11日目(昼)32 式神の城コース

 光太郎はその日、軽い疲れを感じてバイトを抜けて、早めに家に帰った。
小夜は心配したが、光太郎は笑って大丈夫、大丈夫だってと言って、家に帰った後玄関先で昏倒してそのまま深い眠りに入った。

息を短く飲み、光太郎さん、光太郎さんと声をかける小夜。触るかどうか考えて、肩に触れて顔が青くなる。
魔力が急激に減り始めていた。

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ほぼ同時刻、風呂に入っていたふみこは読書をやめて立ち上がった。
一方その頃、病院で咳き込んでいた月子は目を覚ましていた。
ベッド横で寝ていた大きな犬も耳を立て、首をあげる。

到着したのは着替えもしなかった月子であり、彼女はそこでまだ玄関先であわてている小夜に、どきなさいと一括して光太郎の肩をもって引きずるように部屋まで運んでいる。

ふみこはヘリを利用して移動、乾ききってない長い髪を揺らして即座に光太郎の枕元で貴方は私が守るわとささやくと、即座に移送開始、月子に帯同を許した。

 小夜は、何も出来なかった。
光太郎が倒れているだけで何も考えることが出来ず、ただ声をかけ、おろおろしていただけだった。

 我に返ったのは光太郎の姿が見えなくなってからである。にわかに乱れた髪をふり、小夜は飛んで光太郎を追った。

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 夕方前には金大正が仮出所した。
魔力がからむ病気に対して現代医学はまったくの無力であり、これらに対応出来るウイッチドクターは極めて限られていた。金大正は、そのうちの一人である。彼は監視もつけられることなく全速で光太郎のもとへ向かった。

「光太郎さん!」
金大正はふみこの屋敷のドアを開けてそう叫んだ。

既に白い部屋の全域は幾重にも連なる魔法陣が描かれており、光太郎は真ん中の祭壇に寝かされて、意識不明の状態にあった。

「魔力が流出しているわ。際限なく」ふみこはずっと光太郎の枕元にいた。
「な……」
「世界のバランスが壊れ始めている。このままでは未来が変わるわよ」
「”魔”が、取り付いたのでしょうか」
「それならもう試した」疲労の色を隠さず、ふみこは言う。魔力で身体を維持するふみこにとっては、傍にいるだけでもつらいのだった。
「でも一応、使いはだしている。すぐに良狼たちが来るわ」
「休んでください。ワタシが調べて見ますから」金大正がそう言うと、ふみこは金が今まで見た中のうち、一番美しい表情で口を開いた。
「いやよ」
そして光太郎の髪にふれた。
「わたしは、わがままだから」

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