になし藩国へ続く列車にのろうと、駅も列車の中も、ごったがえしていた。 ぽち姫がお帰りになると言うことで、各国に出ていた人々がになし藩に戻り始めていたのである。皆は忙しく、そして明るく話をしていた。世情は暗いが、それが良くなることを皆が期待していた。 色々な人が乗る客車の席が、不意に一個埋まっても、だから誰も気にもとめなかった。 /*/ ロボという男がいる。風渡りである。いくつもの世界を移動する、世界移動者だった。 前のループの数名の生き残りで、前のループのあやまちというものが生んだ災いを、取り除こうと永劫に旅をする旅人だった。年齢はかれこれ2000歳を越える。袂を分ったが、シロの古い、友人でもあった。 列車の中、浮かぶ鞄一つだけを供にして帽子をかぶり、ロボはぽち姫の幼い頃の冒険を嬉しそうに語る老婆の隣で、一人浮かぬ顔をしていた。 ぽちを、殺さなければならない。 彼はそれで、気分が良くないのだった。 /*/ 思い出の中のロボは、ぽちを抱いていた。まだ小さな、そんな年の頃だった。 母親に似て髪が金色で、ロボはだから、この娘をかわいがった。あやめに良く似ていた。 「この娘をどうするんだ?」 ロボは、ぽちを抱きしめて言った。明日、世界を移動すれば忘れられる存在でも、彼はそれでもこの娘をかわいがった。 「ゲートに育てようと思う」 シロは、王族と大貴族の中でもブランシュトックの者だけに許される佩用の剣の柄頭を叩いて言った。 「ワールドタイムゲートにか」目を細めるロボ。微笑むシロ。 「ああ。そうだ。帝國はいずれ、また膨張を開始するだろう。今は休んでいるだけだ。その時にきっと、この娘は役に立つ」 「気に食わんな」 ロボは短くそう言った。 微笑むシロ。 「いつまでも独自に発展することなど出来ない。いくつもの世界と接続していくには、ゲートは必要だ。老いた共和国とは、我々は違う」 「繋いだ先が破滅ならどうするんだ」 「その時はそう、この娘の寿命だろうよ」 /*/ 寿命。寿命か。ロボは顔をしかめる。 根元種族は211万。各世界の同一存在と合流して今は200億を越えているはずだった。 それが、ニューワールドであるアイドレス世界にも近づいていた。 帝國でも共和国でも、そんな軍勢に対応できるわけもない。多分どの世界も、対応できないだろう。 |
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