裏マーケットボーナス 鍋の国

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裏マーケットボーナス 鍋の国
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 Bヤガミがつづみをさらったのは、つづみが一番、手近にいたからである。
それ以外に、理由はない。

 つづみの唇を奪い、腕を折り、岩田を殺したBヤガミは鍋の国の民をあざ笑って、脱出した。
良い気分だった。だから、哄笑した。 笑い声を聞いた腕の中のつづみがアンドロイドの身体にも関わらず泣きながらあんたなんかヤガミじゃない、絶対ヤガミじゃないというので、Bヤガミは気分を害し、そこでつづみを殺す気になった。涙をためて自分をにらみつけるつづみの首を締め上げ。
そして、Bヤガミは激しい胸の痛みに襲われた。殺して吸収した岩田が、へらへら笑いながら、つづみを守ったのだった。締め上げられながら、「大丈夫……?」と聞いた間抜けなつづみは、急に地面に投げ出され、それからつづみは、Bヤガミに飼われることになる。

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 つづみという女は、間抜けな女だった。まず敵に対してお人よしであった。
自分で歪んでいると思いながら、彼女は残った片腕で、胸を抑えて苦しむヤガミを、介抱してしまっていた。間抜けどころの話ではない。

その上、あんたなんかヤガミじゃない。という言葉がBヤガミを傷つけたと思って、落ち込んだ。
とはいえ、状況が状況である。あやまるのも変だから、黙っていた。

それは奇妙な生活だった。Bヤガミは最初つづみの首に鎖をつけたが、3日でそれをやめてしまった。つづみもついに、逃げ出せなかった。自分の腰に廻されたBヤガミの腕の力が強かったせいだけではないと、自分でも分かっていた。
首筋に残る赤い痕が毒だったか、Bヤガミは目を伏せた。

暗い夜、二人きり、取れた腕の跡から電光が時々光って、それでつづみが困って、まるで私、蛍みたいだねと苦笑して言うと、Bヤガミはつづみを抱き寄せ、そのまま朝まで離さなかった。 ただ、この頃からつづみが故国を想って泣くと、たびたび暴力を振るった。
それでつづみが死にそうになると、胸が痛くなったか、それで暴力も、やめてしまった。

つづみは実にターン4を通じてBヤガミを封じることに成功する。
つづみが泣くと、Bヤガミは他に何もすることが出来ず、ただ阿呆のように、抱きしめていた。

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 そしてBヤガミは、つづみの喜ぶ顔を見ようと思った。泣き顔以外を、彼がまだ見たことのないつづみの表情を見てみたいと、想ったのだった。

だから絢爛世界の一つを遅い、破壊の限りをつくしてヤガミの一人を殺し、舞踏子の同型から腕をもぎ取り、綺麗な指輪を奪ってきた。そして蒼白な顔で呆然とするつづみの表情を見、泣きながら胸を叩かれることになる。それから二人は、ずっと喋る事がなかった。

別れの時は、その後である。テンダイスをのぞいていたつづみが、ドランジを探しにいきたいとつぶやいたからだった。

Bヤガミは、つづみも、ドランジも殺す気で彼の心を映して黒くなったフェザーワルツを駆って天を駆けた。結局Bヤガミは、つづみの頬を一発だけ殴って姿を消した。

 Bヤガミがつづみをさらったのは、つづみが一番、手近にいたからである。
それ以外に、理由はない。

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