裏マーケットボーナス 詩歌藩国で青は
まだ怒りさめやらず英吏の首根っこを掴む(そして英吏は源を掴んでいる)青の厚志は目を細めてロボを見ている。
まあ、藩国一つ助かっただから許してくれと内心思いながら、ロボは微笑んで口を開いた。いつかそうしたようにその左手に手をかざす。インストール。
「これは?」
冷たい青の声に微笑むロボ。
昼飯代に困って人を殺しかねなかった、あの時の少年が、今はこんなに表情豊かになっている。まったく、顔をすぐ忘れられるのが残念で仕方ない。
「ゲームだよ ま、遊んでみれば分かる。ソフトだからコピーして皆にくばってもいい。お詫びとお礼ということで」
「逃げれば傷つく人だっているんだ」自分が料理を作って舞が逃げたら生きていけないと言う風に、青は言った。優しく笑うロボ。
「俺もそう思うよ。んじゃ、猫先生によろしく。遠い空から、今もジョニーはヨシアとお前を護っていると伝えてくれ」
青に微笑むと、ロボは手を振って去っていった。
/*/
青、ゲームを確認して綺麗な絵を見ると、凄い勢いで舞の元へ帰った。
彼の場合に限っては舞の元へ行った、ではなく、舞の元へ帰った。である。
彼は誰がなんと言おうと、仏頂面で全然素直でない少女の全部の問題点を全肯定してさらに愛していた。
「舞」
「なんだ」
舞は、青の輝くような笑顔(たいてい戻ってくる時はこんな感じである)を見ると顔が赤くなるので、顔を見ないようにして言った。
「げ、ゲーム貰ってきたよ。一緒に遊ぼう」わんわん帝國風に言うと、尻尾ふりふりである。
「ふむ」興味沸いて、青を見る舞。
舞。ゲームは嫌いではない。
父と花壇の世話や釣りをするよりは、一緒にゲームを遊ぶのが好きだった。今になって思えば、どんなに退屈でも花壇をもっと一緒に見ていれば良かったと思うのだが。
「どうしたの?舞」
「なんでもない。そなた、いつも不安そうな顔をするな」
「そんなことないよ」青。いまだ舞が自分を嫌うのではないかと、周囲の人間が聞いたら鼻で笑うようなことを割と本気で心配していた。
舞は、青の頬を冷たい手ではさんで、瞳を見た。
「そうか? 私にはそう見える」
青は瞳を閉じた。キスをねだる。頭をチョップされる青。
「たわけ」
「ひどいや」涙目の青。
「ひどいのは昼間からへんなことをねだるそなただ」顔を赤くして顔背ける舞。
「夜でも嫌がる時があるのに!」傷ついた顔の青。
「人目を気にしろと言っている!」髪を逆立てる勢いで、舞は言い返した。
そして二人で肩を降ろし、並んでゲームをはじめた。
これはこれで、仲がいいのであった。
/*/
<詩歌藩国にて>
舞は、自分にそっくりのモデルで詩歌藩国を見て廻っている。
なかなか良く出来た北国で、舞は雪の処理はどうなっているのかと、数式を心に描きながら歩いていた。
たまに犬が歩いている。舞、その姿を見て、うぁと声にならない声を上げたあと、顔を赤らめた。手に息を当てる振りで、顔を隠している。
い、犬は、よい。猫もよいが、犬もよい。
舞は拳を握ってそう思った。
「あ、厚志」
同意をもとめて横を見て、誰もいないことに気付く舞。
「厚志……?」
遠くから女性達の悲鳴と歓声。
声の方へあわてて走る舞。
青の厚志は、幼いというか、赤ん坊だった。駒地真子や詩歌藩国の神話収集で知られる豊国ミロに抱かれて、満足そう。
はでに倒れかける舞。足を踏み出して、踏ん張った。
「ば、ばかものー」
と言いながら青赤ちゃんをだきしめる舞。青、嬉しそう。
そのまま舞は駒地真子、豊国ミロを見た後、走って逃げた。
走る後姿を見る詩歌藩国の国民達。須藤 鑑正は前髪を横にどけて、いいなあとつぶやいた。何がいいなあかは、本人にしか分からない。
まあ、藩国一つ助かっただから許してくれと内心思いながら、ロボは微笑んで口を開いた。いつかそうしたようにその左手に手をかざす。インストール。
「これは?」
冷たい青の声に微笑むロボ。
昼飯代に困って人を殺しかねなかった、あの時の少年が、今はこんなに表情豊かになっている。まったく、顔をすぐ忘れられるのが残念で仕方ない。
「ゲームだよ ま、遊んでみれば分かる。ソフトだからコピーして皆にくばってもいい。お詫びとお礼ということで」
「逃げれば傷つく人だっているんだ」自分が料理を作って舞が逃げたら生きていけないと言う風に、青は言った。優しく笑うロボ。
「俺もそう思うよ。んじゃ、猫先生によろしく。遠い空から、今もジョニーはヨシアとお前を護っていると伝えてくれ」
青に微笑むと、ロボは手を振って去っていった。
/*/
青、ゲームを確認して綺麗な絵を見ると、凄い勢いで舞の元へ帰った。
彼の場合に限っては舞の元へ行った、ではなく、舞の元へ帰った。である。
彼は誰がなんと言おうと、仏頂面で全然素直でない少女の全部の問題点を全肯定してさらに愛していた。
「舞」
「なんだ」
舞は、青の輝くような笑顔(たいてい戻ってくる時はこんな感じである)を見ると顔が赤くなるので、顔を見ないようにして言った。
「げ、ゲーム貰ってきたよ。一緒に遊ぼう」わんわん帝國風に言うと、尻尾ふりふりである。
「ふむ」興味沸いて、青を見る舞。
舞。ゲームは嫌いではない。
父と花壇の世話や釣りをするよりは、一緒にゲームを遊ぶのが好きだった。今になって思えば、どんなに退屈でも花壇をもっと一緒に見ていれば良かったと思うのだが。
「どうしたの?舞」
「なんでもない。そなた、いつも不安そうな顔をするな」
「そんなことないよ」青。いまだ舞が自分を嫌うのではないかと、周囲の人間が聞いたら鼻で笑うようなことを割と本気で心配していた。
舞は、青の頬を冷たい手ではさんで、瞳を見た。
「そうか? 私にはそう見える」
青は瞳を閉じた。キスをねだる。頭をチョップされる青。
「たわけ」
「ひどいや」涙目の青。
「ひどいのは昼間からへんなことをねだるそなただ」顔を赤くして顔背ける舞。
「夜でも嫌がる時があるのに!」傷ついた顔の青。
「人目を気にしろと言っている!」髪を逆立てる勢いで、舞は言い返した。
そして二人で肩を降ろし、並んでゲームをはじめた。
これはこれで、仲がいいのであった。
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<詩歌藩国にて>
舞は、自分にそっくりのモデルで詩歌藩国を見て廻っている。
なかなか良く出来た北国で、舞は雪の処理はどうなっているのかと、数式を心に描きながら歩いていた。
たまに犬が歩いている。舞、その姿を見て、うぁと声にならない声を上げたあと、顔を赤らめた。手に息を当てる振りで、顔を隠している。
い、犬は、よい。猫もよいが、犬もよい。
舞は拳を握ってそう思った。
「あ、厚志」
同意をもとめて横を見て、誰もいないことに気付く舞。
「厚志……?」
遠くから女性達の悲鳴と歓声。
声の方へあわてて走る舞。
青の厚志は、幼いというか、赤ん坊だった。駒地真子や詩歌藩国の神話収集で知られる豊国ミロに抱かれて、満足そう。
はでに倒れかける舞。足を踏み出して、踏ん張った。
「ば、ばかものー」
と言いながら青赤ちゃんをだきしめる舞。青、嬉しそう。
そのまま舞は駒地真子、豊国ミロを見た後、走って逃げた。
走る後姿を見る詩歌藩国の国民達。須藤 鑑正は前髪を横にどけて、いいなあとつぶやいた。何がいいなあかは、本人にしか分からない。