春の嵐の中のゴロネコ藩国-深夜-

春の嵐の中のゴロネコ藩国-深夜-

 ゴロネコ王国、藩王の趣味かほとんど全部男が藩民という国には、重大な秘密がある。

犬が、いた。白くて大きな犬を、かくまっていたのである。

もう看板に偽りどころの話ではない。政治亡命以外の犬は全部保健所行きのにゃんにゃん共和国でそんなことが見つかったら大変な騒ぎであった。

匿っていたのはこの国では大変に少ない女性、六花である。
特別扱いを利用して、彼女は白い犬に薬を塗って包帯を巻き、常々傍らにおいて、本を読んでやっていた。それが趣味かどうかは分らない。

 月の姿も見えないほどの嵐の夜。西のほうに不気味な赤い光があがったその日も、六花は寝そべる白い犬、ヒューガの隣でお話を読んでやっていた。

傍らには忍者刀が立てかけてあり、明日には六花はタマ大統領暗殺作戦に参加することになっていた。だから今日のこれは六花にとってのお別れの儀式である。

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むかし、ひとはあわれなただのねこといぬでした。
かみがみのひかりにあてられ、ものがもててしゃべれるようになっても、むげんのちからもえいえんのいのちもなく、くうきがなければうちゅうをたびすることも、たくさんのせかいをわたることもできませんでした。

ひとはしらのかみさまがひとをあわれみました。
それはかまどのめがみさまでした。

かまどのめがみさまは、ちにおりてひとにまじわると、ひとつのわざをおしえました。
それをちえ、セマ・オーマの技といいます。

全ての絶技体系の中で絶技を使わぬ唯一つのオーマは、唯一の力をひとに与えると姿を消し、そうしてひとは、今もいきています。

 ひとがうけついだそのちえは、そのむかしのやさしさです。
もしもちえをつかうのならば、そのことをわすれてはいけません。

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「ヒューガ!?」
お話を聞き終わったヒューガはよろけながら立ち上がると、嵐の外の夜を見た。
緑色の髪の伝説を思わせるにれの木々が揺れるのを見てヒューガは吼えると、嵐の中、にれの木に導かれるように歩いて姿を消した。

呆然と雨の入る窓から去った白い犬を見る六花。

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