14日目(朝)41 戦闘詳報 瀧川防衛戦2

 実際戦闘部隊として120人の中隊を指揮するのはエースナンバー25、つまり最も新しいエースであるところの真琴である。
エース参加不可ということでのんびりしていたところでの出撃であった。

嘘ー!

と大混乱していたのは、別にセントラル・ロビーだけではない。
是空、小太刀、加納、都を欠いたエースの人員の多くは連日待機していた関係で今日も生き残った、やれやれとその多くは本当に(物理的な意味で)寝に入っており、なんとか集まった面子の中から選ばれたのは彼だったという、そういう次第である。ゲーム開始ぎりぎりの選出だった。

真琴は呪われろGMと太古の昔からプレイヤーに許された伝統の呪詛をはきながら指揮をとりはじめた。

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この戦いの戦闘序列は以下の通りである。

中隊指揮班(1個班)
 第1小隊(捜索部隊)(偵察兵)浮椎吾、サターン、結城洋一、ODD EYES、ぷーとら、高神千歳(中垣内)
 第2小隊(主力部隊)(突撃兵、狙撃兵)空野(帽子犬)、劉輝、アシタ スナオ、那限逢真
 第3小隊(主力部隊)(突撃兵、狙撃兵)SOU、朱、プレミア、影法師
 第4小隊(火力支援部隊)(砲兵)ながみ、になし、羅幻、伏見
 第5小隊(火力支援部隊)(砲兵、戦車兵)(臨時)うに
 第6小隊(山岳騎兵隊) (山岳騎兵)(臨時)詩歌、芥、一号、雅戌、はる


 広島県北部というだけで、状況もなにも見えない。
真琴は捜索(索敵)のために第1、第2の2個小隊をだして周囲を調査している。

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A-DICガンオーケストラでは引き鉄をひいたら勝負がもう決まっている、多くの場合は先に引き鉄引いたが勝ち、とエースの間ではいわれていた。これはたくさんの状況修正ルールと近代戦ならではの火力の異常優越が根底にあり、その意味でA-DICガンオーケストラの勝敗を決めるのは捜索(索敵)、ともいえた。

その捜索をまかされたのは、第1、第2小隊である。

 第1、第2小隊には古参兵が相当いた。面子を見ると
第1小隊(捜索部隊)(偵察兵)浮椎吾、サターン、結城洋一、ODD EYES、ぷーとら
第2小隊(主力部隊)(突撃兵、狙撃兵)空野(帽子犬)、劉輝、アシタ スナオ、那限逢真
であり、過去1年の大規模ゲームの多くに顔を出している古参が、軒を連ねていた。

サターン班の班長、サターンなどはカウンターアタック作戦夜の部でも柔軟性を最大限にいかしてゲーム開始中の僅かな時間に攻撃部隊→偵察部隊に衣替えして事態に対応している経歴がある。
 彼の部隊の偵察成功が作戦指揮をしていた小太刀の愁眉を開いて未曾有の大勝利へのきっかけを作ったのはご存知の通りである。かつてNPC殺しと不名誉極まりない名前で呼ばれていた彼は一躍ラッキーマンとして知られることになった。

 そのラッキーが、再び、戻ってこようとしていた。

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ラッキーを呼んだのは正確には、ふぇりす(PL:蛍)という名前の、猫である。
立派なラッキーキャットであり、毛並みも麗しい彼女を戦場に抱いて出てきていた間抜けな部隊は、この猫の幻視とふぎゃーという声によって、敵を発見した。


森林を音もなく侵攻する敵の大部隊は
ゴブリン1200以上
ミノタウロス40以上
キメラ12以上
ゴルゴーン8以上
見たこともないQ目標1

で構成されており、サターンは慌てて中隊に連絡を入れることになる。

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 温暖な南部とは隔絶して冬にはスキーも出来るくらい寒くなる山岳部を擁する広島北部、三次市の外れに置かれた指揮所では、真琴がマジかよと悪態をついていた。
昔の資料をひっくり返し、常識的にいってこの人数では勝てないなと思いつつ、一縷の思いを込めて、すぐ全力で逃げられる体制の下、奇襲を開始した。腰が引けているというのはまさにこの事をいうのだろう。

もっとも、この腰が引けているさ加減が、後々まで部隊を助けることになる。
よく言えばこの人物は現実をわきまえて、無謀なことはついにさせなかった。


 攻撃は一点集中。持つべきすべての火力が敵のリーダーらしいQ目標に集中された。

そしてすべての弾丸が命中前に阻止されると、真琴は即座かつ数多いエースの中でもダントツの速さで戦闘継続を断念。悪態と呪詛まじりに部隊を指揮して嫌がらせの火力を展開しながら今、まさに是空、小太刀、加納、都によるエースゲームが行われている葱畑に敵を誘導し始めた。

自分が出来ないことを先輩エースに押し付けるという荒業を開始したのである。
大騒ぎになるかと思いつつ各小隊は良くこの指示に従って移動し、火力を展開、見事にエースゲームの中に乱入することに成功している。近年まれに見る珍事であった。

目の前のオーケ戦で目がぐるぐるの小太刀たちは左右に敵が出て噴出すことになる。

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 真琴は仕方ないじゃないかと悪態をついていた。あんな化け物と戦う特殊な武器なんぞこの近くでもってるのはあの人たちしかいないじゃないかと言いながらこの用心深い男は、首をひねった。

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 SOU@第3小隊第1班は平均的というよりもかなりバランスの取れた戦闘部隊である。歩兵火器は一通り揃っており、中でも歌月という機関銃銃手は、事務官が苦心して揃えた機関銃弾を凄い勢いで使い果たしながら顔もあげられないようなデンジャーゾーンを展開して上手に敵を誘導しはじめていた。

一方で88式軽機関銃はほとんど役に立っていない。これは射程の関係で、この種の開けた(そして腰の引けた)戦いではあまり役に立たないことが証明された。もっともこれは武器選択がわるいのではなく、中隊指揮官の指揮がたまたまそうだった、というだけの話である。

この局面で大活躍し、後にMVPをとることになるのは第4小隊第一班、ながみゆきとの班であった。

日本のお家芸というよりはもはや偏執としかいえないレベルで大量整備された3門の迫撃砲を間断なくぶっ放し、濃密な火力制圧を開始したのである。しかも、腰が完全に引けており、位置が暴露しそうになると、すぐ逃げた。
狙ったかどうかはさておき、この行動は中隊指揮官の考えを良く心得たナイスアクションであり、敵の誘導に成功している。

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 真琴は疑り深い人物だった。他人に敵主力押し付けるわ疑り深いわで近年稀に見るトンデもない人物である。彼はいや、絶対罠がある。罠、罠……とつぶやきながら、瀧川防衛戦で登場する敵が1種類だけとは限らないと、考え付いた。

 すぐに全兵力をとって返そうと考えて、今度はあのQ目標と再度ドンパチやることを考えた。2分ほど考えた後、兵力を二分、第1、第2、第3小隊を残置させて残る4、5、6小隊を率いて大どんでん返しを開始する。

第1、第2、第3小隊は先に述べたとおり錬度、装備とも優良な古参兵が揃っており、根源力についてはかなり高いレベルにあった。一方、取って返す4、5、6小隊のうち、第5小隊はうにの1班のみしか存在せず、全般として火力には優れていたが、総合力では大きく劣っていた。(これらは火力支援部隊なのだからそもそも火力以外を要求されるほうがおかしいのである)

この段階では真琴は戦力分割の判断をしつつも、主戦場は葱畑だと考えていたようである。
そして彼が慌てて第1小隊から第3小隊を呼び戻す頃には、既に何もかもが、遅かった。