裏マーケットボーナス FEG レイカ

//
裏マーケットボーナス FEG レイカ
//

 レイカは目を覚ました。見たくない夢を見たので目が覚めた。そんな感じであった。

「あ、あれぇ、ヒューガ?」 白い犬の名を呼ぶ、レイカ。

 レイカは現実までも夢の様になっていやしないかと恐れ、毛布を身に掛けたまま、身を震わせた。
彼女にも怖いものはある。それは友達がいなくなる、と言うことだった。

「あら、もう起きていたのね」
 その声が犬の鳴き声でないことに自分でもびっくりするくらい動揺するレイカ。大きな目に涙を溜めた。声の主が姿を現し、レイカのベッドの端に腰掛ける。髪の長い、女であった。

「大丈夫よ。うちの亭主(おーさま)が貴方を助けたから。ここは重力下で、テラフォーミングなしで人が住めている……」
レイカの表情に、女は笑った。口を開いた。「何か?」

「あ、あの、私と一緒にいた、犬は? ……白い、犬」
湧き上がる恐怖に震えるレイカの声に、女、新妻素子は感情と表情のリンクを切断して笑顔を作った。この百年は浮かべたことのない、笑顔であった。

「大丈夫。死体は見つかってない。元気な姿も見つかってないけどね。……落ち込まないで。うちのおーさま、これでも一所懸命探しているんだから。知ってた? 貴方のえーと、わんちゃんと、うちの亭主、同級生なのよ?」

「黒い……犬……?」
レイカの低次元の想像に、素子は笑顔を作った。こちらは本物の笑顔だった。
「ううん、残念ながらただの人間。ま、そう言うのが一番厄介なんだけどね。ああ、それより水はどう?砂っぽくてあんまりおいしくないけど」

「ココア……とか」
素子の声に、下を向いてそう答えるレイカ。ココアはレイカちゃんの好きな飲料だった。良くヒューガと分け合って飲んでいた。
「OK、すぐ用意させるわ。一号くん、お願い」
微笑む素子。実のところ、彼女は王から情報を聞き出すよう依頼されていたのだが、彼女は簡単に、かつ一瞬でそれを実行する気をなくしてしまっている。
下手に聞けば何かを必死に我慢している緑髪の少女が我慢できなくなるだろうし、それ位なら情報を聞き出したりはしないだろうと、その程度には王を理解してもいた。

長いようで短い時がうつろう。原は遠くの城下町の喧騒を聞いていた。レイカは貰ったココアをすすり、それを分け合う相手がいないことを確認すると、声もなく泣いた。普段、なにもかも勘違いする上に鈍いながら、こういう事に限っては、嘘を悟ってしまうのだった。

素子は目を伏せた後、しばし考え、結局何も言えずに席を立って、廊下を何事もなく1ー0mほど歩いた後、穴が開くほど壁を叩いた。レイカが、昔の自分に重なって見えた。

「男って……」
素子はつぶやく。

ヒューガに限って言えば、彼は死の前まで生きてレイカに再会する道を選ぼうとしていたが、結局、もう一方の偵察隊を見捨てることが出来ずに死んでいる。とは言え、例えそんな事情を知っていたとしても、素子の怒りは、収まらなかったろう。

華やかな戦勝式典の様子を映すTVを見、そこで手を振る人々を見て、素子はもう一度、壁を叩いた。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0