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恋愛百景(4) /*/ 一方その頃。青の厚志と英吏はゆるやかに歩いていた。 英吏のいましめは取れ、英吏は源がどうしているか、考えていた。 「なぜ連れて行かれるか、分かる?」前を歩く青が、そう言った。 「分かりませんな」分かっていながら、そう言い放つ英吏。 「本当に?」青は背中越しにそう言った。どんな嘘も切る様な、そんな視線だった。 「ええ」英吏は、堂々と静かにそう言ってみせる。 青は追求せず、前を見ながら言った。 「斉藤さんが君に手料理を食べてもらえたらいいなって」 「だったら彼女がいいに来ればいいだけです。貴方が来る必要はない」 英吏の声は、冷たい。斉藤とのことで、他人がとやかく言うのを彼は嫌った。 英吏は嫌われ者だった。有能ではあったが、やり方に問題があると誰もが言う。この時もそうだった。英吏は斉藤を守るもっとも簡単な手段として、斉藤と距離をとろうとした。 英吏に近いというだけで、人はその女を、滅茶苦茶に言うのが常だった。 「彼女が来たら、逃げるんだろ?」青は言う。 「そんなことはしません」 英吏は誰もが信じそうな真心の篭った声でそう嘘を言った後、それだけは綺麗な青い目を伏せながら言った。 「ですが、貴方がどう考えているか分かりませんが、実際のところ私は彼女に嫌われています。その結果が斉藤の手料理による処刑と言うのであれば、嫌われる覚えはありませんが、死ぬのも仕方ないでしょう」 「好かれていると思うよ」 「主観の相違ですな。私はそう思いません」 英吏は笑った。 「好かれて見たいとは思いますが、無理でしょう。嫌われる覚えがないと言いましたが、あれは嘘です。覚えは沢山ある。私はそういう人間です。彼女に優しくできなかったことも、一杯ある」 青は立ち止まった。そこには斉藤がいるはずだが、いなかった。 舞を見ると舞は逃げたと、短く言った。 英吏は目を伏せて微笑んだ。 「ほらね」 「追うんだ、英吏、今なら」青は言った。 「御免こうむる」 英吏は大きな声でそう言った後、寂しそうに微笑んだ。源の言うとおりだと思う、後で奴を殴り返そう。 「貴方が英雄なのは良く知っています。我々の王になるであろうことも、だが、それで私の心まで支配したつもりなら、大きな間違いだ」 そう言って英吏は背を向けた。 走ったりせずに歩いていったのは、彼の意地であった。 |
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