訪ねてきたのですが」
「あ、よかったわ。失礼かとも思ったのだけれども、お困りのようだったから」
婦人の名は中河かなこ。孫が、この道場に通っていた縁だという。
かなこさんの話を聞いて、ようやく美姫は、大正が刑務所にいることを知った。
「刑務所といってもね。金さんが悪いことをしたわけじゃないのよ。悪い人に絡まれたっていうほうが正しいわ」
そう言って、かなこさんは、長々と金大正の人柄について語った。美姫がソウルから来たことを知ると、家に寄っていくようにと勧める。
金美姫は、かなこさんの誘いを、やっとのことで辞した。
さすがにこれ以上、世話になるわけにはいかない。
なにしろ金美姫は、金大正を殺しに来たのだから。

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大陸に生まれた一匹の龍がいる。龍を守って暮らす一族がいる。美姫も大正も、その一族に連なる者である。
大正は、あろうことか、一族の龍を奪って逃がしたという裏切りものである。大正を殺し、龍の行方を探るのが彼女に課された役目であった。

金美姫は男という生き物は、野蛮で有害なものだと思っている。
手入れされた道場を見て、金大正は、よほどの権力者だろうと理解した。
それが刑務所にいるということは、おそらくは娑婆にいては命が危険になったからだろう。
なんらかの勢力とトラブルを起こしたと考えられる。
詳しい事情は、地元の犯罪組織に聞くのが早いだろう。

待つほどもなく、柄の悪い男たちが寄ってきた。懐に銃を呑んでいるのが美姫にはわかった。
日本の治安というのも聞くほどのものではないらしい。
金美姫は笑って、尋問の用意に取りかかった。

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