12日目(夜)37 コウタロー&アプロー(1)

 その日はとてもそわそわした日で、コウタローはそのせいか、自分自身もそわそわしていた。久しく忘れていた、胸騒ぎだった。

「魔力を感じていたころを思い出すな」

彼のアイドレス、皇帝号に乗りながら彼は微笑んでそうつぶやいた。
パイロットシートの中で目を、つぶる。とても悲しいことだったのに、思い出して微笑むことが出来たのはなぜだろう。
コウタローは自分がひどい人間になったと思ってまた笑った。
今度は苦い笑いだった。
兄も、祖父も、翔も、ふみこも、そして月子、大事なものが全部死んで、それでもう、全部終わったのに、自分は生きている。
あるいは死ねば良かったか。そうすれば悪を吹っ飛ばすなにかで、いられたろうか。

まったく死んでいれば良かったな。コウタローは笑った。


「コウタロー、コウタローは、ライラプス、コウタローはどこ?」
コウタローは下で響く声を聞いて涙を拭った。せめてアプローの前でぐらい、嘘をついていたかった。

「コウタロー、またそこにいたのね」
軽く飛んでくるアプローに、コウタローは笑って見せた。

「どうしたんだよ、こんな時間に」コクピットから身を乗り出して口を開くコウタロー。縁につかまりながら、アプローは呆れて見せた。
「こんな時間って、お祭りよ、一緒にいくって約束したよね」
「そりゃそうだけど、こんな時間に?」
「そう」今日は半休決定という口調でアプローは口を開いた。
「いきましょ?」
「やれやれ、今日はイレギュラーがあって、報告書かかないと」
「私と報告書、どっちが大事?」
アプローはいつも何かと比べて自分はどうかと聞いてくる。
コウタローは少しだけいらつきながら、同時に翔はどうだったか。考えた。
「比べられる訳ないだろ」自分に向かって、腹立たしくそう言った。アプローが傷ついた顔をしたのですぐ反省する。
「ごめん。もちろんアプローが大事だよ」
「うん」

アプローは微笑んだ、少し悲しそうな、微笑みだった。
「いこ。コウタロー」