バレンタイン御礼 ヤガミスペシャル
一方その頃。火星。オリンポス宇宙港
完全に季節外れっぽいマフラーであったが、その男は、ひどく誇らしげに首に巻いてオリンポス宇宙港に降り立った。ちなみに宇宙港の平均温度は19度に設定されている。
泣きほくろのある案内嬢は、それでも笑顔を絶やさなかった。
「ようこそ、火星に」
「ただいま。ですね。火星は故郷なんですよ」
ヤガミは、微笑未満の表情で言った。舞踏子やホープ相手でも笑うより怒るほうがはるかに多いこの人物である。それ以外の人間で笑顔を見ることが出来る知類など、中々にして存在しなかった。見れてこの微笑未満の表情である。そして多くのヤガミ妖精が悔しいとわめくことに、微笑未満の表情でも、知類の心を鷲づかみにして揺さぶるところがあった。
自称昔は美少年だった派だが、案外嘘ではなかったかも知れない。
ヤガミは旅の途中でチョコを食いつつ何度も読んだ月@ふぁんとつづみ他、彼の大事な人々の手紙をもって火星に戻ってきた。今度こそ絶対指輪をその指につけて泣こうとわめこうと傍に置くと、そう考えていた。毎度うまくいったことのない誓いだったが、続編出るまでにはどうにかして欲しいもんである。
(大丈夫、両思いだ、絶対両思い……)
困った笑顔の案内嬢を前に、自己暗示モードに入るヤガミ。
レムーリアの福岡飛熊なぞまったく敵ではないくらいの真ヘタレ、帰還である。
顔をあげて案内嬢を見るヤガミ。
「そう言えば、どこかでお会いしましたね」
「そう、でしたっけ」世界移動者は記憶から失われる。案内嬢は、ヤガミを覚えていなかった。
「ええ。貴方に覚えられてないのが、残念だ」
優しく言って背筋を伸ばし愛を掴んだと思う男だけがたどれる足取りで堂々と歩いていくヤガミ。
「あ、え?」
案内嬢は顔を赤らめた後、ヤガミの姿を見失った。
/*/
BALLSの運転するタクシーに飛び乗り、ヤガミはオリンポスからユートピアへ向かう定期船の待つ港へ向かった。
ユートピアには軍港があり、そこにはいまや火星正規軍の軍艦となった夜明けの船がいるはずだった。
心は沸き立ち、途中でヤガミは、窓ガラスを見て難しい顔をした。
バレンタインの手紙を貰った直後にヤガミは返事を送っている。どういうわけか直接顔さえあわせなければ、ヤガミもヤガミの愛する風の妖精たちも、素直に相手を心配したり、好きだと言うことが出来た。もっとも互いに本当に本人が書いているのかいぶかしんで、筆跡鑑定他考えられる全ての本人確認手段を使って調べているところは間違いない。
たまに優しいヤガミとか丈夫なヤガミを見て、こんなのヤガミじゃないとか言う裏では、ヤガミも同じようなことを言っている。つまり素直にかわいい舞踏子がいても「故障か?」とさわやかな笑顔で言うのが、中学生の恋愛以下だねとエリザベスに酷評されるヤガミの私生活の全部であった。
ピポパ!
ついたとBALLSが言い、ヤガミは上機嫌で財布ごとBALLSに渡して清清しい気分で軍港に降り立った。鞄をもって、走った。最初に誰が見ててなんと言おうと、あるいは本人がうがぁとパンチしようと、抱きしめてやろうと考えていた。それぐらいの権利が彼にはあるはずだった。
夜明けの船が行方不明になっていると彼が知るのはその6分後。
彼はプレゼントでブリリアント梅鉢を持っていたが、ぶっ倒れて動かなくなった。
完全に季節外れっぽいマフラーであったが、その男は、ひどく誇らしげに首に巻いてオリンポス宇宙港に降り立った。ちなみに宇宙港の平均温度は19度に設定されている。
泣きほくろのある案内嬢は、それでも笑顔を絶やさなかった。
「ようこそ、火星に」
「ただいま。ですね。火星は故郷なんですよ」
ヤガミは、微笑未満の表情で言った。舞踏子やホープ相手でも笑うより怒るほうがはるかに多いこの人物である。それ以外の人間で笑顔を見ることが出来る知類など、中々にして存在しなかった。見れてこの微笑未満の表情である。そして多くのヤガミ妖精が悔しいとわめくことに、微笑未満の表情でも、知類の心を鷲づかみにして揺さぶるところがあった。
自称昔は美少年だった派だが、案外嘘ではなかったかも知れない。
ヤガミは旅の途中でチョコを食いつつ何度も読んだ月@ふぁんとつづみ他、彼の大事な人々の手紙をもって火星に戻ってきた。今度こそ絶対指輪をその指につけて泣こうとわめこうと傍に置くと、そう考えていた。毎度うまくいったことのない誓いだったが、続編出るまでにはどうにかして欲しいもんである。
(大丈夫、両思いだ、絶対両思い……)
困った笑顔の案内嬢を前に、自己暗示モードに入るヤガミ。
レムーリアの福岡飛熊なぞまったく敵ではないくらいの真ヘタレ、帰還である。
顔をあげて案内嬢を見るヤガミ。
「そう言えば、どこかでお会いしましたね」
「そう、でしたっけ」世界移動者は記憶から失われる。案内嬢は、ヤガミを覚えていなかった。
「ええ。貴方に覚えられてないのが、残念だ」
優しく言って背筋を伸ばし愛を掴んだと思う男だけがたどれる足取りで堂々と歩いていくヤガミ。
「あ、え?」
案内嬢は顔を赤らめた後、ヤガミの姿を見失った。
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BALLSの運転するタクシーに飛び乗り、ヤガミはオリンポスからユートピアへ向かう定期船の待つ港へ向かった。
ユートピアには軍港があり、そこにはいまや火星正規軍の軍艦となった夜明けの船がいるはずだった。
心は沸き立ち、途中でヤガミは、窓ガラスを見て難しい顔をした。
バレンタインの手紙を貰った直後にヤガミは返事を送っている。どういうわけか直接顔さえあわせなければ、ヤガミもヤガミの愛する風の妖精たちも、素直に相手を心配したり、好きだと言うことが出来た。もっとも互いに本当に本人が書いているのかいぶかしんで、筆跡鑑定他考えられる全ての本人確認手段を使って調べているところは間違いない。
たまに優しいヤガミとか丈夫なヤガミを見て、こんなのヤガミじゃないとか言う裏では、ヤガミも同じようなことを言っている。つまり素直にかわいい舞踏子がいても「故障か?」とさわやかな笑顔で言うのが、中学生の恋愛以下だねとエリザベスに酷評されるヤガミの私生活の全部であった。
ピポパ!
ついたとBALLSが言い、ヤガミは上機嫌で財布ごとBALLSに渡して清清しい気分で軍港に降り立った。鞄をもって、走った。最初に誰が見ててなんと言おうと、あるいは本人がうがぁとパンチしようと、抱きしめてやろうと考えていた。それぐらいの権利が彼にはあるはずだった。
夜明けの船が行方不明になっていると彼が知るのはその6分後。
彼はプレゼントでブリリアント梅鉢を持っていたが、ぶっ倒れて動かなくなった。