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zoom RSS 投票ボーナス4 谷口&咲良

<<   作成日時 : 2007/01/24 17:24   >>

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1999年12月20日より

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 谷口が暴発で吹き飛んで拾い集めた吉田の指を病院に引き渡したのは、もう深夜だった。

目を逸らさず吐気を我慢して一緒に吉田の指を集めた渡辺と工藤は既に家に帰って、というよりも谷口が家に帰しており、病院から出た時は、彼一人の姿だった。

それは雪が降る中で。咲良は白い息を吐きながら谷口の姿を、見ていられないと、思った。大きな背中が、あんなに縮んでいる。

 咲良は目を大きく開けて記憶を検索した。
どんな軍規にも戦術にも対応はなかったが、僅かに一件だけ、該当記憶が存在した。
それは熱を出して咲良が寝ているとき、法でもなく、命令でもなく、言葉にすらよらず、彼女の父を名乗る者が歌を歌っていた記憶だった。

 咲良の記憶の中で、空先生が原稿を書きながら歌っている。

”失われたもの、取り返すべき物”
”人の過ちは、人が返す”
”人の悪が生んだ災いは人の善がこれを収める”
”人のあさましさの償いは、人の叡智が行うだろう”

先生、それは民事裁判の歌?
我慢できず、布団から顔だけ出して尋ねた咲良に、空先生は笑って首を横に振った。
食事を作りに来た村田彩華がキッチンで微笑んでいた。
「いいや、そういうものが出来るずっと前からあった歌だよ」
そう言うと空先生は筆を動かす手を休めて静かに言った。

「往々にして、いや、ほとんどの場合、取り返すのは過ちを犯した本人ではない。全然関係のない人間の方が、ずっと多い。……それでもましなのだ。咲良。人間以外の物に、返させようとするよりは。人の過ちは人が帰すべきだ。誰かのせいだと言い続けるその限り、失われたものが取り戻されることはない」
 その様はひどく幻想的で、熱のせいもあって咲良は、壁に映る空先生の影がお話に出て来る猫に見えた。竜と本来戦う、勇敢でふわふわでにゃーとなく、そう言う生き物だった。

猫は言った。
「本来はそのバランスを取り戻すための存在がいる。どこの世界にも、何もなくても、本来は人がいるその限り、それは夜が暗ければ暗いほど、闇が深ければ深いほど、天に星が輝きだすそのように、にれの木の木陰から出てくるものだ。事実はどうあれ、さも当然というように」
「それは」
咲良が震える声で尋ねると、空先生は優しく言った。
「それに名前を名づけるのが石田咲良、お前の運命だ」

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”失われたもの、取り返すべき物。”
”人の過ちは、人が返す。”
”往々にして、いや、ほとんどの場合、返すのは過ちを犯した本人ではない。全然関係のない人間の方が、ずっと多い。”
”それでもましなのだ。人間以外の物に、返させようとするよりは。”

 咲良は目を大きく開けて、そして瞳の焦点をあわせた。

あるいは谷口に返させるよりは。

 咲良は歩き出した。雪をかきわけ、にれの木の木陰から現れるように。

「谷口!」
そして咲良は転んだ。あわてて谷口が抱きとめた。
「何やってるんですか。こんな時間に貴方は」
人の気も知らないでと咲良は怒鳴り散らそうと思ったが、谷口の声が小さかったので、咲良は息を吸って、口を開いた。

「谷口、私は隊長だ」
「はあ」
「だか、ら……」
咲良は考えた。良く考えればどういえばいいか、良く分かっていなかったが、だが頑張った。咲良は谷口に言った。
「だから、部隊に対する命令と責任はすべて私にある。いいか、私にあるんだ」
「はい」
谷口は小さな声でそう言った。咲良は大きな声で言った。寒かったので声が震え、余り上手く言えなかったが。
「だから吉田のことも、私のせいだ。谷口は私を憎んでいい。いや、憎むべきなんだ」

谷口は、どれくらい自分を待ったのか、寒そうに彼を見上げる咲良を抱きしめ、口を開いた。個人的に自分がいたいけな妖精を騙す決定的な悪人で変態だと悟った瞬間だった。
「自分が貴方を嫌いになるわけないでしょう。貴方は本当にバカだ」
「でも」
「それ以上かわいいことを言ったら家に持って帰ります」

咲良にとっては意味不明な事を言って谷口は立ち上がり、自分のコートで咲良を包んでもったまま歩き出した。口を開く。
「サーラ先生は、なんとかすると言っていました。この間も誰かの指を直したばかりだと」

「それと深夜に出歩いたら駄目です。悪い人にあったらどうするんですか」

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